平成15年7月7日放送
 日産婦学会中央専門医試験について
 日産婦学会専門医制度委員会副委員長 川端 正清
 本日は平成15年度の「日本産科婦人科学会の中央専門医試験について」お話し致します。私は日本産科婦人科学会の中央専門医制度委員会の副委員長をしております川端と申します。
 皆様ご存じのように、日本産科婦人科学会専門医制度は昭和62年4月に認定医制度として発足し、昨年5月に専門医制度と改名しました。この制度は産婦人科領域における広い知識、洗練された技能と高い倫理性を備えた産婦人科医師を養成し、生涯に亘る研修を推進することにより、産婦人科医療の水準を高め、国民の福祉に貢献することを目的としております。専門医制度への改名は、各学会が足並みをそろえて専門医と呼称することで一致し、より専門性を表に出す事になったわけです。従いまして、認定医から専門医への制度並びに名称変更だけに止まらず、学会認定産婦人科専門医として標榜できることになりました。このことにより、患者さんからは医師の専門性・技量が分かりやすくなります。同時に、専門医には知識・技能・倫理性が求められ、さらに専門医としての能力を維持するための生涯研修など、相応の責任が課せられることになります。
 平成5年度から認定医審査に際しましては、研修記録や症例レポートなどの書類による一次審査と、面接・口頭試問による二次審査を施行して参りました。しかし、より客観性・透明性を確保するために、筆記試験の導入が決まりました。筆記試験導入に向けて、平成12年度から昨年14年度の3年間、認定二次審査の一部として筆記試験が試行的に行われました。この間、筆記試験の成績は合否判定には用いられませんでしたが、問題の難易度、適性度、合格率などが検討されました。そして、今年からは筆記試験が本格導入されることになりました。筆記試験を加えた主旨は、受験者をふるい落とすためではなく、あくまでも専門医のレベルアップを図り、またそのための研修システムを充実させ、産婦人科医療の水準を高めることによって最終的に国民の福祉に貢献することです。
 まず、専門医認定審査の認定一次審査についてですが、その申請資格は学会指定のこの卒後研修指導施設で卒後研修目標に沿って通算5年以上の臨床研修を終了したものとなっております。従いまして、平成10年度以前に卒後研修を開始した方に受験資格があるということになります。その申請書類の中で重要なものは、研修記録、と症例に関する3症例のレポートであります。提出されました書類に基づきまして、それぞれの地方部会の専門医制度委員会において一次審査がなされます。なお、昨年の平成14年度より新規に専門医認定審査を申請する方に対しては、パスワード登録をすることが義務づけられております。日本産科婦人科学会ホームページへアクセスして登録を済ませておいて下さい。この一次審査の合否は、本年の6月末日までに判明しております。合格者には二次審査の実施期日と場所についての連絡があります。
 二次審査の期日は平成15年7月26日の土曜日に先ず筆記試験が、そして翌日7月27日の日曜日に面接試験が行われます。試験会場は東京と大阪の2会場に分かれて行われます。全国を9ブロックに分けまして、北海道、東北、関東、と北陸の内の新潟県、に所属する方は東京会場で、一方東海と、富山・石川・福井の北陸、近畿、中国、四国、九州、の各ブロックに所属する方は大阪会場で受験して頂きます。
 まず筆記試験は120題程度のマークシート方式によるものです。一方、面接試験は試験官による口頭試問が面接試験用の共通問題を元になされます。その際、研修記録、症例レポートも面接試験用の資料となります。平成13年度からは、研修内容を記入した研修手帳の持参が義務づけられていますので、完成した研修手帳を忘れずにご持参して頂くことが必要であります。研修手帳が不完全な場合は書き直して後日郵送して頂きます。また、お忘れになった場合にも、日本産科婦人科学会の中央専門医制度委員会宛にお送りして頂くことが必要になります。
 審査結果の通知は、平成15年の9月末頃には各申請者宛に報告がなされます。
 まず、第一日目に行われます第二次審査の筆記試験の詳細についてです。まず受験者は東京会場の方は都市センタービルで、また大阪会場の方は千里ライフ・サイエンス・センターに、午後1時に集合して頂きます。そこで、試験についての説明があり、試験開始は14時丁度からとなっています。試験の時間は3時間、終了は17時です。先程述べましたように、マークシート方式で解答をして頂くわけでありますが、問題は腫瘍、生殖、周産期、および一般の4分野から、それぞれはぼ30題ずつ、合計120題程度の出題がなされる予定です。なお、一般の分野の問題には社会保険制度に関するものも含みます。出題範囲は学会が定めた卒後研修カリキュラムに基づいており、出題水準は産婦人科専門医としての知識と技能のminimum requirement を習得して頂いているか否かを評価することを目的としております。
 平成15年度は、試験の本格的導入の最初の年でありまして、一応60%前後を合格ラインに設定します。試験後に、各問題について適・不適や難易度について試験問題評価委員会で検討された後、最終的な合格ラインが決定されます。
 次に2日目の日曜日に行われます第二次審査の面接試験について述べます。この時点では、前日に行われた筆記試験の点数は試験官に通知されていません。
 面接試験も、東京会場と大阪会場の2会場に分かれてなされる訳ですが、面接は、一同に会して行うことは出来ませんので、三つの組に分けて集合して頂きます。すなわち、午前1組と、午後2組の3つのグループに分かれます。それぞれ集合時間は試験開始の1時間前で、午前の組は9時、午後の第1組は12時、午後の第2組は13時20分にそれぞれの説明会場に集合して頂きます。そこで、試験の概要について説明を受けます。面接試験の15分前には待機室に移動して頂きますが、そこで共通問題4題の提示があります。4題の内訳は周産期、生殖内分泌、腫瘍、一般の4題です。ここの待機室で共通問題をよく見て頂きます。
 その後、東京会場では12室に分かれて、一方大阪会場では10室に分かれて、順次それぞれの受験される部屋に入って頂きます。そこで、研修記録・症例レポートに基づく試問、さらには共通問題に基づく試問がなされます。
 面接・口頭試問の問題は、面接担当者が共通問題4題の中から1題を指定します。本年度は、初診時紹介患者を想定して、外来におけるインフォームド・コンセントが試されます。すなわち、面接官を患者または患者家族と見立て、受験者は医師の立場から説明を行うというものです。面接試験の目的は、産婦人科専門医として、態度・人間性・社会性から見た適格性を問うものですが、良いインフォームド・コンセントを行うために必要なminimum requirement の知識は問われることになります。ポイントは医学的に正確な情報を伝えたか、説明に対して同意を取る配慮があったかですが、具体的には医師らしい態度、患者に理解できる内容や言葉遣い、病態説明、治療法の選択と治療計画の説明、思いやりや相手に対する立場の尊重、などがチェックされます。
 これが、第1段階の口頭試問であす。第1段階で合格されれば、この専門医試験の受験はすべて終了しますので、ご帰宅頂くことになります。第1段階の試問では、「良い」、「普通」、「悪い」、の3段階で評価されます。「悪い」評価を受けた場合には、別室にて第2段階の面接・口頭試験を受けてもらうことになり、そこで、再評価を受けることになります。この面接試験において評価する対象となりますのは、一次面接と同様に、知識と技能と態度でありまして、その判定は3段階法で評価され、「悪い」と評価された段階で面接試験の合格保留となります。
 また、面接試験では、口頭試問と同時に、症例レポートの記載と研修手帳の記載についても「良い」、「普通」、「悪い」、の3段階で評価されます。「悪い」評価を受けた場合には、持ち帰って再度書き直して、1ヶ月以内に修正して中央委員会へ再提出して頂くことになります。
 専門医認定二次審査への筆記試験導入と申しますのは、客観的で、透明性の高い専門医制度を確立し、21世紀における産婦人科医療の向上を目指して行こう、ということが目的であります。筆記試験を導入した主旨は、受験者を篩い落とすためではなく、あくまで専門医のレベル・アップを計り、またそのための研修システムを充実させ、産婦人科医療の水準を高めることによって、最終的に国民の福祉に貢献することにあります。こういった趣旨をご理解下さいまして、筆記試験に臨んで頂きたいと思います。