平成17年10月10日放送
日産婦医会ブロックだより―北海道
日本産婦人科医会北海道ブロック会会長 兼元 敏隆
日産婦医会アワーに北海道ブロックだよりとして話題にするようにとの要望がありました。北海道の産婦人科医療の流れから、自分なりの年齢・立場で考えてきたことの現状までの未解決な部分に焦点を合わせ、その基底にあるものを分析し、事業計画とその結果の反省から、当然のことながら地方でできるものとでき得ない事の存在が明確になってきたように感じています。歴史的にみて、北海道はその端緒から1ブロック、1支部とされてきていますが、この条件は他支部と比べ不利な場面も内蔵されていると考えることもありますが、まとまりの利点を生かして独自性をもった事業の展開が可能でもありました。他の全国支部とのバランスも考慮して柔軟性を意識した基盤整備を終えたところでブロックを4地区支部に再編立ち上げました。
いろいろな事業の目的次第での横糸・縦糸の織りなす連携模様の構造で対応させ、これらを稼働させることで空白化してゆく地域を包み込み、時刻の得られる状態にできたと思っています。このことは早速、地方学術集会の開催と運用へも応用されることにもなり、3大学以外に次々と地区支部参加を濃密化した型へと替えてゆく可能性を誘導しましたし、平成18年からの日産婦医会ブロック合同学術集会の布石が用意されたと考えることができます。医会支部主催の恒例化した行事以外の研究会や社会へ向けての活動なども内容と規模により、この縦糸・横糸模様が効果的に働く側面がみられるようになってきました。平成17年からの新しい事業計画として、エルダードクターの参入による医療体制強化を図るワークショップ事業を立ち上げました。まだその実行は得られていませんが、会員の定年期を迎えての専門医療離れを防止することを主眼に、種々のチームの中に個人の情況次第で座る椅子を医会が中心となってお世話し、各人の蓄積された知識と技能を社会奉仕の精神で利用させていただくというもので、女性医師の再就職や個々の病後回復状態への考慮などもこの中に含まれる作業になると考えています。予知していたことではあっても、大学医局などの直面する内情は、実情が現出して始めてわかる部分があり、出張医の減数が集約化による地方病院からの引き上げなど、傷口に絆創膏を貼るだけのもののようでこのような対応だけでは既に遅きに失した感もぬぐえませんが、センター化、オープン・セミオープン化などこの構想にも組み込まれると、医療の質的向上も期待される面が考えられます。
この発想の源流は開業、勤務の互換性という点まで遡らなければならない問題かと思われます。定年のない生涯的開業もいつしか後継者問題を抱えます。まだ余力を残しながらも定年により椅子を空ける勤務医です。社会からも信頼される集団として努力し、会員は医療人としての誇りを維持し続け、個人的にも生涯のよりどころとして存在することが医会の使命であり目的であることを私は明文化してきました。それは産婦人科医師会と呼んでも良い感覚かも知れません。すでに医会の構成員の過半数は勤務医であり、複数化した開業形態に所属する医師の大部分も大学所属の医師のほとんども勤務医です。医療人を職種としてみるとき、かつては“先生”と呼ばれてきた社会は“労働者”であるとする判例にもみられるように変化しつつあります。医会が今更に勤務医問題などとして論ずべき問題ではなく労働問題であり、その内容・条件を口に出して良い時期が来ているのではないでしょうか。そでに医会と学会の存在が歴史的経過でいろいろの表現で残されています。ともに労働者として働くためには、それを支える社会的機構が成熟していることで解決されなければならないわけで、かつての開業医の医会と大学人の学会は勤務医の医師集団として同様の感覚を共有して危機的状態に向かわなければ、弱い存在とされてしまい誤った途をたどることになりかねません。以下医会報JAOGnews5月号の7ページに坂元会長は、学会の卒業生として京都での全国教授との懇談会において両会が同じ問題について論じてゆかなければならず、もはや両輪と言っている時代ではなくなっているとのご挨拶をされているのを紙面で拝見させていただきましたが、その場の雰囲気として感ぜられるのは相変わらずの手を取り合っての密接な協力体制と相互支援であり、理解という言葉であるようです。
理解を進めるために用意されなくてはならないのは共通の問題として考える姿勢でなければなりません。北海道ブロックの会員名簿作成は学会側との協議でなされますが、大学毎の医局員の基準にも相違があり、対応策としてAとB会員にC会員の枠を作り研修中の医師への配慮と各医局間の基準の相違を調整して参りましたが、卒後研修制度も変わり医局を廃止した大学もあり、専門医までのコースを個人的に指向する型も散見され所属の決めがたいケースも予見されるわけです。この際、是非にとお願いしたいのは、医会と学会の入会を同一時期に一緒にしていただきたいものです。厚生労働省と文部科学省の所管とか、種々の問題がありなかなか難しい、ではなく両会の同時入会があっての卒後教育であり、生涯教育であるべきで、どう表現しどう解決するかには時間がかかると思われますが、入会の同時期・同時加入は決して両会の存続にかかわるわけでもなく、両会の将来に解決をもたらす方向へ作用すると思考されます。そのあとにブロック・支部での所属、会員種別の設定など地方の情報をもとにした合理的な判断が続くはずで、その上での各種委員会であり、構成員も内容次第で配分は考慮されるべきです。
医会員が学会内の検討課題とされないことをなげき、学会は医会員の声援の低さにとまどい、互いに不満足な状態を感じながらも協力と支援を口にしてきたような気がします。産婦人科医療の現状は、法的規定以外にも学会自らに規定される資格が厚みを増しています。さらに、社会的要請は、基本領域以外のサブスペシャリティ領域の取得へと拡大していきます。その上に本題の医療の経営と保険制度です。若い世代のうちから身につけなければならないものが多すぎます。
若いうちから学会と医会の中に身を置いて、独断的な社会学を自らが排除できなければ汗をかいたつもりでもやりなおしがきかなくなります。専門医制度も確立され、学会は理事長制へと移行し、改革の時期と考えられる今こそ学会・医会への同時入会を強力に勧める時期と考えるがいかがでしょうか。それを出発点とした上での現状分析であり各種委員会の存置と老人たちへの会費納入上限の拡大でなければならないと思います。現在のところ、研修病院の指導医に対して新人の発掘と専門医療への勧誘の努力をお願いして医会の春季事業であるウエルカム・ガイダンスにも変化を持たせて試みてみましたが、効果のほどは全く不明です。このようなことは、本来誰が考え計画するものなのでしょう。両会の同時加入で意識を共有し、人生の節目節目での棲み分けが円満にかつ効果的に行われ、年輪が作る智恵を利用しての希望的将来を希求したいものです。支部長会で申し上げたかったこと加えて北海道だよりとさせていただきました。