平成11年6月21日

日母全国支部社保担当者連絡会より

日母産婦人科医会幹事 秋山 敏夫

 

 本日は、5月30日に行われました、第29回全国支部社会保険担当者連絡会について、お話致します。この連絡会は、毎年この時期に全国の社会保険審査委員が集まり、審査の上で問題となる点を協議する場であります。

 今回は、京王プラザホテルにおいて、69名の社保担当者、28名の本部役員・委員が集い活発な討論が行われました。

 まず坂元会長の挨拶で始まり、次いで新役員紹介の後、白須担当常務理事、小林日母 社会保険委員会委員長、上妻日産婦社保学術委員会 委員長代理の挨拶がありました。

 この中で坂元会長は、医療供給体制、診療報酬体系、一般的な不妊治療及び生殖医療の問題、介護保険や関連となる老年症候群の概念、DRG/ PPS問題等を取り上げられ、本会が2000年に向かって努力が必要であるとのお言葉がありました。

 まず連絡・協議事項です。

 中央情勢報告として、前原副会長は、平成12年4月診療報酬点数改定の問題、参照価格制について、これからの診療報酬体系のあり方に関しての産婦人科の特殊性、診療におけるコ・メディカルの役割、医師の技術料の問題点などをお話になられました。次いで、白須常務理事が、診療報酬のたたき台、平成10年度事業報告、平成11年度事業計画をお話になられました。

 次は、平成10年度ブロック社保協議会の質疑事項です。

 一番目は、新生児管理保育料をすでに徴収している新生児に疾患が発生した場合、初診料は算定できないとする本会の見解ですが、平成9年3月2日付けの国民健康保険中央会の通知、これは「分娩に伴う入院中の新生児が、保険給付の対象となる診療を受けた場合に、初診料は算定できるか」に対し「新生児に疾患ありと認めて療養の給付を開始した日に初診料を請求できる」との回答は誤りであることが、平成11年4月28日付け厚生省保険局医療課から各基金に通知され、本会の社会保険必携の通りとなりました。

 二番目は、子宮外妊娠病名による子宮内膜掻爬術の算定の可否についてですが、術前の内膜組織検査は可、術後の出血予防のための手術は不可となります。

 三番目は、パルスドップラー法の適応範囲は、婦人科悪性腫瘍の診断時及びNSTの適応の内Bモードに適応があるものとなります。

 四番目は、妊婦GBS感染疑いの保険適応はスクリーニングは、保険給付外、結果としてGBS陽性の場合に保険算定可となります。

 五番目は、CISと切迫流産病名での円錐切除術と子宮頸管縫縮術の併施ですが、例数と病態とを勘案し、皮切が異なるため両者の算定は可となります。

 六番目は、CISにおける術式は、単純子宮全摘術の場合であっても、広靭帯を展開し、リンパ節の観察や摘出例があり、子宮悪性腫瘍手術の算定は可となります。

 次に、平成12年度診療報酬点数改定に向けての要望についてです。

 今回、日本医師会から従来より早期提出の指示があり、急遽取りまとめました。

1) 産婦人科外来診療加算の新設

2) 特定疾患療養指導料の適応疾患の拡大(卵巣機能不全、卵巣機能欠落症、閉経期および女性更年期状態)

3) 産科手術点数の改定(帝王切開術、骨盤位娩出術、吸引・鉗子娩出術、子宮頚管縫縮術、流産手術)

4) 婦人科手術点数の改定と新設(改定;子宮内膜掻爬術、子宮付属器腫瘍 摘出術:開腹・腹腔鏡下によるもの、子宮全摘術)(新設;外陰・腟血 腫除去術、腹腔鏡下子宮筋腫核出術、骨盤腹膜利用造腟術)

5) 分娩監視装置の適応拡大

6) 赤血球不規則抗体検査を算定できる対象手術の拡大

7) 特定注射薬剤治療指導管理料の適応注射品目の拡大(hMG製剤、hCG製剤、GnRHアナログ製剤)

8) 生体検査判断料の適応拡大

9) 静脈麻酔時の経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定

10) 「その他の心理検査」に「更年期指数」の追加(日本更年期医学会との共同提案)

11) 細胞診検査の点数改定並びに迅速細胞診・特殊染色細胞診検査の適応拡大

12) 子宮卵管造影時の腔内注入手技料の点数改定

13) ヒューナー検査の点数改定

14) NSTの外来使用

15) 新生児介補料の削除

 以上の15項目を提案しました。

 次は、妊娠・分娩の給付のあり方についてです。

 昭和55年に「出産と給付のあり方」と題し、まとめたことがありますが、その後の社会情勢の変化を考慮し、再度検討しました。内容として、現物給付化した場合の問題点、正常妊娠・分娩における高レベルの包括的医学管理の必要性、アメニティの問題点、医療費抑制策の影響、助産所や自宅分娩の取り扱い、現物給付化したときの利点等について小林社保委員会委員長より解説され、会長宛 答申した旨 報告されました。

 次は、支部提出議題です。

 一番目は、超音波検査の胎児適応については、医報平成9年3月号の「平成8年度社保の動き」にあるように、胎児異常により分娩進行が妨害されると考えられる場合、例えば水頭症等に適応となります。

 二番目は、正常妊婦における感染症の疑い病名での検査。「風疹疑い」「B型肝炎疑い」等のみで、他の検査や治療が行われていない例は、単にスクリーニングと考えられ、保険給付外となります。

 三番目は、子宮全摘術時、ベリプラストの使用ですが、適応は臓器の接着であり、子宮全摘後は適応外となります。しかし、腹膜を広い意味で臓器と考えるなら適応有りとも考えられます。この場合は詳記が必要となりますが、各地区の審査委員会での検討が必要とされます。

 四番目は、NST適応疾患の羊水異常に前期破水は適応となるかという問題がありましたが、適応とはなりません。

 五番目は、CPD予定帝切妊婦が手術日前に陣発した場合、緊急帝切の算定は可となりますが、できれば切迫子宮破裂や胎児仮死の病名、若しくは詳記が必要と思われます。

 六番目は、硫酸マグネゾールの追加適応申請問題に関して、佐藤アドバイザーから経緯の説明があり、認可にはもう暫く時間がかかるとのお話がありました。

 七番目は、B型肝炎母子感染防止に係る保険診療上の取り扱いです。平成7年3月31日保険発53号によれば、この取り扱いは、健康保険の給付の対象になり、検査及び加療が行えますが、診療報酬明細書には傷病名欄に「B型肝炎の疑い」等と記載、乳児診療分の摘要欄には「HBs抗原陽性妊婦からの出生」と記載、外来レセプトを使用することになっています。「医療保険必携」平成10年版の新生児初診料の記述(新生児の疾病には入院レセプトを使用する)と乖離している旨の問題点が提示されましたが、B型肝炎母子感染防止に係る保険診療上の取り扱いに限り外来レセプトを使用し、他、入院中の新生児の疾患は従来通り入院レセプトを用いることの再確認がされました。

 八番目に、生後六月以上経過したHBs抗原陽性妊婦からの出生児の取り扱いでは、6ヵ月以後は保険病名があれば算定可、期間は社保運用上適切な時期までとなります。地区委員会で小児科との検討が必要であります。

 九番目に、日母社保委員会での決定事項の徹底です。産婦人科独自のものは当局に認知されており、産婦人科以外の先生には「必携」を基準とするよう依頼してください。また、他科との関連、例えば、抗がん剤等の取り扱いは地区審査委員会で他科との討議が必要であります。

 以上本年度の社会保険担当者連絡会の協議についてお話いたしました。