平成16年11月29日放送
 女性専門外来アンケート調査
 日本産婦人科医会幹事 安達 知子


 今、「女性専用外来」等の名称で女性のための特殊外来が続々と設けられており、女性からの需要はますます増加しているとの情報もあります。しかし、その実態や内容についての詳細は不明で、やや混乱しているのも事実です。そこで、産婦人科医会は女性保健部を中心として、「女性専用外来」に関するアンケート調査を、本年、2004年8月に行い、「女性専用外来」をどのように考えて、どのように運営されているか等について実態調査を行いました。

 今回のアンケート調査にあたり、はじめに、医会の各支部長にそれぞれの地域で女性専用外来を行っていると考えられる施設を推薦していただき、その施設へアンケート調査を依頼しました。なお、各施設には、女性外来の定義については、通常の産婦人科外来は勿論、産婦人科に設けられている更年期外来およびそれに相当する外来、あるいは思春期外来等の特殊外来は今回の「女性専用外来」には該当しないことをあらかじめ申し添えました。

 その結果、全国166施設に調査用紙を送り、回収は102施設、61.4%でしたが、この内、女性専用外来を設置しているところは、91施設で回答者の65.7%を占め、その内訳は、国公立病院が57.1%、私立病院15.4%、大学病院14.3%、診療所11.0%の順でした。

  1. 女性専用外来に用いている名称では、女性専用外来が29.7%と最も多く、以下、女性外来、女性専門外来、女性総合外来の順で、この4種類で67.1%を占めました。
  2. 女性専用外来の開設している診療科では、婦人科が31.9%と一番多く、内科19.8%、総合診療科7.7%、外科5.5%、複数科4.4%、精神科3.3%、その他38.5%でした。
  3. 外来担当者総数237名の分析ですが、性別は、95.6%が女性医師で、女性医師のみが担当しているところが90%でしたが、男性医師だけが担当している施設も4施設ありました。担当医師の数は1名から12名まで分布し、2名が20.3%と最も多く、ついで6名、1名、3名の順でした。年齢は30代が39.1%ついで40代が30.3%で、両者を合わせて約70%を占めました。担当医師の専門の診療科は、内科系が35.3%と最も多く、産婦人科30.7%、外科系10.5%、精神神経科系7.1%、皮膚科3.8%、麻酔科2.9%の順でした。
  4. 女性専用外来での診療の頻度は、週1回が46.2%と一番多く、週2-4回が27.5%、週5日以上が9.9%、月2回は7.7%でした。
  5. 診療の平均時間は、初回は30分以上が46.2%、15−30分未満が30.8%、特に決めていないが14.3%でした。診療費は78.0%の施設がすべて保険あつかいで、7.7%の施設がすべて自費あつかい、どちらでもが12.1%でした。しかし、すべて保険あつかいでも予約料は自費で1万円の別料金を徴収しているところもありました。自費の場合の金額は、初診で2000円から1万円で、約60%が5500円未満でした。
  6. 回答者の 「女性専用外来」についての考え方は、患者の話を聞くための診療時間を十分にとる、女性患者が話しやすい環境を確保するが、それぞれ、80.4%、79.4%と最も多く、ついで、女性医師が女性患者を診察する、全人的に診療する女性のためのプライマリー・ケア、カウンセリング・マインドで診察する、が、それぞれ、65.7%、60.8%、54.9%と多く、性差医学の発展に寄与する、女性医療は医師ばかりでなく医療スタッフ全員も女性が望ましいが、約40%でした。
  7. 多い疾患を挙げる設問では、更年期障害が最も多く、その他の婦人科疾患、心身症、精神科疾患、内科疾患、思春期疾患、乳房疾患など外科疾患の順でした。
  8. 患者への診療形態は、初回話を聞いて、他科や他院に振り分ける窓口的役割が49.5%と最も多く、ついで、他科に振り分けるが引き続き女性外来の場で診るものが、36.3%、予約段階から、かかりたい科の女性外来担当者に受診できて引き続き女性専用外来で診るものが、15.4%でした。
  9. 採算性については、単独で採算は取れていると回答した施設はわずか4.4%で、採算は合わないが施設のイメージアップになるというものが57.1%、あとは、他科での診療継続や具体的疾患として継続診療するので、採算が取れると回答した施設が、それぞれ15%未満でした。しかし、採算はあわず、中止を考慮中という施設は1施設みとめました。
  10. 患者の評価については、よいが64.8%、普通は15.4%、わからないは14.3%でした。

 回答者の感想も合わせ、結果を要約します。
 女性専用外来は、性差を意識して診療を行い、全人的に診るプライマリケアで、複数のスタッフで、多くの科が協力してかかわるべきもの、という実像が浮かび上がりました。女性専用外来の登場により、外来の本来あるべき姿、すなわち、患者さんの話を時間をかけて十分聞き、共感し、診療を行うことの基本姿勢をただされたという印象も多いようです。今回の調査で、初診時の診療時間は30分以上が最も多く、丁寧に対応していることが推測されます。また、2人以上の医師が担当しているものが多く、ほとんどの施設は、週1回ないしはそれ以上の外来が設置されています。担当者は、女性のからだについてよく理解した医師で、丁寧に対応するマインドがあれば、特に、担当者の性別にはこだわらない、という意見も多々ありますが、女性がリラックスして受診できる、種々の理由で男性とはうまくコミュニケーションが取れない女性もいるので、やはり現状では女性医師の外来は必要とか、女性医師の外来であるべきという意見が多くありました。
 一方、はじめに、女性医師が対応すれば、次回から振り分けた先の外来で男性医師が担当しても患者は納得するとのコメントもありました。患者さんの病気として、最も多いのが更年期障害、次がその他の婦人科疾患でしたが、心身症や精神神経疾患も多いことがわかり、メンタルケアが重要と考えられました。外来の開設している診療科は産婦人科が一番多いのですが、担当医師は内科系が産婦人科よりも多い現状で、婦人科との連携が必要との意見もありました。
 一方、女性特有の疾患の受診もありますが、実際に自分が何科を受診してよいかわからない方、いくつかの病院で納得いく説明をしてもらえなかった方、女性医師に診てもらいたい方が多く受診している面もあるようです。使命としては、性差医療を医療側、患者側、社会に正しく認識してもらう、性差に起因する医学データをまとめる、などの意見があり、要望としては、医学教育に組み入れる、女性医療スタッフの育成や研修プログラムを確立させる、他科との意見交換会や勉強会をおこなうなどが出されています。問題点としては、人員の保持、とくに経験のある女性医師の確保の問題のほか、担当者の負担が大きすぎる、時間の制約が大きく、また、経済的な負担も大きいなどがあります。
 一時のブームでそのうち消滅するという意見も、少数ありますが、需要は高まるばかりで、そのニーズに答えられるよう、予約枠を増やし、担当者を増やし、医師ばかりでなく、心理士などのスタッフも充実させる必要があり、より高いレベルの医療を確保するためには、当然、男性スタッフの関与が必要との意見もありました。

 以上、今回の調査結果をまとめさせていただきました。産婦人科医がより一層、女性のための医療を行う際の参考にしていただければ幸いです。