平成16年3月22日放送
 
平成15年度社保の動き
 日本産婦人科医会幹事 秋山 敏夫


 社会保険部は本年度新たに委員の交代があった。日産婦学会と共に組織の見直しを行い、社会保険関係の実務を本会が、学術面での検討と診療報酬点数改定の要望等を学会社会保険学術委員会が受け持ち、委員の多くが兼務する形となった。

1.平成15年度社保部の事業報告

 本年度、社保部の行った事業は、以下の通りである。

  1. 産婦人科診療報酬の適正化へ向けての検討及び、DRG/PPSへの対応
  2. 診療報酬点数改定に向けての要望事項作成
  3. 診療動態調査
  4. 疑義解釈についての解説と会員への伝達
  5. ブロック及び支部への連携および会員への研修・伝達の徹底
  6. 日産婦医会報による伝達の徹底
  7. 関連諸方面との連絡折衝
  8. 社会保険委員会の存置と社会保険小委員会の開催

2.診療報酬点数改定に関する産婦人科の要望

 平成16年4月に予定される診療報酬点数改定に向けて、全国支部社会保険担当者、社保委員より広く要望事項を募り、産婦人科の適正化を図るべく、要望事項を整理し、関係諸団体とも連携をとりながら、当局へ実現に向けて働きかけた。

  1. 外来補助管理料の新設
    産婦人科の診察に際しては、必ず看護師などの立会いを必要とする。チーム医療のためにも看護師などの診療補助行為を評価する本管理料の新設を要望する。
  2. 特定疾患療養指導料の適応疾患の拡大
    卵巣機能不全、閉経期および女性更年期状態婦人科疾患のうち、上記疾患に対する治療には医師の計画的な療養上の指導が重要である。さらに、外来におけるコ・メディカル(カウンセラー、看護師、栄養士等)による一貫した治療計画も必要になる。ここに、保険診療に際して適応疾患の拡大を要望する。
  3. 処置料の改定
    腟洗浄、創傷処置、術後創傷処置等、52点以下の処置料の改定を要望する。処置点数が外来管理加算(52点)より低いのは不合理であり、訂正すべきである。現行では、技術、労力を費やして処置を行った場合よりも、再診のみで外来管理加算を算定した場合の方が高点数となる。
  4. 産科手術点数の改定
    流産手術流産手術は、人員(医師1人、麻酔科医師1人または看護師2人)、手術時間(10〜20分で終了)、麻酔方法(一般的に静脈麻酔)のため簡単な手術と思われがちである。しかし、流産手術は盲目的(非直視下)の手術であり、副損傷も時に発生する難しい手術である。また、次回の妊娠を確実に出来るよう手術を完璧に遂行するには多大な経験が必要である。これに対し、手術点数は手術時間、人員等から算出されるため、この特有な事項が加味されていない。これを考慮し、手術点数の改定を要望する。
  5. 婦人科手術点数の新設
    外陰・腟血腫除去術外傷性あるいは分娩後の外陰・腟血腫は臨床の場で度々認められ、迅速な血腫除去が要求される。しかし、これらの手術を施行しても保険請求する項目がないのは不合理である。
  6. 赤血球不規則抗体検査を算定できる対象手術の拡大
    標記の検査は産婦人科領域で現行帝王切開手術のみにおいて算定が認められている。他の外科領域では腹部手術などに広く認められていることから、(1)産婦人科領域の悪性腫瘍手術、(2)子宮筋腫手術 においても算定できるよう要望する。
  7. 生体検査判断料の適応拡大
    医師の技術料としての生体検査判断料を
    (1)分娩監視装置、(2)超音波検査 において認められることを要望する。生体検査判断料は呼吸機能検査、脈波図、心機図ポリグラフ検査、脳波検査、神経・筋検査、ラジオアイソトープ検査で、また、画像診断ではエックス線診断料がそれぞれ認められている。分娩監視装置、超音波検  査は、上述の生体検査や画像診断と同等またはそれ以上の臨床経験と専門知識を要求されるものであり、判断料の加算が妥当と考える。
  8. NSTの外来使用
    NSTの適応がある疾患の場合、現行では入院中の検査として認められている。しかし、外来において適応疾患の状態把握のために施行し、入院の要否が決められることが実際の臨床の場では多い。適応疾患の入院の要否を適切に判断するためにも、外来においての使用を要望する。  
  9. 子宮卵管造影時の腔内注入手技料の点数改定
  10. 静脈麻酔時の経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定
    標記検査の算定は現行脊椎麻酔および硬膜外麻酔施行時に認められている。静脈麻酔は前述の麻酔方法に比し呼吸管理が重要とされ、この管理をより客観的に評価するため術中検査に導入しているのが現状であるが、保険請求が認められていない。今後カルテやレセプト開示のためにも、通則の改定を要望する。

3.日本産科婦人科学会と共同で行っている項目

  1. プレマリン錠の安定供給に関する要望
  2. 供給停止予定品目の検討および回答

4.社保委員会での質疑事項

  • 腹腔鏡手術時、開腹手術時における洗浄液の種類と量
    生理食塩水3000mlを目安とする。ソリタ、ハルトマン等の細胞外液補充液は不可。
  • 腹腔内ガーゼ遺残に対する開腹手術の算定
    他院で数年前に行った術後の遺残の場合は試験開腹術で算定
    自院で数年前に行った術後の遺残の場合(術前には診断できていなかった場合)は試験開腹術で算定
    自院で術後3日後に試験開腹術を施行した場合。算定不可(単にミスで遺残、患者と話し合いの後、自費で算定)
  • 卵巣部分切除術における左右各々(×2)の算定
    両側卵巣腫瘍で両側の部分切除術を行った場合、通則14では「特に規定する場合を除き、片側の器官の手術料に係わる点数とする」、通則15では「同一手術野または同一病巣につき、2以上の手術を同時に行った場合は、主たる手術の所定点数のみにより算定する」とされているが、この場合は通則14(×2)で算定する。尚、子宮附属器腫瘍摘出術は両側と記されていて、両側の附属器を摘出しても×2では算定できない。
  • 子宮筋腫の病名による腹腔鏡下子宮筋腫核出術と子宮鏡下子宮筋腫核出術の併施
    同一臓器、同一病巣に対する手術であるため、一方の手術のみ
  • 同一日(診療実日数1日)における、GnRHa製剤の注射と点鼻薬処方
    原則不可。合理的な理由(海外旅行等)が詳記されれば可もありうる。
  • 子宮外妊娠術後の子宮内膜掻爬術の算定
    術後とはっきりしている場合は不可
  • 尖圭コンジロームに対する5FU軟膏やブレオマイシン軟膏の可否
    (研修ノートに治療法の一部として記載)
    研修ノート「感染とパートナーシップ」(平成14年10月)に保険適応がないことが明記されている。平成10年以降の研修ノートでは但し書きで、検査・薬剤の保険適応については使用時に再確認をお願いしている。
  • 流産手術の妊娠11週1日は「妊娠11週を超え妊娠21週まで」で扱ってよいか「妊娠11週を超え妊娠21週まで」とは、妊娠12週0日から妊娠21週6日までを指す。

5.ブロック社保協議会での質疑事項

  • 外陰炎で細菌培養同定検査と薬剤感受性検査の可否
    経口等の抗生物質使用の場合は可
  • 急性膀胱炎と淋菌性頸管炎の場合の尿沈渣、細菌培養同定検査、淋菌核酸同定精密検査の併施
    検体が尿と腟分泌物となっていれば可
  • ケタラールバイアルの残量廃棄
    認められない。使用した分のみ請求
  • PCOを卵巣腫瘍に準じて算定の可否
    否、卵巣機能不全の範疇であり、定期的な検査としての超音波検査は認められない
  • 子宮頸癌療養中での骨盤CT検査の可否
    可、半年〜1年に1回程度
  • 子宮筋腫核出術等でピトレシン使用の可否
    産婦人科領域では適応なし