- 平成13年3月19日放送
日母名称変更について(日本産婦人科医会)
日母産婦人科医会副会長 新家 薫
現在、日本母性保護産婦人科医会では、定款変更について厚生労働省雇用均等・児童家庭局の母子保健課と折衝をかさねておりますが、本日はその進捗状況と定款変更の主な項目についてお話したいと思います。今回の主な変更目的は、本会の名称を「日本母性保護産婦人科医会」から「日本産婦人科医会」に変えようとするものです。この名称変更には約10年の歴史があり、まずこの経緯ついてお話致します。
本会の旧名称である「日本母性保護医協会」は、「人口国策及び優生上の見地から不良なる子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護する」ことを目的とし、優生保護法指定医師を会員として優生保護法の適正なる運営と実施の推進を事業の柱として昭和27年に設立されことは、古い会員の方はご存じであると思います。しかし、「日本母性保護医協会」という名称は、本会が産婦人科医師の団体であることを社会一般には理解されにくく、特に諸外国の産婦人科医師の団体などに対しては、まず本会の名称について説明し了解を得る必要がありました。更に、医療施設での優生保護法指定医師が指導医師を含め数名に制限され、若い産婦人科医師は指定医師の指導下という名目で自由に人工妊娠中絶を実施していたため優生保護法指定医師制度には全く無関心で、若い産婦人科医師の本会への入会を促進するためには、本会の事業が優生保護法の運用を目的とするだけではなく、広く母子保健の事業等を実施していることを広告する必要がありました。そのため、本会の名称変更を含め、構成、目的、事業等幅広い検討を行う必要が生じていたわけであります。
平成3年、坂元正一会長は、会長諮問の委員会である「定款検討委員会」(代議員会委員11名、日母執行部委員11名、岩永邦喜委員長)を発足させ、将来的ビジョンにたって定款全般にわたり見直しを行うこととしました。この委員会での検討案は平成4年3月8日に答申され、同年3月29日の代議員会及び総会において報告され、この答申を基に関連所務官庁との折衝に入ることを承認されました。
平成4年、定款変更について、当時の日母の主管である厚生省精神保健課との折衝を開始しました。しかし、会の名称と同時に会の目的・事業を変更することは、新しい社団法人を設立するに等しいという精神保健課の考えから折衝は難航したわけであります。
平成5年に至って本会は会の目的・事業の変更をあきらめ、会の名称をまず変更することとしました。厚生省精神保健課と折衝を行なった結果、「日本産婦人科医会」と名称を変更することに関し一度は内諾を得ました。しかし、日母と関連団体との話合いが、行われていなかったことを心配した精神保健課は、関連団体に連絡をとった結果、その団体の強い要望により、「母性保護」の削除は好ましくないと判断し、本会の名称を「日本産婦人科医会」から「日本母性保護産婦人科医会」に変えて平成6年5月25日に定款変更を認めました。この時、本会の「特別会員」制度も新設されています。一社団法人が、他の社団法人の定款変更に関与したことに対して、当時の本会会員から不満が噴出したことも事実であります。
平成8年優生保護法の改定が行われました。この改定の趣旨は、優生保護法の持っていた「優生思想」の部分が「障害者を差別している」ことに基づいて行われたものであります。本会の定款の目的にも「民族の優生化を促進するとともに母子の生命健康を保護増進し、もって国民の繁栄を図ることを目的とする」とあったため、厚生省母子保健課は本会の定款変更を求めてまいりました。
このため本会の
(目的)第4条を「母子の生命健康を保護するとともに、女性の健康を保持・増進し、もって国民の健康の向上に寄与することを目的とする」と変更し、
更に、
(事業)第5条の2を「優生保護法に関する啓蒙」から「女性保健に関する啓発」に変更し、平成10年4月21日に認可されました。このため本会の目的規定には、従来の母性保護の業務に加え、女性保健に関する業務を追加したために、本会の名称に、「母性保護」を入れておくことが適切でなくなってきました。この時点で本会の名称を「日本母性保護産婦人科医会」から「日本産婦人科医会」に変更したかったのですが、会の名称と同時に会の目的・事業を変更することは、新しい社団法人を設立するに等しいという考えから、本会が名称の変更を見送ったわけです。現在、日母は医学関連の社会では、かなり名前が知られてきました。一方本会会員の中でも高齢の会員を中心に、日母という名称に愛着を持っている方が少なくないことも事実であります。しかしながら、未だに本会が産婦人科医師の団体であることを社会一般には理解されていないし、長くて、言い難いことも事実であります。会の名称は説明しなくても自然に理解できるものでなくてはならないと考えます。昨年の10月1日に行われた臨時代議員会・総会に再度名称の変更案を提出したのも、当時の代議員と会員の構成がかなり異なっており再確認する必要があったからであります。一部に反対の意見もありましたが、票決では全会一致となり、今回の定款変更願いを提出した次第であります。しかし、平成10年の定款変更以後、内閣総理大臣官房管理室が編集した「公益法人の設立・運営・監督の手引き」が変更されており、完全と思っていた本会の定款と趣旨はほとんど異なっていないものの、表現に若干、異なっている所があり、出来れば手引きとおなじ語句に直してほしいとの要望が母子保健課から出されました。
例えば、
(役員)第13条は現行では「会長1名、副会長3名、常務理事若干名、監事3名、理事の数は、40名以内(会長、副会長、常務理事を含む)」となっているのを「理事・35人以上40人以内、監事3人、理事のうち、1人を会長、3人以内を副会長、常務理事10人以上15人以内」とするもので、理事や常務理事の数を「〜以内〜以上」のように変更するものです。
また、
(監事の職務)第15条では「民法第59条の職務を行う」と漠然としていましたが、財産及び会計の状況、理事の業務施行の状況などを監査することと、具体的に記載されています。
(職員)第20条は、簡単な記載でしたが、変更案では、(事務局)として、事務局の業務や整備しておく書類などを細かく規定しています。定款に定められている会議は、総会、代議員会、理事会、常務理事会などですが、最終の議決機関は総会です。従って、総会の議長はその都度総会出席会員の中から選出されるべきで、この度の改定では、第31条に明記することになります。
また、
(会議の成立)第28条では、「総会を除き会議はその過半数の出席がなければ、これを開会することはできない。」とあり、総会だけが例外規定となっておりますが、総会が最終の議決機関とすると、当然、総会も過半数の出席が必要となります。しかし、全国の約半数の産婦人科医師が日母の総会のために、診療を休むことは不可能であり、医療上も問題となります。従って、委任状の提出により出席を認めることになります。この定款の変更案は3月に行われる代議員会・総会でご討議頂くことになり、承認頂ければ、この変更案を基に厚生労働省の認可を受けるべく交渉していくことになります。この変更案は現行のものよりかなり厳しくなりますが、これはたび重なる他の公益法人の不祥事によるものであり、日母も全く例外ではありません。会員の先生方のご理解を頂ければと考えています。