平成10年3月23日放送

日母中央情報室だより

日母産婦人科医会幹事 宮崎 亮一郎

 コンピュータの通信システムによる情報伝達は、益々盛んに行われるようになっています。 日本母性保護産婦人科医会(以下、日母)では、中央情報室という部を中心に、通信システムを初め、電子カルテなどの実地応用など、コンピュータを用いたシステム作りを検討しています。

 例えば、日母では、平成8年に日母ネットを開始しました。その後、平成9年4月よりインターネットに日母のホームページを開設しています。

 現在、徐々にではあるりますが、それらに関連した事業の推進を図っているところです。今後はこれらの通信システムを利用して、本会会員に対しては、会員の必要とする情報を速やかに提供することは勿論ですが、一般の方(産婦人科医師以外の方)に対しても、産婦人科の医療についてよりよく理解してもらう必要性があるものと考え、本会の活動内容や産婦人科の医療を正しく理解してもらえるよな資料を提供しようと、日母内で検討しています。

  今回は、この中央情報室について、その機構や具体的な活動内容を述べていきたいと思っています。

 はじめに、中央情報室の機構についてですが、中央情報室には「情報処理検討委員会」という委員会が設置されています。この委員会では、「事務のOA化」「光カード」「パソコン通信」「インターネット」と、4つの主要テーマについて、それぞれの小委員会を設け検討し、これらの事項について、簡単なことは、委員の先生方を中心に電子メールを用いた会議で情報伝達・意見交換を行い、全体的なことや詳細な事項に関しては、年6回の「情報処理検討委員会」を開催し、委員と担当役員が集まり検討を行っています。

 次ぎに、前記した4つの主要テーマについて具体的な活動内容を記述しますと、

 ○事務局のOA化というのは、これらの機器を利用して日母事務局内の効率化を図ることです。

 事務局内のコンピュータをネットワーク可能な物に変更し、イントラネット化することで、各部署で作成した文書を相互に交換することです。

 今までは作成した文章を手直ししたり、継ぎ接ぎしていたものを使用したり、少し進んだ部署では他の部署間でフロッピィーのやり取りをしていました。このシステムを用いれば、それらの方法を用いることなく、別の部署のコンピュータで作成したものを、自分の机上のコンピュータの画面上で修正・保存することが可能になり、スムーズな事務処理が行われることになります。結果として、事務局の効率を上げることができるようになると考えています。

 既に、事務局内のコンピュータをネットワーク可能な物に変更し、現在、イントラネット化するための配線工事が今月には終了し、次年度からは本格的に事務局内で、このネットワークを活用することが可能な状態になる予定です。

 このシステムを更に応用すれば、日母本部と各支部、各支部どうしとの間で、必要な書類を電子メールをはじめとする通信システムを利用して、お互いに書類のやり取りをすることが可能になり、更に能率をあげていくものと思われます。

 ○光カードというのは、医療用光カード(電子カルテ)を産婦人科領域でどのように利用していけるかを検討することです。

 厚生省により実施にうつされている、周産期医療のシステム化という事業があり、この中には、総合周産期母子センターと、それに準じる複数の地域周産期母子センター、およびその他の医療機関との有機的な連携を図ることという事項がもりこまれています。

 本委員会では、この事業をより効率よく運営するための一手段として、医療用光カードを用いることが、この問題を解決するのに有効であると考えています。

 光カードというのは、ワープロやコンピュータのフロッピィーディスクのようなもので、現在使われている母子手帳の内容だけでなく、胎児心拍図などの記録も入力可能で、このカードを持っていれば、どの医師にかかっても、患者の状態を現在の母子手帳以上に詳細に把握することが可能です。

 どの機種のコンピュータでも入力・展開可能なものを開発中で、これまでに試験的な運用も含めて、光カードを導入している施設は、病院・診療所など計13施設あります。臨床の現場で実際に運用してみて得られた情報をもとに、機能の追加や使用の変更を行っている状態です。

 ○パソコン通信というのは、パソコンの通信システムを利用してのよりよい医療を患者に提供することです。産婦人科領域(特に産科領域)ではこのシステムを用いて、地域周産期医療用の支援を行おうとするものです。

 特定地域内で診断に苦慮している実地臨床医が、その症例についてのデータを専門医師に診断してもらい、患者によりよい医療を提供しようと試みられているシステムです。

 周産期母子センターの医師が専門医として、実地臨床医が扱っている分娩中の胎児情報を彼らに伝送し、より短時間に適切な医療を患者に行おうとするものが実験的に行われています。

 現在、この支援システムは、センターと11カ所の病院・診療所との間で通信回線が開設されており、年間アクセス件数が111件と、診断の支援を行える有用な手段として、臨床の場に多いに役立つものと考えています。

 ○インターネットというのは、一つにはニフティサーブを利用した日母ネットの運用

です。これは本会会員を中心としたコミュニケーションの場であり、平成10年1月末日で、登録会員数は375名、発言数は1600発言におよんでいます。発言内容は産婦人科実地臨床にそくしたものや、新聞・テレビ等で報道された記事に対する意見であり、会員相互の情報交換の場として確立されつつあります。

 また、平成9年には、インターネットを利用した日母ホームページを開設しました。このホームページは、前述したように、会員ばかりでなく一般の方々にも、日母が行っている事業や産婦人科の診療をよりよく理解してもらうための情報伝達の場と考え、現在日母内で、その内容について検討しています。

 その他の事業としましては、本会で作成した刊行物には非常に重要なデータが多く、既に作成した刊行物や発刊予定のものを可能な限りデジタル保存しておき、CD-ROM化していくことです。

 これらは、産婦人科医師が自己学習のために用いるだけでなく、日常診療においても患者に対して、画面を通して患者自身の病態を把握してもらうのに役立つようなものを作成することを目的としています。

 既に保存方法については、委員の先生方の意見から、保存の形式が検討され、日母内の刊行物は、その形式で保存していくようになっています。

 今回、平成9年度に日母の地域保健医療部がん対策が作成した「子宮がん検診の手引き」を、CD-ROM化していくことになりました。このCD-ROMを会員に使用してもらい、自己学習は勿論、写真や図・表を患者に説明するときに役立ててもらえれば、と考えています。

 本日は、中央情報室の機構や活動内容について紹介させていただきました。