平成16年5月10日放送
 日本産婦人科医会ブロックだより-近畿
 日本産婦人科医会近畿ブロック会会長 西野 英男


 日本産婦人科医会近畿ブロック活動状況についてお話します。

 近畿6府県の会員数は2400人余りであり、その内訳は大阪1100人、兵庫県が600人、京都府350人と奈良・和歌山・滋賀県がそれぞれ150人前後のメンバーで構成されています。
 従って、当近畿ブロックは日本産婦人科医会の中でも関東ブロックにつぐ、大世帯であり、それなりの自覚をもって行動しています。
 ご存知のように近年厳しい社会状勢の中、産婦人科が活力のある診療科となるためには如何にあるべきか会員一同考え、力を合わせて事に臨む努力をしています。

 さて、医会内の組織に従い近畿ブロック内では各府県毎に業務を分担し、地区のメンバーがそれを支える態勢で臨んでいます。このsystemは同時に近畿産婦人科学会の一部門として位置付けされています。

  1. 社会保険部会
     ご存知の如く、社会保険は診療の根底をなすものであり、世の中の経済情勢とも連動し、本年も4月に診療報酬の改正がありました。この委員会の構成メンバーは主に各府県の保険審査委員が中心であり、会員よりの毎月のレセプトを点検し、疑問視される請求について各角度より検討します。また、日本産婦人科医会が2・3ヶ月毎に全国より寄せられる問題点を取り上げ、見解を表明すると共に各ブロックにも伝達されます。特に最近では治療内容も多岐に亘り、種々の問題が発生します。それ故、近畿の部会としても意見を統一して対応しますが、大変な仕事です。
     
  2. がん対策部会
     最近マスコミにもとりあげられ、多くの方々がご存知とは思いますが、厚労省が「がん検診に関する検討会」により、乳癌検診が精度の高いマンモグラフィーを導入することになりました。
     確かに有効性も認められ、今後の主流となるでしょうが、その設備に要する費用をそれが全国に津々浦々に普及するには如何程の日時か、更にマンモで撮影された乳腺炎を読影する人材養成が今やっと“緒”についたばかり、日本産婦人科医会も乳腺関連の学会の協力のもとにその育成に努力されています。近畿ブロックにおいても研修会、講演会等、機会をみては各先生方の読影力の向上に“力”をそそいでいます。
     マンモグラフィーによる検診は比較的短時間内に多くの方々の撮影ができ、集団健診としては非常に有効と思いますが、開業医で行なわれる個別検診も視触診にエコーを併用することにより、時間のかかる点は難とはいえ、それなりの効果がみられます。いずれにせよ増加傾向にある乳癌患者の死亡の減少に努力しています。
     
  3. 母子保健部会
     新生児死亡の減少というテーマを掲げて大阪では新生児救急医療システムが発足し、続いて産科救急システムが府下主要病院の連携のもとに発足して早や20年、当時は全国でも初めてのシステムとして注目をあび、
     近畿各地より母体及び新生児の搬送も受け入れ、近畿は一つとの考えのもと、補い合い助け合って今日に至っています。
     一方、国がすすめる総合周産期母子医療センターの設立も、兵庫県、京都府がスタートし、随分と母子救急の対応が改善されましたが、理想には尚道遠く、府県相寄り次善の策を検討し、今日至っています。
     一方、母体の死亡率は救急搬送システムが完成しても出血や羊水塞栓等による不幸な転帰が稀にあり、学会、医会もテキストを各会員に送付し一層の注意を喚起しています。
     更に3年前より厚労省のモデル事業として
    (1) 新生児聴覚スクリーニング検査が実施されました。出生新生児で難聴児の発生頻度は1/1000人といわれており、今までは生後1〜2年で保護者により気付かれていましたが、新しい機器の導入により出生直後より発見が可能であり、その予後にも非常に有効であることがわかりました。近畿ブロックでも各府県がスタートし、特に大阪では耳鼻科学会養育医療機関の協力のもと、府下分娩施設の大半が機器を備え新生児をテストし、その実があがっています。
    (2) 出生前小児保健指導事業 プレイネイタルビジット
    少子化対策の一助としてのこの事業がスタートしました。古くは家族構成も多く、育児への相談相手も身近にあり、ゆとりのある育て方が可能でしたが、現在のような核家族では育児中に生じた種々の不安を解消するために身近な小児科の先生に相談してはという方針で、この制度が作られ、各地の市町村単位で実施されています。
    (3) 小規模事業所、母性健康管理電話相談事業も実施されています。
    従業員50名以下の事業所は産業医もなく、それらの方々の健康相談の窓口として、府県の産婦人科医会が対応しています。大いに利用して頂ければと思います。
     
  4. 医療対策・医業経営部会
     最近、マスコミ等で報ぜられている如く、医療過誤による紛争が毎日の如く紙面の一部を占め、我々医師も身の引き締まる思いをしています。
     特に産婦人科は分娩という経過を境に母と児の無事を求められますが、スジ書きのないドラマの如く、突如として発生する異常事態の結果、児に障害が残ったり、母体への影響も少なからず発生することがあります。
     医師はその都度、最善の努力をしているとはいえ、秒単位、分単位の変化に1人医師では対応出来ず、救急システムに依頼し、殆ど事なきを得ています。しかし、事例によっては反省すべきものもあり、今後更なる安全のための努力をしたく思います。
     
  5. 研修部会   
     医師の生涯研修は今更申すまでもございません。近畿産科婦人科学会でも研修委員がその方針に基づき、テーマを決めて研修会を開催し、又府県単位でも年に数回行なっております。テーマは日本産婦人科医会が毎年決めるものを用いうる共に是非会員に周知徹底したいものを取り上げています。特に最近では医療過誤に至るまでの問題点や注意事項、性教育関係などがあります。
     
  6. その他
     さて平成17年度の日本産婦人科医会学術集会を近畿ブロックが担当することになりました。
     本学術集会は古くより、日母大会という名のもとに、各ブロックが持ち回りで、今年で全国を3回まわったことになります。2年前より名称も学術集会となり、大会のあり方も検討することになりました。今回その第1回目ということで、近畿ブロックが担当しますが、今までのようにブロック内の府県が中心になるのではなく、6府県が平等に力を出し合い、協力し責任をもって運営しようという事になりました。
     当然、今までの良きところは残しつつも、若い方々の関心をひく内容をおり込み、学術集会という名を辱しめないように計画しています。
     開催地は全国の方々のアクセスを考え大津市に決まりました。
     幸いにして、当日は10月9日、10日は大津祭の当日でございます。会場の周辺は各町内会の山車が揃う地域であります。この祭りは祇園祭の原形といわれていますので、暇をみてお楽しみ頂ければ幸いです。