平成12年11月6日放送

最近の日母産婦人科看護研修学院関連の事業について

日母産婦人科医会常務理事 佐々木 繁

 

まず、平成12年度第21回全国日母産婦人科看護研修学院卒後研修会は、本年から研修学院関係者以外で産婦人科医療機関に勤務しておられる看護職員の方々からも、気軽に参加して頂ける様、「産婦人科看護従事者研修会」の名称を併記させて頂きました。

その研修会は9月23日土曜日の午後2時から5時まで、札幌市のロイトン札幌において、坂元会長をはじめ本部関係者を含めまして約220名の参加者があり、会場は満席で最後まで席を立つ人もなく、大変盛況でありました。

私の開会の辞の後、坂元会長の挨拶があり、最初に講演を聴くに当たっての心得をのべられ、最後に看護には知識や技術もさることながら、心が大切であると結ばれました。

講演のトップは、産科看護委員会柏崎委員長の司会で「産科救急における施設間連携と看護の役割」と題して、船橋市立医療センター副院長で日母常務理事の清川尚先生にお願い致しました。千葉県の救急ネットワークや、母体搬送の目安と搬送のテクニック、チェックポイントについて説明され、とくに助産婦業務のケアポイントについても述べられました。さらに今後の産科救急におけるリスクマネージメント作りや情報連携システムの概要についても説明されました。

ついで産科看護委員会竹本副委員長の司会で「産科出血の診断と治療」と題して、浜松医科大学学長で日母常務理事の寺尾俊彦先生にお願い致しました。妊産婦死亡の年次推移でみますと最近10年程は減少が鈍っていること、死亡原因は産道損傷、弛緩出血などの出血によるものが多いこと、特に年齢が高くなるとリスクが高くなる傾向にあることを述べられました。そして、産科出血の各種とその診断、治療のコツ、ショックの鑑別とその対応について説明されました

最後は産科看護委員会菊川委員の司会で「破水の診断」と題して、日本産科婦人科学会会長で北海道大学医学部附属病院院長の藤本征一郎先生にお願い致しました。破水の鑑別診断と治療方針、子宮内感染は破水を高頻度に引き起こすので感染を早く認識すること、破水のメカニズム、超音波断層法による頸管短縮のチェック等について述べられ、新しい破水診断法と教室で提唱されている前期化学破水について説明されました。

閉会の辞で新家副会長は、産科看護職員は育児の面でも母親のサポートに関わって欲しいと挨拶され会は終了いたしました。

次に3年ぶりとなりますが、10月15日午後1時より4時まで、東京の丸の内ホテルにおいて開催されました第31回全国日母産婦人科看護研修学院連絡協議会について報告いたします。当日は24学院の代表者25名に、本部より坂元会長、新家産科看護担当副会長、柏崎産科看護委員会委員長等16名、合計41名のご参加を頂き、大変有意義な協議会であったと思います。

牛島理事の開会の辞に続き、坂元会長より次のような挨拶がありました。

准看護婦の廃止問題や、助産婦養成所が減少する中で、看護大学の増設など、現在は高レベルのスタッフを養成しようという流れがある。一方、産婦人科診療の現場では、レベルアップは勿論だが、何よりも最低限の基礎的な技術を身に付けたスタッフの養成が望まれている。また、医療事故には十分注意しなければならない。近年開校する学院数の減少により、その存続が危倶される中、研修学院の果たす役割、将来展望について十分な討論をして頂きたい。

続いて私の挨拶の中で、この3年間に研修学院を取り巻く情勢が大きく変わったこと、まず産科看護学院から産婦人科看護研修学院と名称変更し、入学資格も助産婦、保健婦、看護婦、准看護婦としたこと、入学者の減少、財政難が強まる傾向にあること等報告いたしました。

さらに、本部におきましては、平成9年度で制度を廃止した看護無資格者である「産科看護助手」の、保健婦助産婦看護婦法違反となる医療行為について、厚生省やマスコミ等からの調査要求や問い合わせに追われている現況についても述べました。

議事に入り、1)平成11年度事業報告、平成12年度事業計画の報告の後、2)先に述べました札幌での研修会について概略報告されました。次に3)昭和37年より平成12年までの日母産婦人科看護研修学院の推移をみますと、昭和57〜60年頃をピークに開校数は減少する一方で、休校数は増加しております。4)「産科看護助手」の実態調査及び業務内容調査について報告されました。

昨年から某団体が研修学院について色々細かな疑問や要望を厚生省に提出しております。まず昨年末、平成9年度で廃止した無資格者の入学をまだ認めている研修学院があり、募集要項にも不備があるとして、厚生省から学則・募集要項の調査を依頼され、学院長の先生方にご協力をお願い致しました。その結果、残念ながら2校に学則不備があり、3名の無資格者が入学していたことがわかり、直ちに改正を求めました結果、12年度よりは本部の学院規定が遵守されております。

続いて4月には無資格者(産科看護助手)が研修終了時の勤務先に現在も勤務しているか否かについて実態調査を行いましたが、平成5年度より平成9年度までの「産科看護助手」は278名おり、その内103名が該当しております。

「日母医報」7月号に「無資格者の医療行為に関する通知」を掲載しましたが、これは本年5月に厚生省より出された「医療法第25条の規定に基づく立入検査の実施について」であり、「無資格診療等に係る通報等があった場合には直ちに検査を実施し、無資格者による医療行為が行われていることが明らかになった事例については、刑事訴訟法第239条の規定により告発するなど厳正に対処する」というものです。8月に北海道の某産婦人科医院で、市民からの通報で無資格者の医療行為が発覚し、北海道警察が家宅捜査したことが新聞に報道されました。このことも関連して、厚生省から「産科看護助手」の業務内容について実態調査を要請されました。9月に対象医療機関に調査をお願いした結果、保健婦助産婦看護婦法違反となる行為は行われていないことが判明し、調査結果を厚生省に報告いたしました。

5)委員会報告についで、6)現況調査では本年度は55学院中27学院が開校し、340名入学し、その内看護婦が94名、准看護婦が246名と報告され、次いで7)全国統一試験結果、8)永年勤続者、成績優秀者、産科看護助手から産科看護婦、産科准看護婦への申請、9)日母会務出席者に係る傷害保険契約について報告されました。

連絡・協議では平成12年度全国統一試験は平成13年2月20日に実施されること、及び「産婦人科看護研修学院だより」第37号の内容が了承されました。

ついで1時間40分にわたり、学院の現況や将来展望について全学院から率直な、そして活発なご意見を発表して頂きました。最後の私のまとめの挨拶でその内容をご理解頂きたいと思います。

現在、看護の質が大変問われている時代であります。研修学院において毎年300名以上の看護職員から、1年間に捗り産科学及び一部の婦人科学について一貫して研修して頂き、そして、それぞれの医療現場で看護の質をレベルアップさせ、さらには看護職員が関わるような医療事故を減少させることが出来るならば、そこに研修学院の存在意義があるのではないでしょうか。

全国には研修学院の歴史的使命は終わったとして、研修学院廃止論を唱える先生方もおられます。しかし、学院の必要性を認めてその存続を強く訴えられ、財政面、教育面で懸命に努力しておられる本日ご出席の学院長さんや支部の先生方もまた大勢いらっしゃいます。産科を取り扱う医療機関が少なくなったための資金難や支援募金を集める等、或いは講師の老齢化による後任難が報告されました。一部を除いて、いづれの学院も生徒集めに苦労しておられますが、開業医の先生方の熱意が大事であること、また、研修学院に対しましては生徒側からの希望も多く、勉強に熱心であるとのご意見もありました。

しかしながら、年々休校数が増加傾向に、入学者数が減少傾向にあり、研修学院を取り巻く情勢がここ数年変わってきているのも事実です。本部と致しましては、全国の情勢を睨みながら、存続の方向で前向きに努力して参りたいと存じます。

本日の先生方のご意見を十分に参考にさせて頂き、今後の産科看護委員会で研修学院のあり方について引き続き討議し、その情報を随時お伝えしてまいりたいと思います。先生方もご意見ございましたら、どうか本部にお伝えください。

最後に、新家副会長より長時間に渉るご討議に対し謝辞が述べられ、会は終了しました。