平成15年9月1日放送
北陸ブロック紹介
日本産婦人科医会北陸ブロック会会長 新居 隆
みなさん、こんにちは。
富山県支部の新居でございます。本年度は富山県支部長が北陸ブロック長を受け持つ決まりになっており、そこへ、たまたま短波放送のブロック紹介番組で、今回、北陸ブロックがその順番に当たったという巡り合わせとなり、本日お話をさせていただくことになりました。
私は自分の支部についてはよく知ってはいますが、ほかの支部の内情についてはわかりませんので各支部の支部長に話題を提供していただきました。それをブロック内の各支部からの紹介としてお伝えすることにします。
まず、北陸ブロック全体をながめてみますと、北から新潟・富山・石川・福井の4県から構成されており、4県が連なって、全体として細長い地形が形成されています。ご承知の通り、どの支部も日本海に面していて、海の幸が豊富で、水が豊かな米の名産地でもあり、従って、酒どころとしても皆それぞれに自慢の銘柄をいくつも抱えています。
また冬の豪雪地域としても全国に有名であり、遠い田舎のイメージをお持ちの方も多いとは思いますが、現在では新潟市・富山市・金沢市・福井市の各中心都市は近代的地方部市として立派に発展してきています。新潟は上越新幹線により、もう完全に首都圏に入りました。隣の富山に行くより東京に出る方がはるかに早くて便利になっています。富山は東京までJRで3時間そこそこ、航空路も毎年のように拡充増便され、東京・大坂は日帰りの時代です。石川は小松空港という立派な空港を昔から持ち、旅の不便さはありません。北陸新幹線の工事もはじまりました。いずれ福井までこれが開通すれば大変便利になることでしょう。
各県それぞれの特色を持ちながらも農業・漁業に携わる県民が多く、一方で、産業都市・商業都市として発展してきています。従って、全国のほかの地方と同様に高齢化が進み出生数の低下が大変重要な課題となっています。さて、各支部共通の問題として有床診療所の減少があります。富山県支部でも、毎年3〜4名の開業会員が分娩取り扱いをやめています。また、産婦人科の標傍を取り下げる会員や廃業する会員も毎年1〜2名出ています。 一方で、新規開業は年に1名程度であきらかに分娩の大規模病院へのシフトが医療者側にも見て取れます。その様な影響もあって支部役員のほとんどは勤務医が占めており、従来の「日母イコール開業医の団体」という一種の誤った考え方が嘘のようです。 この傾向は北陸ブロック全体としてもあきらかで、若い会員が産婦人科医会の事業に参加し、関心を持つという点では好ましい傾向ではありますが、ここにきて開業会員の医業をどう支えていくかという重大な課題がますます深刻化してきています。 一方の勤務医はほとんどすべての総合病院で一人あたりの年間平均分娩数は150〜200、手術件数が100〜150、体外受精をも手がけており、一般患者数の増加も見られ、休む暇もなく診療に追い回されています。ところがそれだけでなく、研修指定病院としての準備作業・カルテを含む業務の電子化の準備作業・病院機能評価の受検など、本来の診療とは別に過重労働が日常化しているのも事実です。
このような事情から、勤務医が開業医の診療のサポートをするということは、現在、時間的、肉体的にきわめて困難な事態に到っていますが、さらに、どの支部でもほとんどすべての勤務医会員が公的医療機関に勤務しており、たとえ時間外であろうと、よその医療機関で仕事をするということに対して厳しい制限があり、現実にはひとりで分娩を見ている開業会員を人的にサポートすることは極めて困難な状態です。また、勤務医の労働条件についても真剣に考える時期が来ていることを実感します。
これは全国的な問題でありますが、北陸は北陸で知恵を出し合って問題解決に取り組むべきなのだと思います。
4支部ともに会員数はいまのところ、ほぼ安定、ないしは、わずかに減少というところですが、これは若手の勤務医会員が入会してくれることで維持されています。とくに富山・石川・福井は日産婦学会会員イコール産婦人科医会会員という理想的状況で、実質的にも学会との協力体制は良好です。
それでは各支部の話題を少しお話しします。
新潟県支部はもとから新潟大学出身者が多く極めて和気あいあいとした雰囲気でハタから見ていてうらやましい限りですが、地勢的には南北に長く、大きな県ですので学術研修や会議の開催には大変苦労しています。そのなかで、子宮がん健診には従来から熱心で、最近では乳がん検診にも積極的に取り組んでいます。高橋支部長自身が「がん」の専門家であるだけでなく、医会の「がん対策委員会」に児玉会員が長年参加し活躍しています。役員の顔ぶれにもそのあたりの雰囲気が明らかです。また、勤務医委員会には徳永会員がご活躍ですし、なによりも、前支部長の佐々木先生は、いま、本部の副会長をおつとめになり、医会にはなくてはならない重鎮です。このように新潟支部の医会への貢献度は並々ならぬものがあります。
富山県支部は小さな支部ですが、一昨年日母大会を富山市で開催し、みなさまからたいへんご好評をいただきよろこんでいます。つい先日も大会の記念品のチューリップが今年もまたきれいに咲いたと何人かの人からおたよりをいただきました。あの日母大会を契機にして富山県支部は若手の会員が活動に参加し、会員相互の信頼感と一体感が明らかに高まりました。また、この2年間で支部の会則を大幅改定し、より民主的で、全員が活動に参加し、意見を述べやすい会に変貌する第一歩を踏み出しました。経費削減に努めて、支部の会費を平成11年に値下げしましたが、更に努力して2回目の値下げをもくろんでいます。日産婦学会地方部会との連携もスムーズで、ことしは合同の公開講座を予定しています。また、学術研修会はできるかぎりパラメディカルの方々に公開して参加を呼びかけておりテーマによっては会員よりもパラメディカルの方々の出席の方が多いこともしばしばあります。今年の話題は性教育と性感染症と位置づけ、重点的な学術研修だけでなく関連する学校PTA関係や行政にも働きかけていく予定です。
石川県支部は金沢大学出身者を中心として伝統的にしっかりとした支部の活動を重ねてきています。大きな課題として有床診療所問題があります。開業会員の診療形態が大きく2つに分極する傾向にあり、多数の分娩を取り扱う会員と、分娩を取り扱うことをやめた会員にわかれ 月に10〜20の分娩を取り扱う小規模の有床診療所の会員がほとんどいなくなりました。学術研修会の企画や事業の遂行に支障を来しているとの悩みがあるようです。紺谷支部長ご自身が本部の「有床診療所検討小委員会」の委員として尽力されていますが、これはブロックのほかの3県、また全国的にも共通の重要で大変難しい課題ですが、石川県支部から明るいメッセージを発信していただければと陰ながらお願いしたい気持ちでいます。また一方、性教育に本腰を入れて取り組み始め、行政や特に教育委員会の壁の厚さに突き当たっているとのことでした。4年に一度は金沢でブロック協議会が開催されますが、文化のかおりの高い古都ならではの楽しみを味わうことができます。昨年は大河ドラマ「利家とまつ」でたいへんな観光ブームだったようです。
福井県支部は北陸ブロックの中では病診連携が最もすすんでいます。分娩についてもオープンシステムの利用がかなりあるとのことです。学会との連携も大変うまくいっています。福井支部ではこの数年若い会員の開業が相次ぎ、活気をみせていましたが、経営的に困難な状態に陥るケースが出始め、現実の厳しさが現在でてきています。これは今後の医会にとっても大変重要な課題だろうと思います。若い会員の開業への意欲を損なわず、これを支援するような対策事業が望まれるところです。昨年の「利家とまつ」でもドラマの舞台としてしばしば関心を集めましたが、今年は大河ドラマ「武蔵」でカタキ役の佐々木小次郎ゆかりの地として2年連続注目の的となっています。また、福井県支部には楽器のプロ、歌のプロが多く、これまでにも名演奏を何度か聴かせていただき敬服しています。
各支部の現在の話題を少しずつ紹介しましたが、北陸ブロックとしては、ことしブロック協議会会則の改正を行いましたので、ブロック協議会は毎年6月に開催し、その翌日が日産婦北陸連合地方部会というスケジュールになっています。4支部順繰りに1年交代に開催を担当しています。今年の協議会には佐々木副会長はじめ本部役員にもご出席いただき、熱のこもった協議を重ねることができました。このなかで、「協議会の雰囲気がおとなしすぎる」、「もっと緊張感のある討議をするべきだ」、「協議をもっと深めるために重点課題をあらかじめ決めて討議したらどうか」、との提案もあり次年度からは更に充実した会議に進化していくことと思います。
北陸ブロックは、全国でもかなり小さなブロックですが、それだけにまとまりもよく、今後の活動を充実させて、全国に建設的な提案をアピールできるようにがんばっていきたいと思っています。