平成11年3月22日
中央情報室より
日母産婦人科医会幹事 宮崎 亮一郎コンピュータの通信システムによる情報伝達・収集は、携帯電話の普及とあいまって、もはや日常的なものとなってきた感があります。 日本母性保護産婦人科医会(以下、日母)では、中央情報室という部を中心に、これらのシステムを利用して、会員間の情報伝達、周産期医療機関の間でスムーズな情報交換、さらに一般の方への情報公開などを検討しております。
例えば、日母では、平成8年に日母ネットを、平成9年よりインターネット上に日母のホームページを開設し、さらに平成10年からは日母メーリングリストを開始しました。これらのシステムを使用して、会員間の情報交換、本格的な一般への情報を公開しています。
今後さらにこれらの通信システムを利用して、本会会員に対しては、会員の必要とする情報を速やかに提供することは勿論ですが、一般の方(産婦人科医師以外の方)に対しても、産婦人科の医療についてよりよく理解してもらう必要性があるものと考え、本会の活動内容や産婦人科の医療を正しく理解してもらえるよな資料を提供しようと、日母内で検討しています。今回は、この中央情報室について、その機構や具体的な活動内容を述べさせていただきます。
はじめに、中央情報室の機構についてですが、中央情報室には「情報処理検討委員会」という委員会が設置されています。この委員会では、「事務のOA化」「光カード」「パソコン通信」「インターネット」と、4つの主要テーマについて、それぞれの小委員会を設け検討しています。この委員会では、簡単なことについては、委員の先生方を中心に電子メールを用いた会議で情報の伝達、意見の交換を行い、全体的なことや詳細な事項に関しては、年6回の「情報処理検討委員会」を開催し、委員と担当役員が集まり検討を行っています。
次に、4つの主要テーマについて具体的な活動内容を述べますと、
○事務局のOA化というのは、これらの機器を利用して日母事務局内の効率化を図ることを目的とするものです。
事務局内のコンピュータをネットワーク可能な物に変更し、イントラネット化することで、各部署で作成した文書を相互に交換できるようにすることです。
今までは作成した文章を加筆して手直ししたり、継ぎ接ぎしていたものを使用したり、少し進んだ部署では他の部署間でフロッピィーのやり取りをしていました。前述のシステムを用いれば、これらの方法を用いることなく、別の部署のコンピュータで作成したものを、自分の机上のコンピュータの画面上で修正・保存することが可能になり、スムーズな事務処理が行われることになります。結果として、事務局の効率を上げることができるようになる、と考えています。
既に、事務局内のコンピュータをネットワーク可能な物に変更し、イントラネット化するための配線工事も終了、本格的にこのネットワークを活用することが可能な状態になりました。また、各事務局員にはメールアドレスを所有してもらい、電子メールの送信・受信が可能な状態になっております。
こののようなシステムを更に応用すれば、日母本部と各支部、各支部どうしとの間で、必要な書類を電子メールをはじめとする通信システムを利用して、お互いに書類のやり取りをすることが可能になり、更に能率をあげていくものと思われます。
○光カードというのは、医療用光カード(電子カルテ)を産婦人科領域でどのように利用していけるかを検討することです。
厚生省により既に実施にうつされている、周産期医療のシステム化という事業があります。この中には、総合周産期母子センターと、それに準じる複数の地域周産期母子センター、およびその他の医療機関との有機的な連携を図ること、という事項が盛り込まれています。
本委員会では、この事業をより効率よく運営するための一手段として、光カードを用いることで、この問題を解決できるものと考えています。
光カードというのは、ワープロやコンピュータのフロッピィーディスクのようなものです。
この光カードは、現在産科領域で使われている母子手帳などの内容だけでなく、胎児心拍図などの記録も入力可能で、このカードを持っていれば、どの医師にかかっても、患者の状態を現在の母子手帳以上に詳細に把握することが可能です。
これまでに試験的な運用も含めて、光カードを導入している施設は、病院・診療所など計13施設あります。臨床の現場で実際に運用してみて得られた情報をもとに、機能の追加や使用の変更を行っています。
また、光カード使用に当っては、種類の異なるコンピュータを使用しても入力・展開が可能でなければなりません。この件について、日本における主要コンピュータであれば可能なものにすると、各企業間で合意に達し、現在スムースな運用が可能であるかを検討中です。
○パソコン通信というのは、パソコンの通信システムを利用して、よりよい医療を患者に提供することを目的としたシステムのことです。産婦人科領域(特に産科領域)ではこのシステムを用いて、地域周産期医療用の支援を行おうとするものです。
具体的には、特定地域内で診断に苦慮している実地臨床医が、その症例についてのデータをパソコン通信システムを利用して転送し、地域の専門医師に診断してもらい、必要な治療方法を実地臨床医へ転送するもので、デュアルタイムに患者によりよい医療を提供しようとするシステムです。
実際には、周産期母子センターの医師が専門医として、実地臨床医が扱っている分娩中の胎児情報を彼らに伝送し、より短時間に適切な医療を患者に行おうとするものが実験的に行われています。
現在、この支援システムは、センターと11カ所の病院・診療所との間で通信回線が開設されており、診断の支援を行える有用な手段として、臨床の場に多いに役立つものと考えています。
○インターネットというのは、一つにはニフティサーブを利用した日母ネットの運用です。
これは本会会員を中心としたコミュニケーションの場であり、発言内容は産婦人科実地臨床にそくしたものや、新聞・テレビ等で報道された記事に対する意見であったり、会員相互の情報交換の場として確立されています。さらに、昨年10月からは、日母メーリングリストを開設し、ニフティサーブに代わる会員間の情報交換の場として運用可能かどうかについて検討しております。
二つ目には、インターネットを利用した日母ホームページです。既に開設・運用しておりますが、このホームページは、前述したように、会員ばかりでなく一般の方々にも、日母が行っている事業や産婦人科の診療をよりよく理解してもらうための情報伝達の場と考え、日母内で、その内容について検討し、徐々にではありますが内容を拡大しています。
1日のアクセス件数も数十件におよび、会員や一般からの日母の活動に関する関心の高さがうかがえます。と同時に、正確な情報を伝達するために、さらに一層努力しなければならないと痛感しております。
その他の事業としましては、本会で作成した刊行物には非常に重要なデータが多く、既に作成した刊行物や発刊予定のものを可能な限りデジタル保存しておき、CD-ROM化していくことです。
これらは、産婦人科医師が自己学習のために用いるだけでなく、日常診療においても患者に対して、画面を通して患者自身の病態を把握してもらうのに役立つようなものを作成することを目的としています。
既に保存方法につきましては、委員の先生方の意見から、保存の形式が検討され、日母内の刊行物は、今後この形式で保存していくようになっています。
本日は、中央情報室の機構や活動内容について紹介させていただきました。