平成14年10月14日放送
社保改定に伴う産婦人科診療報酬動態調査結果
日本産婦人科医会幹事 西井 修
本年4月の診療報酬改定は、皆保険制度始まって以来の技術料1.3%マイナス改定となり、薬価・医療材料の改定分マイナス1.4%を加えると2.7%の引き下げとなりました。医療機関への影響については、日本医師会をはじめ関連団体、各学会などが発表しており、統計操作の違いから影響率に差が見られますが、いずれもマイナスであり、とくに施設間格差、診療科間格差が大きいことを示しています。日本医師会の緊急レセプト調査では、診療報酬改定の影響は、診療所では入院外に大きく、病院は診療所に比べて軽いものの中小病院に大きい結果となっており、適切な診療報酬の再改定を断行すべきであると結論しています。
日本産婦人科医会におきましても、産婦人科に関連する項目での不合理な点を調査するため、診療報酬改定年の10月に行っている診療報酬動態調査を、このたび緊急に4月に繰り上げ実施しました。この診療報酬動態調査では、平成13年3月と平成14年4月の診療所における外来分と入院分のそれぞれの診療報酬点数請求書、病院の外来分と入院分のそれぞれの診療報酬点数請求書を、それぞれ平成13年3月の診療報酬点数とその件数を基に比較検討し、平成13年3月分の診療報酬点数に対する増減を比較しました。なお、対象とした医療機関は、診療所5施設、病院4施設です。
その結果についてお話いたします。まず、診療所の外来分に関しては、総合計は平成13年3月の件数は12,106件で、金額は6,149,490円。平成14年4月の件数は、8,270件で、金額は3,828,800円と件数、金額ともに減少していました。1件あたりの平均点数を比較しますと総合計で8.9%のマイナスとなっています。主な減少項目は、注射料では平成13年3月の260件348.220円から、平成14年4月の件数144件、金額は80.200円と件数、金額ともに大幅に減少し、58%と大きく落ち込んでいます。投薬料は6,484件1,155,270円から4,232件677,820円と減少し、10%の減少となっています。これは、薬剤量が減額されたことと低額の薬剤が主に使用された結果と考えられます。また、検査料は2,019件2,785,760円から1,323件1,686,980円へと、8%の減少となっています。一方、処置・手術料は2%の増加、その他の項目が23%と増加していますが、これは指導管理料徴収が増加したことが影響していると思われます。なお、診察料の増減はありませんでしたが、1ヶ月と短期間の調査ですので、これだけで再診の逓減制の影響を推察することは困難と思われます。
続いて、診療所の入院に関しては、外来と同様に検査料は、平成13年3月の件数407件で、金額は689,210円から、平成14年4月の件数325件で、金額は436,810円と件数、金額ともに減少し、21%の減少でした。注射料は、平成13年3月の件数1,001件で、金額は1,625,500円。平成14年4月の件数は、484件で、金額は705,460円と件数、金額ともに減少し、10%の減少でした。処置・手術料は4%の減少となっています。投薬料は1%の増加、診察料は4%の増加であり初診に引き続いての入院が多かったことによるものと思われます。入院料は2%の増加となっていますが、これは入院日数が多かったことによるものと入院基本料1の看護師3人以上での加算などが影響していると思われます。総合計でみてみますと平成13年3月の件数は3,236件で、金額は6,775,170円。平成14年4月の件数は、2,103件で、金額は4,685,820円で、1件あたりの平均点数は1%の増加となっております。
次に病院に関してですが、外来分の総合計は、平成13年3月の件数は4,054件で、金額は3,081,870円。平成14年4月の件数は、7,850件で、金額は5,741,110円で、件数、金額ともに増加していますが、1件あたりの平均点数は3.8%のマイナスとなっています。詳細を検討しますと、診察料は平成13年3月の件数は891件で、金額は595,650円。平成14年4月の件数は、1,891件で、金額は1,108,800円と件数、金額ともに増加していますが、1件あたりの平均点数は12.3%の減少、同様に投薬料も平成13年3月の件数は1,589件で、金額は270,660円。平成14年4月の件数は、2,833件で、金額は380,280円と件数、金額ともに増加していますが、1件あたりの平均点数は21.3%の減少となっています。これは主に再診の逓減制によるところが多いと思われます。検査料は4.5%の減少となっています。画像診断料は、平成13年3月の件数は25件で、金額は64,830円。平成14年4月の件数は、137件で、金額は249,530円と件数、金額ともに増加していますが、1件あたりの平均点数は29.8%と大きく減少しています。これはCT検査、あるいはMRI検査の減額が大きく響いているものと考えられます。注射量は、11.9%の増加となっていますが、これは高額の薬剤を使用したことによる影響と思われます。また処置・手術料も38.4%と増加していますが、これは手術点数の増額された手術件数が多かったことによるものと思われます。
最後に、病院の入院に関して、総合計は、平成13年3月の件数5,687件で、金額は23,261,200円。平成14年4月の件数は、3,849件で、金額は18,395,330円と件数、金額ともに減少していますが、たまたま点数が上がった手術が多かったため総合計で16.2%のプラスとなっています。しかしながら、個々の項目を見てみますと、診察料は平成13年3月の件数95件で、金額は1,276,650円。平成14年4月の件数は92件で、金額は1,222,790円と1.1%の減少、投薬料は平成13年3月の件数2,286件で、金額は291,840円。平成14年4月の件数は、1,439件で、金額は163,420円と11%の減少となり薬剤量の減額が大きく影響しています。検査料は1.7%の減少、画像診断料は、病院外来と同様にCT検査やMRI検査の減額が大きく響き、16.9%と大きく減少しています。注射量は、16%と増加していますが、これは高額の薬剤使用による影響と思われます。また入院料は1.8%の増加となっていますが、これは入院日数が多かったことによるものと考えられ、処置・手術料が9.3%と増加していることも、増額された手術件数が多かったことによるものと思われます。
以上、今年4月におこなった緊急診療報酬動態調査についてお話いたしました。今回の調査では、診療報酬改定に早急に対応できなかった医療機関も見られ、調査した医療機関も病院4施設、診療所5施設と少数でした。また1ヶ月分という短期間の調査のため正確な影響をとらえたとは云えない面がありますので、その点を含みおきお願いします。今後とも、診療報酬改定の影響について、再調査するなど、産婦人科診療における影響を検討していく予定です。