平成15年6月2日放送
 平成13年度人口動態統計調査結果より
 日本産婦人科医会広報委員会委員長 石川 孝次


 本日の放送は平成13年度の人口動態統計調査結果でありましたが、本年度の当初、厚生労働省の統計情報部より平成14年度の人口動態統計の年間推計が発表されました。こちらの方がごく新しい情報なのでこちらの資料を基にお話しさせていただきます。

 この調査資料は、全国市町村、保健所を介して都道府県経由で厚生労働省に届けられた数値に基づくものであり、我が国の国民についての人口動態統計を推計したものです。

 新聞でもこの内容は報道されましたので、皆様のお目に止まっているかと思います。この内容のサマリーは日本産婦人科医会医会報の2月号にも載せてありますが、ここで改めてラジオ短波放送で述べさせていただきます。我が国の出生数は、平成11年度は117万7669人、平成12年度は119万547人、また平成13年度は117万662万人でしたが、平成14年度は115万6000人と推定され、前年度より更に1万5000人の減少の見込みの数値が出ています。人口千に対する出生率は9.2となり前年度を下回ります。当然、合計特殊出生率も下降しているわけであり、世界の中でもこのような傾向を示しているのはドイツとイタリア、および我が国日本くらいです。ちょっとした話題になるかと思われますが、どのくらいの時間間隔で赤ちゃんが産まれているかといいますと、約21秒に一人の赤ちゃんが誕生という計算になります。

 一方、死亡数は97万8700人で昨年より増加するであろうと推定されておりますが、近年の枠内の数字と思われます。と言いますのは、平成11年度は約98万人の死亡数、平成12年度は約96万人の死亡数でしたから。人口千に対する死亡率は7.8です。単純計算をすれば32秒に一人亡くなっているということになります。なお、死亡原因の第一位は以前からと同様、悪性新生物で30万4000人。約30%になります。この悪性新生物での死亡数は、近年、他の死亡原因より群を抜いて増加しています。第2位は心疾患で15万1000人、約15%。さらに脳血管疾患で12万8000人、約12%と推定されています。この心疾患での死亡、脳血管疾患での死亡は平成5〜6年あたりから減少のグラフを示しています。

 これらの我が国における出生数と死亡率の今後の推移を人口ピラミッドの図式にしてみると、人口ピラミッドは25歳前後より人口減少が著名に進んでいることが表されます。平成37年での将来推計値を元にしますと、わらに高齢化が顕著になり若年者の増加が見られず、あたかもペルシャなどで見かける壺の形のようになります。

 さて、人生の第2の出発と言われる結婚はどうでありましょうか。婚姻件数は57万8000組で、平成13年度より4万5000組の減少と推定されています。人口千に対する婚姻率は6.0となり、平成13年度の6.3を下回ります。実は平成11年度が76万2000組で、平成12年度が79万8000組と3万6000組も増加していました。さらに平成13年度も79万9999組と微増したのに、平成14年度は3年前のレベル以下にガクッと落ちてしまいました。日本の社会状況、経済状況と関係あるのでしょうか。それでも40秒に一組が結婚していることとなります。彼ら、彼女らの前途を祝福したく思います。

 ところが逢は別れのはじめというのか・・・離婚件数も増加しています。離婚件数も率とも過去最高になりました。3年前の平成11年度の離婚データは25万525件で、平成12年度は26万4246件と、さらに平成13年度の28万5911件と増加の推移をしてきましたが、さらに14年度は29万2000件と昨年よりもなお6000件増加であろうとされています。人口千に対する離婚率は2.31となる計算です。13年度は2分に1件の離婚という数字が出ましたが、今度の推計発表では、1分48秒に1件になります。結婚して家庭生活を築くペアが離婚増加しているという現実はどういうことを意味しているのでしょうか。10年前、15年前といささか異なる社会現象が我が国に起こっているように見受けられます。

 次に死産数の統計も載っています。ここでいう死産とは、自然死産、人工死産を含めますが、平成14年度は3万7000胎とされています。過去の数値を追ってみますと、平成11年度は3万9000胎、平成12年度は3万7467胎でしたのでほぼ横ばいです。

 いままで、述べてきたことは我が国における日本人を対象に調査したものですが、人口動態の国際比較も表として出されており、少しそれに触れておきます。当初にも言いましたように世界の先進国の中で出生率が10を切っているのは、日本、ドイツ、イタリアの三カ国です。たとえば、アメリカは出生率が14.7と高く、また婚姻率も高いです。したがって合計特殊出生率も2.13と高値を示しています。フランスは出生率13.2で合計特殊出生率は1.89です。イギリスのデータを拾うと、出生率11.4で、日本と比べても2ポイント上です。もちろん、アメリカ、イギリス、フランスなどの合計特殊出生率が横ばいであるというのではありません。やはり、いささか減少していますが、我が国日本の場合はそれが極端に著明なのです。

 国立社会保障・人口問題研究所においては、「日本の将来推計人口」を発表しています。少し時間がありますので、それについても話します。

 我が国では国勢調査が全国を網羅して5年毎に行われております。これも今後の人口推移を見つめる基礎的データとなっています。今まで伸び続けてきた我が国の人口は3年後の2006年に1億2774万ににてピークになるのだそうです。その後にも出生数の減少が続くと予想されますので、2050年(すなわち46〜47年後)には1億59万人と減少します。それは少子化が一層進展するのが起因といわれています。平成14年度の出生数が115万6000人ですから、2050年には67万人の出生数となってしまうだろうと危惧されています。

 一方、人口の高齢化は一層進展します。2000年度における65歳以上の人口割合は17.4%でしたが、2050年にはなんとそれが約35%にもなるという予想値を出しました。平均寿命の延長がまだまだ進むという予想も出されています。

 我が国における、このような急速な少子化、高齢化の一層の進展は、国の基盤の成立・存続にどのように影響するか?危惧する声も多々聞かれますが、世界の中でも際立って特異な人口構成になるであろうと考えられます。

 本日は厚生労働省の統計情報部発表の「平成14年人口動態統計の年間推計」の資料より概況と、それに関係するその他の概略をお話しました。日本産婦人科医会報では今後もこのような中央情報の記事も載せていく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。