平成12年2月14日

本年度日本産科婦人科学会認定医制度試験について

日本産科婦人科学会中央認定医制度委員会委員長 藤井 信吾

 

日本産科婦人科学会認定医制度は、昭和62年4月に発足いたしました。本制度は産婦人科領域における広い知識、練磨された技能と高い倫理性を備えた産婦人科医師を養成し、生涯にわたる研修を推進することにより、産婦人科医療の水準を高めて、国民の福祉に貢献することを目的にしております。

この目的を達成するため、学会は卒後研修のための指導施設の指定を行い、機関誌の研修コーナーや学術集会時の生涯研修プログラムを企画して、生涯にわたる産婦人科の研修の場を提供してきました。研修医は指導責任医のもと、学会の定めた卒後研修カリキュラムに沿って臨床研修を行わなければなりません。

 一定の水準に達した産婦人科医を学会が認定するため、本会では、認定医制度規約第3章「認定医の審査と登録」の定めるところにより、平成5年度より認定医認定審査、すなわち認定医試験を施行してきました。そして、平成10年度の本会理事会ならびに第51回評議員会にて、客観的で透明性の高い認定医試験制度を確立し、21世紀における産婦人科医療の向上を目指して、平成12年度より、認定医試験に筆記試験を導入することが決定されました。筆記試験を加えた主旨は受験者をふるい落とすためではなく、あくまで認定医のレベルアップを図り、また、そのための研修システムを充実させ、産婦人科医療の水準を高めることによって最終的に国民の福祉に貢献することです。

 具体的には、平成12年度から3年間の試行期間をおき、その間に、研修到達目標の範囲と水準の設定、合格基準の設定、認定医認定試験実施要綱の改訂などを行い、平成15年度から本格導入する予定です。

 なお、この試行期間中に実施する筆記試験の成績は、認定医審査の合否判定には直接的には使用しませんが、なんらかの形で参考にする予定です。

 さて、本年度の日本産科婦人科学会認定医認定審査の試験は、7月29日の土曜日に筆記試験が、7月30日の日曜日に面接試験が行われます。この審査の実施に関しては、すでに機関誌52巻1号に「会告」と「会員へのお知らせ」を掲載し、申請を希望される方には、所定の手続きをとられるように配慮いたしております。申請受付は5月1日から5月31日までです。認定審査は各地方部会の認定医制度委員会が実施する一次審査と、中央認定医制度委員会が実施する二次審査により構成されています。

認定一次審査を受けることができる条件は、わが国の医師免許を有し、通算5年以上本会会員であり、学会指定の卒後研修指導施設で、卒後研修カリキュラムに沿って通算5年以上の臨床研修を終了した医師です。従って、平成12年度に認定の申請ができる資格を有する医師は、平成7年度以前に卒後研修を開始した方々となります。

 なお、留学や疾病、その他の理由で1年以上産婦人科臨床研修を離れた医師は、研修開始からの合計研修期間が通算5年以上の条件を満たした時点で申請することができます。

 つぎに、実際の認定審査の過程をお話しします。

 申請には、認定医認定申請書、履歴書、研修記録、研修証明書、医師免許証の写し、症例に関するレポート、審査料を所属の各地方委員会に提出しなければなりません。各地方委員会では書類による一次審査を実施します。一次審査の合否は6月30日までに申請者に連絡されます。一次審査の合格者には二次審査の実施日、場所などについても同時に連絡いたします。

 つぎに、認定二次審査について説明いたしましょう。

 今年度の認定二次審査は7月29日の土曜日と30日の日曜日に、東京は都市センター、大阪は千里ライフサイエンスセンターで実施されます。筆記試験は29日土曜日の午後に、面接試験は30日の日曜日に行う予定です。北海道、東北、関東ブロックに所属する受験者、および北陸ブロックのうち新潟に所属する受験者は東京会場で受験して頂きます。北陸ブロックのうち富山、石川、福井に所属する受験者と、東海、近畿、中国、四国、九州の各ブロックに所属する受験者は大阪会場で受験して頂きます。

 29日の筆記試験は、午後2時から午後5時まで行う予定です。試験問題は、腫瘍、生殖、周産期、および一般の4分野から、各30題ずつ、合計120題程度を出題しますが、回答形式はマークシート方式とする予定です。出題範囲は学会が定めた卒後研修カリキュラムに基づいており、出題水準は産婦人科認定医としての知識と技能のminimum requirementを習得しているか否かを評価することを目的としています。なお、一般の問題には社会保険制度に関するものも含みます。

 30日の面接試験は、午前10時から午後4時20分まで午前組、午後組の2グループに分けて面接試験を行う予定です。受験者は試験開始60分前までに説明会場に集合して下さい。面接試験は受験者の系統的思考能力、創意表現能力、問題解決能力、患者さんへの説明能力や態度などをみるものであり、決して落とすための試験ではありません。面接試験の方法は第1段階では3名の試験官が、研修記録、症例レポートなどをもとに約5〜10分間面接を行い、記載法、知識について評価いたします。特に症例レポートの3症例については十分内容を把握し、症例に関する質問に解答できるように準備しておいてください。

 また、例年通り、面接に先立って疾患別の共通問題を渡し、面接時に疾患の概要、治療方針などについて約5〜10分間の説明を求めることも実施する予定です。共通問題は腫瘍、生殖、周産期、一般の4分野から作成します。その形式については、すでに機関誌「研修コーナー」および本会ホームページに昨年度の問題とそのポイントが掲載されておりますが、本年度も同様な形式の問題を作成する予定ですので熟読しておいてください。

 なお、第1段階評価で問題があった受験者には、第2段階の面接試験を受けていただき最終評価を行う場合もあります。

 審査結果の通知は平成12年9月末日までに各申請者宛に通知いたします。認定合格者は登録申請書に登録料8,000円を添えて平成12年10月31日までに認定医の登録を本会宛に申請してください。認定証は平成12年10月1日付けで交付されますが、各申請者への認定証の発送は登録手続きが完了した方から順に行われます。また、平成12年度認定医認定審査合格者の氏名は本会機関誌およびホームページにて公表されます。

 最初に述べましたように、認定医制度を「認定基準の統一、明確化等により、国民に受け入れられる制度として確立」するために、本会では平成15年度からの筆記試験の本格的導入を目指して、本年度から試行的に導入を行います。

筆記試験に関する会告やお知らせは、今後も、本会の機関誌やホームページに掲載する予定ですので参照して下さい。

 最後に、近い将来、専門医制との関係についても整理検討する必要が生じてくるものと思われます。この点に関しても、認定医制度委員会内に小委員会を設け、他学会の専門医制度や、本会が専門医制度を導入する上で解決すべき問題点等につき検討中であります。これらの点も考慮して、また、日本母性保護産婦人科医会とも協調しつつ、本会の認定医制度が社会的にも受け入れられ、更に発展するよう努力を続けたいと考えております。