平成14年4月22日放送

 平成14年度日本産婦人科医会事業計画 

 日本産婦人科医会副会長 市川 尚


 3月24日に新名称、日本産婦人科医会として、新定款による初の通常総会に於いて、本年度の事業計画並びに収支予算が承認された。

 事業計画の中から主だったことについて抜粋してお話いたします。

 新定款に基づいて通常総会は6月と3月に2回開催することになります。6月に平成13年度の事業報告並びに収支決算(案)の審議を行うことになりました。
 また、昨年度より検討をはじめた日母大会はこれから日本産婦人科医会学術集会と名称を変えて行うことになりますが、開催地、主催県の決め方、その目指す方向、内容等については今年度は引き続いて、そのあり方について多角的に検討を続け、意見を集約して、平成16年からの大会に反映させていきたいと考えています。
 また、今後の組織強化のために入会勧誘促進用のパンフレットを作成しましたが、今後各大学医局に配布し会員の増強を計って行きたい。産婦人科を目指す新入医局員増加のための方策、女性医師の働き易くなる環境作りが産婦人科入局者の増加にも関係するのでその検討を含め勤務医部で検討することになります。
 昨年度から検討をはじめている日産婦学会とのワーキング・グループも、本年度も引き続き検討を行い、学会と医会とのそれぞれの役割分担、生涯研修事業の充実と推進、経費節約のための両会の連携、協力のあり方を検討し、出来ることから平成15年、事業計画、収支予算(案)に反映できるよう、取りまとめをする計画であります。

 学術研修部では毎年研修テーマを決め研修資料を作成していますが、平成14年のテーマは「分娩管理―より良いお産のために―」と「感染とパートナーシップ」を取り上げました。
 本邦における標準的分娩管理法を提示し、EBMに基づく分娩ケアーのあり方も提示していくことになろうと思われます。両テーマ共に研修委員会の委員の分担執筆として、又可能な限りのデジタル化を計ることにしています。また日産婦学会と医会の生涯研修担当者を含めた拡大ワーキング・グループの場を活用して、生涯研修のあり方に関する検討を行い、学会と医会の協調した研修体制の整備に努めることになります。

 医事紛争対策部では、本年2月から3ヶ月をかけて「インシデント・アクシデント・レポート」の調査の集計・分析を行い、マニュアル作成を考えています。4月の診療報酬改訂の中で示された本年10月より、病院・有床診療所の入院基本料における減算項目として、医療安全対策の整備が求められています。9月までには各施設でその体制作りのためにはマニュアルの作成整備が求められているので、それまでに(案)をお示ししたいと考えています。
 11月には「第12回全国支部医事紛争対策担当者連絡会」を開催する予定です。
 鑑定人推薦依頼については日産婦学会との連携を密にして、鑑定人候補リストの整備を行い、推薦依頼への円滑な対応を図ることにしています。

 医療対策部としては、平成14年度は診療報酬点数のマイナス改訂に伴い、医療収入減少が確実視されるなかでの産婦人科診療施設の医業経営に少しでも役立つ情報の発信に努めていく事になります。これ等を医会報の「医療と医業」の頁を活用して、会員に伝達していきます。
 産科看護部としては、産婦人科看護研修学院の今後のあり方を検討していくことになります。

 社会保険部としては、今回の厳しいマイナス改訂で産婦人科診療施設がどの様な影響があったのかを、モニター医療機関の協力を得て診療報酬動態調査を行い、その結果をもって関係諸機関に働きかけ、今後の診療報酬適正化のために努力をしたいと考えています。
 「診療報酬点数早見表」は速やかに作成し、会員に配布することになっています。

 広報部としては、「日産婦医会報」の発行を続け、会員に必須な魅力的な情報誌となるべく、全員宛にアンケート調査を行い、会員の医会報への関心度を知るとともに、これを分析し、医会報に反映する様努力することになっています。

 女性保健部母子保健では、「健やか親子21」事業の推進、出生前小児保健事業「プレネイタルビジット」の推進、新生児聴覚スクリーニング検査のモデル事業の現況調査、厚生労働省の委託事業である「小規模事業所の母性健康管理に関する相談事業」の推進を主な事業としています。
 先天異常に関しては、引き続き、先天奇形等調査、分析は行いますが、それ以外にも先天異常発生因子、予防に関するマニュアル作成に向けて検討を行うこと、又全国における妊婦風疹抗体価検査の実態調査を調査拡大して行うよう検討することにしています。
 また、一般財源化された先天代謝異常検査事業の実態把握を行うことにしています。
 がん対策では、子宮がん検診対象者の拡大のため、対象年令の引き下げ、妊婦への検診推進を計ることを新規事業としていますが、乳がん検診のマンモグラム読影に関する研修会は引き続き努力し、各支部で開催出来るよう支援すると共に、本部開催を含め検討して研修機会の提供に努力していきます。
 予防医学・介護では、性教育指導セミナーも、本年横浜で開催される25回を加え、その役割も十分果たしてきたことを考え、今後のあり方を検討していくことになります。
 思春期外来の設置が求められている今、そのための診療録ならびに診療マニュアルのモデルを作成します。
 医師と患者とのコミュニケーションのために小冊子の発行をしていますが、本年は会員の要望の多かった「尿失禁、萎縮性膣炎」のテーマで小冊子を発行する予定にしています。
 女性保健と介護について会員に行った昨年のアンケート調査に基づいて検討会を行い、今後の事業の方向性を探ることになります。
 また、日産婦医会は女性の生涯にわたる専門医集団としての任務である以上、社会に対しての還元として、女性保健の啓発、産婦人科医療への理解をすすめる事が必要であるので、市民公開講座(等)を積極的に行うべきであるが、どの様な方法が最も良いかを検討していくことになります。

 中央情報室ではホームページの充実を計り、最新の情報の提供に努力していますが、今後もリニューアルを含め努力していくことになります。又会員メーリングリストを通して、会員ニーズを把握し、関係部と協力して公開できる内容を検討していきます。
 サーバーのウィルス対策はもちろんですが、ウィルス対策関連情報を収集し会員に対する迷惑にならない様にウィルスチェックの保守点検をしていくことにしています。
 産婦人科医療における電子カルテについても検討し、問題点とその対応などについての提言をしていきたい。

 献金担当連絡室としては、献金活動への会員の理解を引き続き要請すると共に、それへの努力を財団法人日母おぎゃー献金基金と協力して行っていきます。
 先天異常に関する最新の医療技術、治療効果を紹介するパンフレットの作成も考えています。又障害児、障害者団体の情報の収集、妊娠、分娩、育児に対する不安や出生前診断、先天異常に関するカウンセリングの全国調査も行うことにしています。

 以上本年の事業計画のうち重要なものをピックアップして紹介してみました。