平成16年4月26日放送
平成16年度目産婦医会事業計画について
日本産婦人科医会副会長 清川 尚
産婦人科医会の先生方、今晩は、医会の副会長の清川です。本日は今年度の事業計画を
第57回通常総会でご承認頂きましたので、ご報告と計画につき、ご説明申し上げます。3月28日の通常総会、さらには4月10日の日本産科婦人科学会代議員会総会と、年度末、年度開始は学会・医会共通の諸問題が討議されました。一つは医療事故、医事紛争の問題、さらには「受精卵着床前診断」に関する会員の処遇です。また若手産婦人科医師の増加をいかにするか、産婦人科後継者問題、オープンシステム、新聞マスコミに振り回された「良い産院の10ケ条」に関する対応、さらには乳癌検診のあり方、子宮癌検診の見直し、女性医師、女性専門外来、10代の妊娠・出産、性感染症、性教育などなど、どんどん取り組まなければならないことが、次から次へと沸き上がってきました。
皆様方の責重な会費をもって成り立っています社団法人日本産婦人科医会は会員の皆様方の代表であります代議員からなる通常総会でご指名を受け産婦人科医会の役員として私どもは日本産婦人科医会の事業を遂行しています。いまここに掲げました諸問題への取り組みが本年度の主要事項と認識しています。さらには4月より診療報酬点数が改正され、先生方のお手元には診療報酬点数早見表がすでにお届きかと存じます。主な点数を申し上げますと、初診料では、病院は5点アップの255点、診療所は4点アップの274点、外来診療料の見直しがあり、包括範囲の拡大で68点が72点になりましたが、尿検査や糞便検査、血液形態機能検査などの一般的な検査については包括範囲を拡大し、点数設定をしてありますので、折角行った検査でも包括の範囲になって点数を算定できない場合がありますので、点数表の解釈を熟読するか、地域の講習会などをご利用なさるかにしてください。「手術の施設基準」が症例数と専門医がいるという事で5%の加算が認められることになりました。またハイケアユニット入院医学管理料、亜急性期(即ち回復期)入院医療管理料が一日につき2050点の新設がなされました。肺血栓塞栓症予防管理料が入院中1回で305点点数化されました。予防に点数が設定されたのは画期的な事です。また有床診療所入院基本料1群の1の加算(40点)が新設されました。また褥瘡患者管理加算の新設、臨床研修病院では臨床研修病院入院診療加算が点数化されました。赤血球不規則抗体検査は従来産婦人科領域で帝王切開手術のみに算定が認められていましたが、婦人科悪性腫瘍手術、筋腫、子宮全摘、子宮外妊娠手術、などの出血が多く予想される手術においても算定できるようになりました。不規則抗体検査は手術当日の算定ですので、手術日の記載が必要となります。その他詳しいご通知等はいずれ医会報や、社保担当者連絡会議等を通して、ご連絡申し上げます。
社団法人日本産婦人科医会には13の担当部と献金担当室があり、それぞれ責任者を置いています。総務部は庶務と対外広報・渉外があり、庶務は各部の総括と学会・医会のワーキンググループ、各種関係語団体との連絡、今年度は学会・医会の合同名簿の発行を予定しています。また、次世代育成支援対策推進法の我々産婦人科団体としての役割につき、推進法の趣旨に沿った行動をとる予定にしています。対外広報は大切な仕事で、新しい日本医師会役員との連絡協議、厚生労働省、国会議員等との関連強化、マスコミ対策、マスコミを敵対視するのではなく、我々産婦人科の存在をアピールし、女性一生の健康支援をしている団体だと云うことをアピールし、広く取り上げてくれるような施策を展開していきたいと思います。今年の研修ノートは「婦人科における二次感染とリスクマネージメント」と「不正性器出血」を発行し会員の生涯研修の機会の充実を図ります。医療安全・紛争対策部では「医療事故・過誤防止事業」の推進で、医療過誤をくり返すいわゆるリピーター医師対策として4月より医療事故の報告を会員に義務づけていただき、各都道府県支部で事故情報を集め、医療過誤や重大な事故を起こした医師には指導・勧告や研修などを行います。また支部研修会への支援対策・調査や、学会と連絡をとりつつ、鑑定人推薦依頼にも対応します。勤務医部では勤務医の待遇に関する検討、女性医師の有する諸問題、産婦人科専攻医師増加のための検討を行います。社会保険部では、既に点数早見表をお届けしましたが、さらに診療報酬点数改定に伴う「医療保険必携」を発行しお手元にお届する予定です。広報部は医会報を毎月発行し、最新の産婦人科医療情報をお届け致します。女性保健部は今年も性教育指導セミナー全国大会を秋田県で開催します。産婦人科医会報4月号にご案内と申し込み用紙が綴込みで入れてありますので、大勢の会員の皆様のご参加をお待ち申しております。母子保健部では分娩の安全性を求めて調査研究を行い、小規模事業所の母性健康管理に関する相談事業を引き続き産婦人科医会支部の継続事業として国から補助金を受けていますので、昨年と同様にご配分申し上げます。先天異常部では国際クリアリングハウスモニタリング事業に協力し、胎児異常診断の調査を継続して行います。がん対策部は乳癌検診のマンモグラフィ導入、子宮がん検診の検診年齢の引き下げ、検診の精度管理の向上、情報システム部ではようやく昨年度で全部の支部に電子メールが交信可能となりましたので、ネットワークを十分活用し、連絡事項の迅速化、経費削減、これからの電子会議に向けて方向性を探ります。献金担当室では「おぎゃー献金」運動をさらに進め、少子化の中ではありますが、さらなるおぎゃー献金運動を進めていきます。
以上要約を申し上げましたが、医会報4月号やこれから毎月発行されます医会報、ラジオNIKKEIの放送を参考にして頂き、さらなる社団法人日本産婦人科医会への叱咤激励、ご指導、ご注文、苦言等を頂ければ幸いです。いま医療界、とりわけ産婦人科医療は少子化と医事紛争、高齢婦人の増加などで世間の注目を良い意味でも悪い意味でも一番集めています。毎年医師国家試験合格者は8000名になりますが、産科婦人科学会会員になり、研修を積んで5年目に受けます産婦人科専門医試験の受験者は昨年は323名で合格者は296名でした。この5年間は毎年300名前後です。専門医300名がすべて周産期医療を目ざすのではなく、オンコロジー、エンドワリノロジーを将来目ざす医師もおりますので、お産の専門医、新生児、胎児、母子、母体の専門医はわずか100名位でしょうか。働き盛り、最盛期、もっとも油の乗っている時期は15年位、15年ですと全体で1500〜2000名位の周産期専門医、産科を看板とする医師だけでは、いくら出生数が減少したとは云え、流産早産を含めますと約180万件、その中には多胎妊娠やハイリスク妊娠が今後も増えていく様相ですので、もはや安全で改易名出産を求める国民の声に対応することができるのか、一産婦人科だけでなく、医療界、医学会、国も真剣な対応解決策が望まれます。