平成11年7月5日
本年度日産婦認定医制度試験について
日産婦認定医制度中央委員会委員長 藤井 信吾
日本産科婦人科学会認定医制度は、昭和62年4月に発足いたしました。認定医認定審査、すなわち認定医試験は平成5年度より、本会認定医制度規約第3章「認定医の審査と登録」の定めるところにより施行されております。
日本産科婦人科学会認定医制度は本年でその発足以来13年目となりますが、社団法人日本産科婦人科学会は社団法人日本母性保護産婦人科医会と協力し、日本産婦人科学会認定医の認定と、卒後および生涯研修等、認定医制度の運営と発展に必要な事業の推進に努めております。
さて、日本産科婦人科学会認定医制度は産婦人科領域における広い知識、練磨された技能と高い倫理性を備えた産婦人科医師を養成し、生涯にわたる研修を推進することにより、産婦人科医療の水準を高めて、国民の福祉に貢献することを目的にしております。 そのため学会は卒後研修のための指導施設の指定を行い、研修医は指導責任医のもと、学会の定めた卒後研修カリキュラムに沿って臨床研修を行わなければなりません。したがって、本審査は一定の水準に達した産婦人科医を学会が認定するためのものであり、認定医制度規約に定めるところにより施行されております。
さて、ここでわが国における認定医制度の歴史について簡単に述べてみましょう。わが国では専門性をもつ各医学領域の医師の資格認定制は、欧米に比べて発足が遅れておりましたが、昭和37年4月に日本麻酔指導医制度が最初に発足いたしました。昭和56年には22学会が加盟した学会認定医制協議会が発足しました。日本産科婦人科学会はやや遅れて、昭和62年に学会認定医制度を発足しました。現在の日本産科婦人科学会認定医制度は、日本医師会、日本医学会、学会認定医制協議会の三者承認を得ているものであります。
なお学会認定医制協議会には、平成11年3月現在48学会が加盟しております。
さて、本年度の日本産科婦人科学会認定医認定審査の試験は7月24日の土曜日に実施されます。この審査の実施に関しては、すでに繰り返し機関誌に会告を掲載し、申請を希望される方には、所定の手続きをとられるように配慮いたしております。申請受付は5月31日で既に締め切られました。認定審査は各地方部会の認定医制度委員会が実施する一次審査と、中央認定医制度委員会が実施する二次審査により実施されます。認定一次審査を受けることができる対象はわが国の医師免許を有し、通算5年以上本会会員であり、学会指定の卒後研修指導施設で、卒後研修カリキュラムに沿って通算5年以上の臨床研修を終了した医師です。従って、平成11年度に認定の申請ができる資格を有する医師は、平成6年度以前に卒後研修を開始した方々となります。
なお、留学や疾病、その他の理由で1年以上産婦人科臨床研修を離れた医師は、研修開始からの合計研修期間が通算5年以上の条件を満たした時点で申請することができます。
つぎに、実際の認定審査の過程をお話しします。
申請には、認定医認定申請書、履歴書、研修記録、研修証明書、医師免許証の写し、症例に関するレポート、審査料を所属の各地方委員会に提出しなければなりません。各地方委員会では書類による一次審査を実施します。一次審査の合否は6月30日までに申請者に連絡されます。一次審査の合格者には二次審査の実施日、場所などについても同時に連絡いたします。この放送の時期には受験者にはすでに報告が届いているはずです。
つぎに、認定二次審査について説明いたしましょう。
今年度の認定二次審査は7月24日の土曜日に、東京は都市センター、大阪は大阪国際交流センターで実施されます。北海道、東北、関東ブロックに所属する受験者、および北陸ブロックのうち新潟に所属する受験者は東京会場で受験して頂きます。北陸ブロックのうち富山、石川、福井に所属する受験者と、東海、近畿、中国、四国、九州の各ブロックに所属する受験者は大阪会場で受験して頂きます。今年度は東京会場では200名、大阪会場では168名の受験者が試験を受ける予定です。なお、二次審査の面接試験を行うために、試験実行委員会がおかれています。試験実行委員会は中央認定医制度委員長を委員長とし、中央委員会および試験開催地からそれぞれ若干名の委員をもって構成されています。二次審査の第1段階試験担当者は東京会場では44名、大阪会場では39名に委嘱しております。また、二次審査の第2段階は東京、大阪いずれも6名の先生に担当していただきます。当日は午前10時から午後4時20分まで午前組、午後組の2グループに分けて面接試験を行います。受験者は試験開始60分前までに説明会場に集合していただきます。
試験方法は第1段階では3名の試験官が、研修記録、症例レポートなどをもとに約5〜10分間面接を行い、評価いたします。また、例年通り、面接に先立って疾患別の共通問題を渡し、面接時に疾患の概要、治療方針などについて約5〜10分間の説明を求めることも実施する予定です。従って、第1段階の試験時間は1人あたり約15〜20分です。
第1段階評価で問題があった受験者には、第2段階の面接試験を受けていただき最終評価を行う場合もあります。なお、共通問題は腫瘍、生殖、周産期、一般の4分野から作成します。その形式については、すでに機関誌「研修コーナー」に前年度の問題とそのポイントが掲載されておりますので、参照して下さい。なお、本年度より、日産婦学会のホームページにも同じ内容が掲載されています。本年度も同様な形式の問題を作成する予定ですので熟読しておいてください。
本試験は受験者の思考過程の系統化、創意表現能力、問題解決能力などをみるものであり、決して落とすための試験ではありません。研修記録や症例レポートでは記載法、知識について確認します。また、共通問題では知識、技能、態度などをくみ取り、評価いたします。特に症例レポートの3症例については十分内容を把握し、症例に関する質問に解答できるように準備しておいてください。
審査結果の通知は平成11年9月末日までに各申請者宛に通知いたします。認定合格者は登録申請書に登録料8,000円を添えて平成11年10月31日までに認定医の登録を本会宛に申請してください。認定証は平成11年10月1日付けで交付されます。また、平成11年度認定医認定審査合格者の氏名は本会機関誌にて公表されます。
最後に認定医制度は「認定基準の統一、明確化等により、国民に受け入れられる制度として確立」されなければならない時期にきております。医療に対して患者の知識が深まるとともに、認定医資格とはどのようなもので、認定医でない医師とどのような優れた点があるのかなど、認定医制度に更なる充実を要求してくるでしょう。このような、患者さんや社会からの要求に応えるため、本会では平成12年度から認定医認定試験に筆記試験を導入することが決定されております。現在、来年7月からの導入を目指して、筆記試験の形式や評価法などにつき検討中ですが、本年12月までには最終案が決定され、来年1月には筆記試験に関する会告を本会の機関誌やホームページに掲載する予定となっております。
また、近い将来、専門医制との関係についても整理検討する必要が生じてくるものと思われます。この点に関しても、認定医制度委員会内に小委員会を設け、他学会の専門医制度や、本会が専門医制度を導入する上で解決すべき問題点等につき検討中であります。これらの点も考慮して、また、日本母性保護産婦人科医会とも協調しつつ、本会の認定医制度が社会的にも受け入れられ、更に発展するよう努力を続けたいと考えております。