平成13年6月18日放送
 第31回全国支部社会保険担当者連絡会
 日母産婦人科医会幹事 秋山 敏夫

 本日は、5月27日に行われました、第31回全国支部社会保険担当者連絡会について、お話いたします。

 この連絡会は、毎年この時期に全国の社会保険審査委員が集まり、審査の上で問題となる点を協議する場です。今回は、京王プラザホテルにおいて、49名の社保担当者、10名の本部役員・社保委員会委員が集い活発な討論が行われました。

 まず青地理事による開会の辞で始まり、新家副会長の挨拶、新役員紹介の後、佐々木担当常務理事、宮本日母社会保険委員会委員長、西島日産婦社保学術委員会委員長、日医疑義解釈委員会佐藤アドバイザー、外保連松田アドバイザーの挨拶がありました。

(1) 中央情勢報告

 佐々木常務理事によれば、関係各方面から3つの重要な基本的方針が発表されました。これによると、第一は厚生労働省からの「医療制度改革の課題と視点」です。
 第二は日本医師会の「医療構造改革構想-国民が安心できる医療制度をつくるために」です。ところがこの中で「将来の医療給付の区分け(提案)」として、正常分娩が現物給付に組み込まれていましたが、産科医療の根幹に関わることであるため、日母の考え方を説明し理解を求めました。
 第三は政府・与党の社会保障改革協議会が公表した「社会保障改革大綱」です。医療費の「総額抑制」「総額管理」という考え方に対しては、具体的な制度化には多くの議論が必要とされると、述べられました。

(2) 平成14年4月診療報酬点数改定に向けての要望について

 前回から日本医師会は早期提出を指示、本題は前年度社保委員会で取りまとめ、本連絡会には報告という形をとりました。

1 産婦人科外来診療加算の新設
 
2 特定疾患療養指導料の適応疾患の拡大
前回同様、卵巣機能不全、卵巣機能欠落症、閉経期および女性更年期状態に、今回、子宮内膜症、不妊症を追加要望しました。
3 処置料の改定
 
4 産科手術点数の改定
帝王切開術、骨盤位娩出術、吸引・鉗子娩出術、子宮頚管縫縮術、流産手術
5 婦人科手術点数の改定と新設
改定;子宮悪性腫瘍手術、子宮附属器悪性腫瘍手術、バルトリン腺嚢胞摘出術・造袋術、子宮内膜掻爬術
新設;外陰・腟血腫除去術、傍大動脈周囲リンパ節郭清術、腹腔鏡下骨盤腹膜利用造腟術、子宮鏡下子宮内膜焼灼術、腹腔鏡下仙骨子宮神経切断術
6 検査点数の改定と適応拡大
細胞診検査の点数改定並びに迅速・特殊染色細胞診検査の適応拡大
赤血球不規則抗体検査を算定できる対象手術の拡大
「その他の心理検査」に「更年期指数」の追加
ヒューナー検査の点数改定
エストロジェンレセプターとプロジェステロンレプターの個別算定
7 生体検査判断料の適応拡大
 
8 NSTの外来使用
 
9 子宮卵管造影時の腔内注入手技料の点数改定
 
10 静脈麻酔時の経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定

 今回は日本医師会から10項目を厳守するよう指示され、以上の10項目を提出予定としました。なお新生児介補料の削除については今回は見送りとし、審査の場で対応することとしました。

(3) 社保小委員会で検討されていた
 「妊娠・出産・産褥の療養の給付と現金給付のあり方」について

 従来「産科における療養の給付」については会員必携No.21「医療保険必携」中に「診療費算定方針に関する事項」として掲載してきました、しかし、新規開業や大学、公的病院からのレセプトに、現金給付や産科診療に対する認識不足からくる、不適切な保険請求例が散見されるようになりました。
 例えば、安全出産に導くために予防の目的で行った、会陰切開および縫合や会陰裂創縫合術は分娩料に含まれ、保険診療の対象とはしないとの取決めがなされています。
 しかし、一部の医療機関からは経腟分娩の半数以上に保険請求する例があります。産婦人科医療の適正化および現金給付制度を堅持するために、必携の内容をもっと理解しやすいよう図を取り入れ、例を用いて記述することとし、現在作業中であります。本連絡会でも提示され、各委員の意見をお聞きしました。完成後会員に配付される予定であります。

(4) 超音波パルスドップラ法の適応について

 現在・超音波検査におけるパルスドップラ法は加算点数であるため、まず超音波断層法の適応がある疾患で、その上にパルスドップラの適応が必要でありました。パルスドップラの適応は、NSTが算定出来る疾患としていましたが、NSTの適応に子宮収縮抑制剤使用時が入ったため、適応が問題となってきました。そのため、新たに日産婦学会に超音波パルスドップラ法の臨床的意義と有用性について、学術的な検討を要望、日産婦学会は周産期委員会に依頼し、日産婦案が提示されました。今後、理事会等の協議を経て決定する予定となっております。決定しだい医報に掲載いたします。

(5) 平成12年度ブロック社保協議会の質疑について

1 マイリス腟坐剤の外来処方について
外来処方は認められません。
2 帝王切開を想定したダブルセットアップとしての術前検査について
単に検査のみで手術が無い場合、傾向的なら査定となります。
3 開腹手術後の硬膜外持続注入の日数について
当日を含め3日程度となります。
4 開腹手術時のヘパリン投与について
血栓症予防が適応となっており、認められます。なお、低分子ヘパリン適応が異なりますので各県の審査委員会で対応が異なります。各地の協議会等で質疑していただきたいと思っています。
5 自費から保険にかわった場合の「入院治療計画書」の必要性について
カルテ開示等の問題もあり、計画書作成は必要と考えています。
6 IUGRに対する酸素療法の可否
適応はありません。
7 悪性腫瘍手術後の排尿困難に対する治療法
術後3か月以内は間歇的導尿(150点)で算定して下さい。
8 子宮内膜細胞診実施時、感染予防としての抗生物質の算定
原則不可となります。必要な場合は詳記が必要です。
9 術後感染予防としての抗生物質2剤併用について
不可となります。今後感染症学会等より新たなガイドラインが示される予定となっています。
10 胎児奇形に対し、羊水・絨毛・臍帯血の染色体検査の可否
不可となります。
11 経口陣痛促進剤服薬時、分娩監視装置の算定の可否
算定は可となります。
12 腟壁下血腫に対する超音波断層法算定の可否
体表(350点)で算定してください。
13 LH半定量精密測定の自宅・自己判定について
医療機関で判定することが原則であり、その都度の再診料が算定されます。なお、持参尿で1日2回、1周期6回までの算定が可能です。
14 タキソール使用時呼吸心拍監視の算定について
現時点では不可となります。今後、日医疑義解釈委員会に要望を提出予定です。
15 タキソテール使用時のデキサメサゾンの併施について
タキソールではデキサメサゾン、ザンタックの投与が認められていますが、副作用軽減されたタキソテールでは認められません。
16 カンジダ外陰炎でのイトリゾール使用
難治性あるいは再発性の注記が必要となります。
17 妊婦健診と他の治療の重複時、継続管理加算の算定
妊婦健診料が算定される場合は不可。再診料のみ算定なら可となります。

(6) 支部提出議題

1 硫酸マグネゾールの切迫早産適応追加の時期
当初の予定では既に適応追加されていると考えられましたが、その後海外文献や国内での異常例の報告があり、適応追加にはまだ時間がかかることが佐藤 仁アドバイザーから報告されました。
2 外陰部尖圭コンジローム切除術の点数
いぼ焼灼法(3か所以下200点、4か所以上250点)、いぼ冷凍凝固法(3か所以下200点、4か所以上250点)等処置の場合、週1回の算定となります。手術は肛門尖圭コンジローム切除術に準ずる(1230点)で算定してください。

 以上、第31回全国支部社会保険担当者連絡会についてお話いたしました。