平成14年5月13日放送
 平成12年度人口動態統計結果
 日本産婦人科医会広報委員会委員長 石川 孝次
 

 本年度の当初、厚生労働省の統計情報部により、平成12年度の人口動態統計が発表されました。新聞でもこの内容は報道されましたので皆様のお目にも留まっているかと思います。この概況のサマリーはすでに日本産婦人科医会報の2月号にも載せてありますが、ここで改めてラジオ短波放送で述べさせていただきます。

 この調査は、全国の市町村保健所を介し都道府県経由にて厚生労働省に届けられた資料に基づくものです。

 それによりますと、我が国の出生数は、平成11年度は117万7,669人でしたが、平成12年度は119万547人と発表されました。前年度に比べプラス1万2,800人とやや増加しました。人口千人に対する出生率は1.36で、ともに前年度を上回っていますが、これも微細な上昇の範囲といってもよいでしょう。

 と言うのも、平成7年が1.42となったとして大変大きな話題になりました。ところが平成8年が1.43、平成9年が1.39と低下傾向に歯止めがかかっていないのが現状です。いままででは平成11年度の合計特殊出生率が1.34と過去最低で、世界の中でもこのような傾向を表しているのはドイツとイタリア、および我が国日本くらいです。

 ちょっとした話題になるかと思われますが、どのくらいの時間間隔で赤ちゃんが産まれているかというと、約27秒に一人の赤ちゃんが我が国では誕生していることになります。

 一方、死亡数は96万1,653人で、平成11年度の死亡数99万2,031人を下回っています。単純計算すれば、33秒に一人亡くなっていることになります。死亡原因の第1位は、以前からと同様、悪性新生物であり死亡原因の30.7%です。続いて心疾患、脳血管の疾患となっています。その他、不慮の事故が約4%、自殺が3%、老衰が2.2%などです。

 この統計の中に、感染症による死亡のデータが載っていました。多いのは敗血症によるものです。これは抵抗力の弱まっている高齢者の増加が背景にあるのかも知れませんが、6,216人と発表されました。人口10万人に対し4.9ということだそうです。次に、C型ウイルス肝炎も,756人となっています。本年度より厚生労働省はC型肝炎スクリーニングに力をいれるという方針のようで、これはこのデータから導き出されたものと考えられます。さらに結核も少なくなく、2,656人がこれで亡くなっています。人口10万人に対しては2.1という数字です。B型ウイルス肝炎による死亡はC型のそれの約4分の1です。HIVでの死亡は50人と出ています。

 いままで、出生数と死亡数のデータを見てきましたが、それを差し引き計算してみると、人口の自然増加数は22万8,894人であり、前年より人口は増加しているということになります。

 死産数について述べてみます。これは自然死産・人工死産を含めますが、平成12年度の死産数は3万8,393胎です。ちなみに平成10年度は3万8,988

胎、平成11年度は3万9,000胎です。

 産まれたあと亡くなった乳児死亡は、3,830人でした。本日資料にしている統計からではありませんが、ユニセフが発行した白書では我が国の1歳未満の乳児死亡率は世界の中では最も少ないほうです。世界の中では驚くべき高い率にある国々がたくさんあります。今回、このことについて深く触れませんが、ついでに言い添えておきます。

 さて、人生の第2の出発といわれる結婚はどうでしょうか。婚姻数は79万8,138件で前年より3万6,110件増加しています。40秒に1組が結婚していることになります。これは喜ばしいことです。

 ところが「逢は別れのはじめ」というか離婚数も増加しています。平成11年度は25万529件、平成12年度は26万4,246件。2分に1組が離婚しているということになり ます。実に結婚したペアの3分の1が離婚しているという現実はどういうことを意味しているのでしょうか。10年前、15年前といささか違う社会現象が我が国に起こっているように見受けられます。

 いままで述べてきたことは、日本人を調査対象としたものでしたが、日本における外国人の人口動態もありましたので、少し触れておきます。

 外国人女性が日本で産んだ出生数のうち、多いのはブラジルの方でした。その数は3,051人です。次いで韓国籍・朝鮮籍の方が2,998人、中国に籍のある女性が2,600人となっています。その他に、フィリピン、タイ、ペルー、アメリカなどとなっています。その合計は、1万2,214人と発表されました。今後、この数値がどう推移してゆくかは、世界の中で我が国がどう国際化してゆくかという意味で興味あるデータではないでしょうか。

 今日は、厚生労働省の統計情報部が発表したデータの解説でしたので、数値の羅列が多くなってしまいました。詳細な人口動態の報告書は本年3月か4月頃刊行されると聞いていますが、厚生労働省のホームページにも掲載されます。我が国ではこういったデータを基礎資料にして、国の政策を打ち出してゆくのだと思います。

 以上、お話してきたことと関連しますが、国立社会保障・人口問題研究所においては、「日本の将来推計人口」を最近発表しました。少し時間がありますので、それについてもお話させていただきます。

 我が国では、全国を網羅して国勢調査は5年毎に行われていますが、平成12年の国勢調査人口に基づき新しい人口推計が公表されました。前回のこのような調査は平成9年に行われています。

 今まで伸び続けてきた我が国の人口は4年後の2006年に1億2,774万人にてピークになるのだそうです。その後、出生数の減少が続くと予想されるため、2050年には1億59万人と減少します。それは少子化が一層進展するのが基因といわれて久しいのです。平成12年、西暦2000年の出生数が約119万人でしたが、2050年にはなんとそれが約35%にもなるという予想値を出しました。平均寿命の延長がまだまだ進むという予想も出されています。

 我が国におけるこのような急速な少子化、高齢化の一層の進展は、国の基盤の成立・存続にどのように影響するか危惧する声も多々聞かれますが、世界の中でも際立って特異な人口構成になるであろうと考えられます。

 本日は、厚生労働省発表の平成12年度人口動態統計の概況の内容などの概略をお話しました。今後も日本産婦人科医会報では、このような中央情報の記事も載せてゆく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。