平成17年1月24日放送
  日産婦医会ブロックだより-四国
  日本産婦人科医会四国ブロック会会長 福井 敬三


 四国ブロックは愛媛・香川・徳島・高知の四県で構成され、会員数は平成16年7月現在で愛媛151・徳島119・香川105・高知74名で総勢449名、そのうち会費免除者65名と非常に少人数となっております。

 かつての日母大会は昭和58年に第10回大会を松山で、平成5年に高知で第20回大会を行い、そして平成15年に第30回日本産婦人科医会学術集会徳島大会を「青い国四国の地から医療と患者の安全を目指して」のテーマで盛大に開催されましたが、これらの大会を催すにあたり会員数が少ないためその負担が非常に大きく特に担当の徳島県は大変だったわけです。次回からはブロック編成替えがなされ、中四国合同で平成19年に中国で開催される予定になっております。若い先生方が多数参加していただける魅力ある大会になれば良いと思っています。

 近年、産婦人科医を志す若手医師が極端に少なく、また高齢化も進み女性医師の増加はあるものの会員不足は極めて深刻な状況です。これの主な原因は、少産少子化・医事紛争の多発・過酷な労働条件等によるものと思われます。

 まず、少産少子化は人口を維持できる人口置換水準の2.08を大きく下回り合計特殊出生率は1.29とますます低下し、2006年をピークに人口減少に転ずる事は不可避の情勢で産婦人科への夢も少なく斜陽であると思われていること、また周産期医療は母子二人の生命を預かっている上に不測の事態を不可抗力的に起こす可能性が大きく結果が悪いと医事紛争になり易いという特殊性を持っております。
 現在、胎児周産期死亡は1000対40と世界トップレベルになっていますが、それでも「0」ではなく、それは胎児発育過程で不可抗力的な異常の起こる可能性があり如何に進歩した現在の医学でも「萬能」ではありません。また、医療事故のリピーターに対し医療体制全体を見直し、行政処分まで取りざたされており我々に対する各界の「眼」は非常に厳しく死活問題になっております。これでは、ますます保身医療になり国民のためにもプラスにならないと思われます。産婦人科の信頼回復のために真摯な態度で倫理問題をも含め自浄作用に努め生涯教育研修等で知識技術の向上を図り悪名挽回に努めねばなりません。
 四月から発足した医療事故過誤防止事業は各県とも最重要課題として真剣に取り組み成果を上げつつあります。医事紛争の中で最も問題となる脳性麻痺は、患者救済の観点から医師側敗訴になることが多く、また賠償金も非常に高額なものになっております。原告敗訴の場合は、資金的援助がどこからもないことから「脳性麻痺救済システム」の確立を国に要請するよう8月21日に四国ブロックとして本部に要望したところです。
 有床診療所の先生は24時間拘束され自分の時間はほとんどなく常に精神的重圧がのしかかる過酷な条件下にあります。これらが産婦人科を志す医師の少ない主な原因と思われますが、どの要因も早急な政策で何とかしてこれら悪条件の環境整備を急がなければ産婦人科医療の崩壊に繋がるのではないかと危惧されます。
 四国ブロックでも分娩を取り扱う医療機関はだんだん減少しつつあり厳しさが窺われます。しかし、一部のファイトある若い先生でその気で頑張られ競合も少なく好景気の先生もごく僅かですがあるにはあります。この夢を是非広げたいものだと思います。

 周産期医療の取り組みは、高知県では7月26日に小児科と連携し各周産期医療機関で収集したデータに基づき周産期医療協議会を開き、県民への責務を果たしました。愛媛県では、本年4月に総合周産期母子医療センターに昇格したのを契機に研究会を7月24日、また協議会を8月19日に開催し院外出生の病的新生児を受け入れる施設間のコンピュータネットワーク充実の他種々の項目について協議し特に搬送問題ではこの度県知事にドクターカーの導入を要請し既に予算も取れた也に聞いております。またドクターヘリのことも常に話し合っております。現在の妊産婦は、高齢化が進み産科医療の潜在的リスクが高く緊急事態も起こりやすく、その時一人の医師では到底充分な対応はできず病診・診診の密なる連携が必要であることは言うまでもありません。それにより地域医療のレベル向上、事故防止安全性が確保されますが、それが可能な地域では既に必然的に積極的に行われており医会が推進すべきとしているセミオープンシステム、またよい産院10ヵ条にも相通じるもので四国ブロックでの周産期死亡成績は抜群に良くなっております。それのできない地域が問題で、今後国をあげてその対応を急がねばなりません。ローリスク分娩は国民性地方性の文化にあったきめ細かな人間味のある家庭的雰囲気で快適に安全にできれば理想的で、大病院であればすべて満足できるというものではありません。大学医学部は各県一つずつ四大学あり今回独立法人化されることもあり、共に協力しなお一層の活動強化に努め、車の両輪でなく一輪との共通認識のもとに業務の連携協力は円滑に行われております。

 がん検診は、各県とも活発で子宮頸癌検診は20歳以上に拡大され新しく検診を受ける方の啓発に力を注ぎ、早期発見に努力しています。乳がん検診は、徳島県ではMMG検診の具体的な方式がいろいろと検討され講演会も行い読影資格の取得も推奨され、その努力が実りつつあります。愛媛県では、検診車4台でMMG検診を行い各市町村の77%をカバーし、平成15年には15,000人が受診しております。しかし、産婦人科医の参入は今一つの感があり、これからの問題だと思われます。診療所では視触診とエコー診で行われ疑わしきはそれなりの病院に紹介しているのが現状です。

 学校専門医関係は、香川県は既に性教育推薦依頼があり、県下を7地区に分け複数の委員であたることになりだんだんと具体化してきております。徳島県は、学校地域保健連携推進事業連絡協議会を設置し、県・行政・大学・医師会等より22名の委員で発足し、平成16年度学校医部会総会並びに講演会を7月25日に開催し、また学校の要請により各専門医の派遣を行うなど児童生徒の心身の健康相談や健康教育を行う事業を実施しております。高知県は、本年度は見送り、来年度から取り組む意向のようです。性教育は、愛媛県では第18回セミナーを来たる1月27日に開催するよう準備中で、小・中・高・PTAを学校関係で毎年開催し、その内容は県教育委員会も非常に関心を持っております。高知県は、平成16年2月28日に若者を取り巻く性環境について語り合う懇話会を開催し、人工妊娠中絶問題の対応について話し合い、また思春期相談センターをオープンにして性に関する様々な問題点について総合的な支援を行っております。

 女性のライフサイクルの大きな変化で生涯を通じた健康支援の範囲も診療内容も拡がり、また高度医療技術の進歩に伴い、遺伝相談・不妊相談等ますます増え、各県とも公的相談センターを設け対応しております。

 特定不妊治療費助成事業も国の要綱に基づいて行われ、高知県6・香川県6・徳島県5・愛媛県7医療機関で既に4月から発足しており、多数の申請が出ている状況です。

 愛媛県では、11月3日をゴロに合わせて「よい子を生み育てる妊婦の日」として既に32回も続けております。この事業の他いろいろの活動で産婦人科会として初めて平成5年に保健文化賞の栄に浴することができました。

 おぎゃー献金は、一人の献金額が平成15年高知県第3位・愛媛県第4位・徳島県第16位・香川県第19位と常に上位にあり、四国ブロックは頑張っております。

 以上、四国ブロックの現況の主だったものをご報告申し上げました。お聞き苦しい点のあった事をお詫び申し上げます。ありがとうございました。