平成13年3月12日放送
 改正廃棄物処理法-感染性廃棄物について-
 日母産婦人科医会常務理事 佐藤 仁
 

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律が平成12年6月に一部改正されました。

 感染性廃棄物の処理に関し「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」が平成4年に厚生省通知により策定されましたが、平成10年に「廃棄物の処理、清掃に関する法律」の改正と「感染症の予防と患者に対する医療に関する法律」の制定に伴いマニュアルが改正されました。

 この平成10年に改正され策定した目的は、特別管理廃棄物に指定された、医療関係機関等から排出された感染性廃棄物について、その適正な処理を確保するために必要な具体的な手順を、政省令に従い解説し、生活環境保全と公衆衛生の向上を目的としたものです。」

 医療関係機関等から排出される廃棄物には医療行為等に伴って発生する廃棄物と医療行為以外の事業活動により排出される廃棄物があります。

 廃棄物処理法では、廃棄物は19種類の産業廃棄物と一般廃棄物に分けられ、それぞれ特別管理廃棄物と、それ以外のものに区分され、保管、収集、運搬及び処分に関する基準が定められています。また

 廃棄物処理法では、一般廃棄物の処理は市町村の責任で行うことになっていますが、事業活動によって生じた廃棄物は排出事業者に適正に処理する責務があるとされています。

 医療関係機関等から発生する一般廃棄物には、紙くず類、厨芥、繊維くず、木屑、皮革類、実験動物の死体、一般廃棄物を焼却した「燃え殻」などです。

 医療行為等で発生する廃棄物の中には、感染性廃棄物と非感染性廃棄物があります。

 マニュアルの対象は、特別管理産業廃棄物のうち感染性廃棄物に適用されます。 

 感染性廃棄物の範囲は、医療関係機関等から発生する廃棄物で、

  1. 血液、血清、血漿及び体液ならびに血液製剤
  2. 手術に伴って発生する病理廃棄物
  3. 血液等が付着した鋭利なもの
  4. 病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの
  5. その他血液等が付着したもの
  6. 感染症新法、結核予防法等に規定されている疾患に罹患した患者から発生したもので感染の恐れがあるもの、若しくはこれらが付着した又はその恐れがあるもの 

 を言います。

廃棄物の処理体制では

 医療関係機関等は、医療行為によって生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。とされ、産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物は、排出事業者が自らの責任の下で、自ら又は他人に委託して処理するものとする。とされています。

 医療関係機関等では、感染性廃棄物を適正に処理するためには、施設内に特別管理産業廃棄物管理責任者を置き、処理計画書及び管理規定に基づき分別、梱包、中間処理等に係る具体的な実施細目を作成し管理しなければなりません。

 診療所では一般に発生する感染性廃棄物の量が少ないなどのことから処理計画、管理規定を定める必要はありませんが、管理体制の徹底を図ることは必要です。

 感染性廃棄物を施設内で処理するには、施設内の焼却施設で焼却、溶解設備で溶解、滅菌装置で滅菌、薬剤又は加熱による消毒等を行い、感染性廃棄物を一般又は産業廃棄物として処理することができるとされていました。

 自ら処理しない場合は、都道府県知事・保健所設置市長の許可を受けた処理業者に事前に委託契約を締結し、処理を委託することができる。とされています

 感染性廃棄物の処理を業者に委託している場合は、管理者が契約に基づいて適正に処理が行われているかどうかを、産業廃棄物管理表(マニフェスト)の管理を通じて把握し、帳簿を備え必要事項を記載し、1年毎にまとめ、5年間保存しなければなりません。

 平成10年の改正後も適正処理に必要な施設の整備が困難であったり、悪質な不法投棄の増大があったりしたため、産業廃棄物処理に対する住民の不信感が増大し、不安感が高まったため、平成12年に住民の信頼回復と適正処理の確保のため、再度改正がありました。

今回の改正では、適正な処理体制を整備する為に
廃棄物処理センター制度を見直しし、施設の指定要件を緩和し、民間資金の導入等による施設の整備促進、選定業者の拡大で処理を推進するものとしています。
不適正処理に対する規制の強化のために
・施設の許可要件を強化し、処分に違反があれば許可の取り消しを行うこと。
・産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度を見直しし、廃棄物排出事業者である医療関係機関は、最終処分までの処理が適正に行われたことを確認する義務を負わされました。
・廃棄物の焼却の規制として、何人も廃棄物処理基準に従って行う場合、廃棄物を焼却してはならないものとする、とされています。
・措置命令の強化
・罰則の強化等が改正されました。

 この改正は今年、平成13年4月1日から施行されます。

 今後の問題点は、廃棄物の焼却が禁止されたことから、施設内での処理が著しく制約されたことにより、感染性廃棄物の処理の委託がますます多くなることが予想されます。また、これまでは、それぞれの廃棄物を指定業者と契約して処分すれば良かったものが、これからは、指定業者が最終処分を完了したかどうかを我々医療者側が産業廃棄物管理票(マニフェエスト)を通じて確認し、最終処分の終了した旨を記載したマニフェストの写しを時系列的に整理し保存することが必要であり、マニフェストの写しの送付がないときには、自ら状況を把握し、関係官庁に通知し、適切に対処しなければならないことです。

 その上、産業廃棄物管理票(マニフェスト)や、廃棄物の焼却の禁止等に関する規定の違反に対する罰則が新たに設けられたうえ、所要の罰則が強化されましたので、各医療機関は十分注意して対処しなければなりません。