平成16年2月2日放送
日産婦医会対外広報活動について
社団法人日本産婦人科医会幹事長 宮崎 亮一郎
本日は、医会の対外広報活動について、現状とこれからの抱負について述べていきたいと思います。
日本産婦人科医会には、これまで本会の活動状況を知らせる手段として、産婦人科医会報があります。この機関誌は、本会の発足以来存在するもので、第1号は昭和27年7月に「母性保護医報」のタイトルで発刊された4項からなるものでした。昭和49年からは16項に増大され、その名称も「日母医報」と改題され、平成7年からは「日母」の名称変更にともない「JAOG news/日母産婦人科医会報」通称「医報」と呼ばれています。現在の医報は20項からなり、会員へアンケート調査をしながら各項の構成がなされています。
本会の名称が時代の趨勢によって変化する度に名称は変更されましたが、医報の性格は普遍です。すなわち、本会の活動状況を主に会員へ伝達する手段です。
記載事項は、主な医会の事業・全国的な諸会議の報告、医会の考え方を掲載した「羅針盤」、産婦人科診療所の諸問題、医政・医療行政に関する解説・本会の考え方、本会の活動に貢献された方々の紹介、各大学の紹介、留学だより、医事紛争、学術欄、医療と医業、情報アラカルト、コーヒーブレイク、会員の広場、特集記事、学会メモ、新聞切抜帳、マメ知識、ラジオ短波放送、編集室雑記長、産婦人科雑誌紹介を基本骨格として、年1回、1月号には会長の「年頭所感」、「日母産婦人科大会特集号」、年2回程度の座談会も掲載されています。
本誌は会員を中心に発刊されていますが、第3種郵便という性格上、国会図書館等にも保管されていますので、検索をしたい方には一般の方でも見ることは可能です。
その他に、各部・委員会が発刊している「JAOG Information」、「日母研修ニュース」、「コメディカルだより」などは、会員や産科の医業に携わっている方々、医療従事者を中心とした研修のための資料として、また最新の情報、海外の現状を紹介・提供し、レベルアップを図ることを目的に発刊しています。
これまで紹介した手段は、主に会員、会員のところで働いている医療従事者達を対象として作成されたものといってよいでしょう。
また、メディアとしては、ラジオ日経と協力して、本会の現状、活動状況、医療の現状等に関して、医会役員、学識経験者達が話してくれる、今放送されている「短波放送」を通じて一般の方々や会員・医療従事者に向けて放送という媒体を利用して情報提供をしています。
さらに、本会には「医会ホームページ」が開設されています。これは平成10年頃から運営されてきたシステムです。当初は、その立上に苦慮しましたが、最近では安定して情報を提供できるようになりました。
ホームページはご存知のように、会員向けだけに情報をやり取りすることも可能ですが、本会の基本的スタンスとして、本会の活動状況を一般にも見て理解してもらうように作成したものです。これまでの情報発信が主に会員向けに行われていたのに対して、このシステムは会員だけでなく、一般社会へも本会がどのような活動をしているのか、という本会の情報システム部が中心となって開設当初から発信し続けています。
このホームページを見ていただければ、本会の定款をはじめ役員の名簿、最新の医療の状況、最近話題の事項、インフルエンザワクチンの接種、風疹等、会員ばかりでなく一般の方々にも見て理解していただける状況であることが分かります。さらに、本会が各支部から構成されており、支部単位の活動状況や支部のホームページへのリンクをすることもできるようになっています。
その詳細は、http://www.jaog.or.jp を検索していただければ、膨大な数の情報が提供されていることがわかります。
しかしながら、産婦人科の一般社会に対するイメージは、必ずしも良いものとはいえないのが現状です。
女性週刊誌を始め各種の一般雑誌やTVが、産婦人科の医療を正確に伝えてくれません。その理由は人が求める自分より不幸な状況を、見て聞いて関心を持ち、一寸優越感に浸れる、共感する、という人間本来が持っている心理状況をクスグリ、購読率、視聴率を確保する商業主義に走ってしまい、何ら変哲もない事実の羅列には興味がわかない、そのような情報は提供しないといった基本的スタンスがあります。
一方、我々医療従事者にとっては、科学的という分析方法に快感を覚え、事実の分析に心血を注ぎ、一般社会とは一線を隔すことに意義を求めてきたというのも事実でしょう。
両者の間には、大きな真理的隔たりがあるものと考えられる状況があります。
この立場の異なる状況での人間心理の狭間に立って、いかに正確な情報を、興味を持って見て、理解してもらえる方法や手段はないか、この命題に対して、平成15度から、総務部内に対外広報が新たに設けられ、本年度は対外広報の体勢の整備を図ることに主眼が置かれました。
この構成は、総務部を中心として、医報担当の常務理事、幹事を中心に行われています。その方法についてですが、情報の発信源として、医会報、ラジオ短波、医会ホームページ、を主に持合せている他、雑誌、新聞等についても検討しましたが、現状の費用効率、対一般を対象と考えた場合には、「医会ホームページ」の更なる活用、情報提供システムの確立に重点がおかれました。
ホームページ搭載までの経緯は、各種部会・委員会が協議・アンケート調査した結果、検討した項目等を、幹事会で協議し、必要がある場合には常務理事会へ判断を求める方式がとられることになりました。
特に必要と認められる項目、早急な対応を必要と判断したものに関しては、担当常務理事が直近の常務理事会で検討・協議し、掲載することになりました。その例が、風疹であり、インフルエンザの予防接種等の事項です。
徐々にその項目は増えていくことは明白ですが、ホームページは即時性も要求されます。その意味、各事項に対する掲載方法には時間と手間がかかることがあるのも事実です。
また、現在のホームページの掲載は、医会内で行っています。その意味で各企業がホームページ専用に企業のイメージアップを図っているのに対して、デザイン、掲載位置、掲載の階層の問題等、まだまだ未熟であり完成度の低い状態にあることは認めざるを得ません。さらに、各種委員会が苦労して作り上げた情報をいかに効率よく、デザインも綺麗に掲載するまでには、さらなる時間が必要と考えています。
産婦人科医会が考えている見解を掲載するのにも時間を必要とすることでしょう。その理由は、社会通念がこれほど目まぐるしく変化していく社会現象に対して、普遍性を求める見解を、読む者、見る者に誤解を与えずに掲載するには第3者の存在が必要でしょう。彼らの客観的判断も仰がなければなりません。興味を持ち、難しいこともいかに理解しやすくするためには、どのように行わなければならないのか。その手技を我々はまだ持合せていいないからです。
今後これらの問題を徐々に解決しながら、確実に進めていけるように努力していくつもりです。
この対外広報は、本年度開設されたばかりであり、種々の情報収集を行い、一般の方が見て興味を持、正しく理解してもらえるであろうものを検討、協議していくようにと考えています。