平成17年8月15日放送
第32回日本産婦人科医会学術集会のご案内
第32回日本産婦人科医会学術集会会長 青地 秀樹
第32回日本産婦人科医会・学術集会は、近畿ブロック担当で平成17年10月8、9両日、滋賀県大津市ピアザ淡海県民交流センターにおいて開催の運びとなりました。
近畿ブロック六府県の会員一同、一人でも多くの全国の先生方に参加していただけるよう、日本産婦人科医会会長坂元正一先生をはじめ、本部役員の諸先生方の温かいご指導ご支援を賜り、日々準備に励んでおります。かねてより医会学術集会のあり方について種々検討されてきましたが、全国を6ブロックに分け ての開催、そのスタートといえる学術集会担当の指名を受け、近畿ブロックとしてその意向に少しでも沿うよう温故知新、充実した内容になるよう企画しました。
スローガンは“マザーレイクびわ湖畔に集う・魅力ある産婦人科医療への挑戦”です。
10月8日(土)は、ピアザ淡海での開会式に続いて生涯研修プログラムとして、それぞれの専門領域から、特に最新の臨床を視点において新しい産婦人科医療への展望について講演をお願いしています。
まず、大阪市立大学教授石河修先生に「産婦人科医による女性尿失禁のプライマリケア」と題し講演いただきます。更年期女性の尿失禁に対しては現在は社会的な理解度は十分とは言えず、約3割の女性が尿失禁で悩んでいるにもかかわらず、その一割しか適切な治療を受けていません。このように尿失禁患者が増加傾向にある今日、早急に統一化された尿失禁管理基準の取り決めが必要となり、産婦人科医が最低限必要な知識・問診・診断法等を提起し的確な治療を行 うことについて述べていただきます。
二題目は「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へ」をテーマに、神戸医療センター産婦人科部長山崎峰夫先生に講演いただきます。従来、妊娠中毒症として知られていた病態を妊娠高血圧症候群との名称に改めた経過と妊娠中毒症を高血圧中心としてとらえ、新しい妊娠高血圧症候群の分類に沿った病態の解説を加え、分類に基づいた管理のあり方についてお話をいただきます。
三題目として、近畿大学教授星合昊先生に「難治性子宮内膜症における治療戦略」と題し、講演いただきます。その病態、診断、そして特に治療法として、不妊症治療には「手術療法と生殖補助医療」の組み合わせに年齢、不妊期間を加味し、疼痛に対しては「NSAIDS、 手術療法、抗エストロゲン剤」の治療法に種々の状況を加え、個々の症例に最良の組み合わせの治療法を選択します。難治性子宮内膜症の治療戦略に完成した方法はありませんが、治療経過を報告いただき、女性のQOLの改善に役立つようお話しいただきます。
四題目として、大阪大学助教授恒藤暁先生に「がん医療における終末期医療を含む新しいケアの考え方である“緩和ケア”の最近のトピックス」と題し、講演いただきます。緩和ケアとは治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な 全人的ケアであり、その目標は患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することです。その提供のためにも症状マネジメントが大切であり、そのためにも最近のトピックスの紹介をしていただきます。
そして五題目として、京都府立医大教授本庄英雄先生に「女性心身症のプライマリケア」と題し講演いただきます。我が国における女性心身医学の歴史。心身医学には患者中心医療の心がけである一般性と心身医学的検査、診断法に基づく心身医学的治療法である専門性があります。女性の場合、女性特有の身体的心理、社会的特徴を踏まえた治療を必要とします。特に月経前症候群(PMS)、月経前気分不快症候群(PMDD)について詳細に解説していただきます。
最後に、昨年「産婦人科医は女性を守り続けます」と産婦人科医を「生涯にわたる女性の主治医として受診してください」と提言実行された前日本産科婦人科学会会長藤井信吾教授にまとめていただきます。若い産婦人科医、並びに勤務医の先生方にも参加しやすく、臨床、学術的にも充実した企画としました。
また、基調講演は日本医師会会長植松治雄先生に「医療の変革期を迎えて」と題し、日本医師会としての産婦人科医療の目指す方向を示していただければと思っております。
その夜は、大津の町は湖国三大まつりの一つ「大津まつり」でにぎわう中、ささやかではありますが懇親会を琵琶湖ホテルにて学会の疲れを癒していただけるよう準備いたしております。アトラクションといたしましては、大津市無形文化財の高橋松山絵師の江戸初期より大衆に親しまれ続けてきた大津絵の実演と大津絵踊り保存会の皆様の伝統的踊りを用意しました。学術集会両日に大津市内で繰り広げられる大津まつりともどもお楽しみください。
10月9日(日)は朝よりシンポジウムとして、厳しい社会環境と医療情勢の中で今一番話題となっている「より安全な分娩を目指して−これからの分娩のあるべき姿」をテーマに、滋賀医大教授野田洋一先生、関西医大教授神崎秀陽先生をコーディネータとし、その導入から解説いただきます。患者を送る方の第一線開業産科医からあさぎり病院藤原卓夫先生に、救急受け入れ側大学病院産科医から滋賀医大助教授高橋健太郎先生、そして患者側弁護士から安東宏三先生に、オープンシステム実行産科医から大阪厚生年金病院高木哲先生、そして妊娠リスク評価と受け入れ病院の機能分化と題し愛育病院中林正雄先生に、追加発言として、佐野病院三浦徹先生、大津赤十字病医院宮本紀男先生にそれぞれの立場からご発言をいただきます。また会場の先生方に加わっていただき、熱のこもった討論を展開していただきます。今年の第1回日本産婦人科医会理事会で「最近の医師へのバッシングは度を超え、産婦人科は今危機の 最中にある。過去にとらわれず産婦人科全体で未来を築こうではないか」との坂元会長の挨拶の如く、将来への周産期医療のこれから目指すべき姿が、今回びわ湖畔で浮かび上がってくるものと期待されます。
なお、当日(10月9日)は第113回近畿産科婦人科学術集会(会長榎本恒雄恒雄先生、学術集会会長植木實先生;大阪医科大学教授・学長)が同会場で開催されます。近畿各大学、各病院の若き産婦人科医との意見交換の場としていただきたく思います。
また、ランチョンセミナーとして、1)卵巣悪性腫瘍のガイドラインとして藤田保健衛生大学教授宇田川康博先生、2)分娩前胎児心拍数モニタリングを大阪大学教授村田雄二先生に、3)最近の鎮痛方法の考え方と選択を埼玉県立がんセンターの余宮きのみ先生にお願いしています。そして午後は、文化講演として「そのとき歴史は動いた」でおなじみのNHKアナウンサー松平定知氏に演題「私の取材ノート」のお話を両学会共催で行います。
滋賀県には人々と生き物を潤す“マザーレイクびわ湖”と山の自然、そして歴史街道、名所旧跡、神社仏閣、庭園等、数多くございます。10月10日は祝日です。どうぞゆっくり湖国を満喫してください。
近畿ブロックとしては、旧日母大会として第2回大阪市(S50年)、第12回神戸市(S60年)、第22回京都市(H7年)、夫々、藤原哲先生、川島武夫先生、平井博先生が大会長をされています。