平成16年2月23日放送
  日本産婦人科医会ブロックだより-東海
  日本産婦人科医会東海ブロック会会長 井箟 重彦


 皆さん今晩は。日産婦医会岐阜県支部の井箟でございます。東海ブロックは愛知、三重、岐阜の3県で構成されておりますが、本年度は岐阜県支部長にブロック長があたっており、そこで本日私が「東海ブロックだより」をお話し申し上げることになりました。予め3県の広報担当の方に、それぞれの県の話題提供をお願いしておきましたので、それに基づいてお伝えすることに致します。

 昨年7月に東海ブロック協議会を岐阜市で開催しておりますが、その折に報告された会員数を見ますと、愛知県は589名、三重県は183名、岐阜県は208名でありまして、10年前と比べてもほぼ同じような数で推移しているようです。ただ内容的には各県とも会員の高齢化、現今の少子化の流れの中で、分娩取り扱い医療機関は減少しており、また病院から診療所への転換も見られるようであります。最近愛知県支部が行いました医業経営アンケートでも、経営収支の悪化、従業員の確保の問題が上位にあげられており、産婦人科医療の厳しさを示しております。

 東海ブロックでは、昭和53年愛知県が主担当となり第5回日母大会「産婦人科医療を見直そう」、昭和63年に岐阜県で第15回大会「産婦人科医療の明日をみつめて」、さらに平成10年三重県で第25回大会「美し国、伊勢の地で考えよう21世紀の母子保健」をそれぞれテーマとして掲げ、開催して参りました。これらの三つの大会を振り返ってみますと、少なくとも東海ブロックの会員が、伝えられる産婦人科斜陽化の声の中で、病診連携への模索、婦人のプライマリーケアへの取り組み、さらにはサブスペシャリティの開拓など、発想の転換により、明るい産婦人科医療の未来を求めて進んできた軌跡が、見られるような気がしております。御存知のように愛知県には四つの大学医学部があり、三重県、岐阜県にはそれぞれ一大学でありますが、各支部とこれらの教室の交流、連携はスムースで、勤務医の皆さんの医会への加入率も高く、喜んでいるところであります。そして会員の医学、医療のための学術研修会には、これら各教室の支援を得ながら、こういった目的にも適うよう、3県とも多彩なテーマを選んで、頻回に密度の濃い勉強が行われてきました。しかも三重県や岐阜県では地理的に不便な地域を抱えておりますので、それらの会員に対しても、例えばビデオによる研修等特別な研修会を開催するなど、配慮してきたところでございます。その他、愛知県では会員向の支部広報月刊誌である「医会ニュース」を昨年4月に改訂し、学術を中心に内容的にもより充実したものに一新されました。岐阜県でも医会情報誌「いちい」を発行してきておりますが、この名称は高山の名産である一位一刀彫りの櫟の木よりとったものであります。また一般の方々に向けての広報として、愛知県は平成14年10月よりホームページを開設しました。これは全国日産婦医会支部の中でも4番目と聞いています。三重県も平成15年1月より立ち上げ、会員は勿論でありますが、一般の方々にも医会の事業説明、医療機関の情報公開、産婦人科のQ&A等の情報提供を行ってきています。

 周産期医療に携わる産婦人科医師にとって、一般の医療機関と基幹病院を結ぶ、周産期医療情報ネットワーク作りは必須の問題でありますが、愛知県では平成10年、全国では7番目となりますが、名古屋第一赤十字病院の総合周産期母子医療センター発足に伴って、そのシステムがスタートとしております。三重県、岐阜県においても一昨年より県下の情報システムが稼動しており、安心して子どもを生める環境が整備されつつあります。なお岐阜県では平成18年に完成する県立岐阜病院に、総合周産期母子医療センターが併設されることとなりました。

 最近の3県の活動の一つとして、若年者に対する性教育への取り組みがあげられます。三重県では既に平成8年より県教育委員会の依頼を受け、これまで4年間に県下の公立高校に出張し、約70回の講演を行ってきました。本年はその経験を生かしてさらに効果的な教育方法、内容について検討を加えておられます。愛知県では昨年県教育委員会との話し合いで、県下の公立中学校、高校の生徒に対し、産婦人科医師の立場から性教育を行うべく、支部会員の中から何時でも講演依頼に応じることの出来るシステムを作り、活動を始められました。岐阜県では県教育委員会が関係します「健康相談活動支援体制整備事業」というものがあり、岐阜県医師会からの推薦で、私どもの会員がやはり産婦人科医の立場から性に関する講演を行っていますが、ただしこれは高校の教職員が対象となっています。
 これからは3県それぞれの活動についてそのいくつかを取り上げ申し上げてみましょう。
愛知県支部は始めに申した通り、3県の中で最も会員数が多く、これまで東海ブロックでは兄貴分、リーダーとしての役割を果たしてこられました。実際数多くの先端的事業を進めておられます。がん検診では平成14年より今話題の「マンモグラフィ併用乳がん検診・愛知県方式」を確立しています。子宮がん検診はすでに県下全域に施行されていますが、医会独自のモデル事業が、昭和56年より西春日井郡春日町で継続施行され成果を上げています。また医療安全対策では、昭和50年から名古屋市立大学麻酔科と契約し、愛知県支部緊急治療グループ制度を組織し、その成果には全国の注目が集まりました。医事紛争対策にはこれまで支部として、その発生予防から発生後の対応、支援まで積極的に取り組んでこられましたが、昨年より県医師会内に「医療に関する苦情センター」が開設され、これには医師、弁護士、知識人などを交えた中で、患者の苦情に公正に対応することにより、医事紛争の未然の解決に役立っているとのことです。母子保健関係では、昭和39年より県下各地で「よい子を産みよい子を育てる」をテーマに、年3・4回講演会を開催してきましたが、昨年で121回を数えるに至りました。

 三重県支部での最近の話題としてお話しておきたいのは、産婦人科医の介護事業に対する取り組みがあります。高齢社会を迎え、また先の分娩減少のあおりを受けて、産科病室の閉鎖が見られていますが、それを積極的に介護病室に転換しようとするものです。会員の中で既に8名が介護事業に携わっており、2名は病棟利用の通所サービスを、6名は大規模施設を運用されておられます。三重県支部としてはこれらの実状を調査し、本部の医会報に掲載されるとのことでありますので、この方面に進出しようと模索されている方には、貴重な資料になるものと思われます。また昨年10月に三重県では不妊相談センターを開設されましたが、県下の8医療機関が電話で、不妊の悩みの相談や、検査治療の情報提供を行う形のユニークなものとなっております。

 岐阜県支部の特徴を一言で言えば、県医師会との密接な関係が上げられるかと思います。現県医師会副会長の堀先生は私ども支部の副会長であり、常務理事にも一名が入り、また五名の会員が五地区の医師会長を引き受けています。従って県下の母子保健、学校保健、がん検診等の事業推進について、意思統一や連携がしやすく、大変ありがたく思っているところであります。医会と学会は車の両輪と申しますが、支部の学術に関しては岐阜大学教授の玉舎先生に担当して頂き、会員の生涯研修を進めて参りましたが、研究会、研修会等その内容は多方面にわたっていて、私どもの知識の向上に役立っています。年一回行われている女性のための公開講座も、玉舎教授のご熱意で当初から開催されてきましたが、学会・医会の共催により昨年8回を迎えることが出来ました。因みに昨年のテーマは「女性の日常生活と健康管理」でありました。産婦人科看護研修学院は社会情勢の変化により全国的に入学者が減少し、その発生の地である愛知県も苦戦が伝えられ、三重県でも休止しているとのことでありますが、岐阜県では県医師会立という有利さもあって、毎年20名を越える入学者があり頑張っています。不妊相談センターは岐阜県でも昨年発足しましたが、今日まで相談件数も予想以上に多く、実績は確実に上がってきております。最近では地域に出張し、不妊に悩む方々との交流会を開催し好評を得ております。新年度の目標の一つとして、県や耳鼻科医会、小児科医会との話し合いのもと、県下での新生児聴覚検査システムをスタートさせることを計画しているところであります。

 いろいろ申し上げましたが断片的で御聞き苦しかったことをお詫びいたします。最後になりますが、東海地区はとかく関東と関西の通過点と見られがちでありますが、逆に東海ブロックは日本の中心、臍として、全国にこれからも情報発信をして参ることを念願しております。有難うございました。