平成17年11月21日放送
平成16年人口動態統計調査結果より(平成16年1月1日〜平成16年12月31日)
日本産婦人科医会広報委員会委員 窪谷 潔
平成17年10月に、厚生労働省統計情報部から平成16年の人口動態統計の概況が報告されました。
これは去る6月に公表された人口動態統計月報年計に修正を加えた、平成16年1月1日〜平成16年12月31日までの確定値であります。調査対象は「戸籍法」と「死産の届出に関する規定」により届け出られた日本人の出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象としています。調査資料は全国市区町村、保健所を介して都道府県経由で厚生労働省に届けられた数値に基づくものです。毎年3月初めに総務省が人口統計を発表しておりますが、こちらは5年ごとに実施される国勢調査により把握された人口の実態を基礎として、自然動態、社会動態などの資料を加え、外国人も含む我が国の人口状況を推計するものです。さて今回は主に厚生労働省の統計、人口動態の概況についてご説明いたします。出生数は減少
それではまず出生数について説明いたします。昨年の出生数は111万721人で、前年より1万2889人減少しました。ちなみに昭和22〜24年の第1次ベビーブーム期は毎年270万近くの出生数がありました。その頃に生まれた女性が出産したことにより、昭和46〜49年は第2次ベビーブームとなり、毎年200万人を超える出生数がありました。しかし昭和50年以降、出生数は毎年減少し続け、平成4年には約120万人となりました。平成13年からは4年連続の減少となり、昨年は戦後最低を更新しました。ちなみにこれは平均28秒に1人の赤ちゃんが生まれている計算になります。
出生率は人口千対で表しますが、昨年は8.8で、前年の8.9を下回りました。今年は戦後60年にあたりますが、戦後統計の始まった昭和22年は34.3で、昭和50年には17.1と、30年毎にほぼ半減しています。
次に出生数を母の年齢別にみてみます。平成16年には初めて、5歳ごとに区切った年齢で35〜39歳の出生数が20〜24歳のそれを上回りました。平成15年から30〜34歳の出生数が最も多くなっており、25〜29歳を上回っています。さて第一子、第二子、第三子およびそれ以上がどの位生まれたか、出生順位別の出生数をみてみましょう。いずれの出生順位においても減少していますが、出生数の約半数を占める第1子は9千人減少しており、減少数の約7割を占めています。第二子以降の出生数の減少はさほどではありませんでした。第1子出生時の母の平均年齢は28.9歳で上昇傾向にあります。
ここで合計特殊出生率についてお話します。合計特殊出生率とは、その年次の15歳から49歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので、1人の女子が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子供の数に相当します。
平成16年の合計特殊出生率は1.29で、前年と同率でした。昭和40年代はほぼ2.1台で推移していましたが、50年に2.00を下回ってから低下傾向が続いています。 年齢階級別に内訳をみますと、29歳以下では前年に続き低下しており、30〜34歳は上昇に転じ、35歳以上では引き続き上昇傾向となっています。
出生順位別にみますと、第1子、第3子は低下しており、第2子は上昇に転じています。
都道府県別にみますと、合計特殊出生率が高いのは沖縄県(1.72)、宮崎県(1.52)、福島県(1.51)等で、低いのは東京都(1.01)、京都府(1.14)、奈良県(1.16)等大都市を含む地域でありました。また、東京都をはじめ7都県で前年より上昇しています。死亡数は増加
次に死亡数の変化についてお話します。死亡数は102万8602人で、前年より1万3651人増加し、2年連続で100万人を超えました。死亡率は人口千対で表しますが、平成16年は8.2で、前年の8.0を上回りました。単純計算をすれば31秒に一人が亡くなられていることになります。
死因別にみますと、死因順位は第一位から第十位まで昨年と変わりありません。第1位は悪性新生物で、32万358人が亡くなられており、全体の31.1%にのぼります。第2位は心疾患で15.5%。第3位は脳血管疾患12.5 %となっています。脳血管疾患による死亡は近年減少している一方、悪性新生物による死亡総数、およびそれに占める割合は男女とも増加しています。ちなみに産婦人科関連の疾患を死因別にみますと、子宮の悪性新生物で亡くなった方は5525人で、前年より4.2%増加。人口10万対の死亡率では8.2から8.6に上昇。卵巣の悪性新生物で亡くなった方は4420人で、前年より4.5%増加。死亡率では6.6から6.8に上昇。乳房の悪性新生物で亡くなられた女性は1万524人で、前年より7.3%増加。死亡率では15.2から16.3に上昇。妊娠、分娩及び産褥に関連し亡くなられた女性は56人で前年より18人減少。前々年より34人減少しています。死産数、周産期死亡率は減少
次に死産についてですが、 死産数は3万4365胎で、前年より965胎減少し、出産(出生+死産)千対で表す死産率は30.0で、前年の30.5を下回りました。
また周産期死亡は5541例で、昨年を388例下回りました。内訳は妊娠満22週以後の死産は4357胎で昨年より269胎減少、早期新生児死亡は1184人で119人減少しています。周産期死亡率も5.0と昨年の5.3を更に下回りました。(表)周産期死亡率は昭和60年代からほぼ半減しており、昭和50年代前半の約4分の1まで低下しています。都道府県別にみますと、周産期死亡率の低いのは宮崎県(3.1)、岡山県(3.3)、三重県(3.4)等です。自然増加数
次に日本の人口に関係する人口の自然増加数についてですが、出生数から死亡数を引いた人口の自然増は、8万2119人で、平成15年の10万8659人より2万6540人減少しています。確定値として初めて人口の自然増が10万人を割り込みました。各地方では人口減少が既に始まっており、過半数を超える25の道と県で人口増加率はマイナスになっています。低いのは秋田県(−4.1)、高知県(−3.3)、島根県(−2.8)等です。
婚姻・離婚
続きまして、婚姻についてご説明します。婚姻件数は72万417組でした。これは前年より1万9774組の減少でした。人口千に対する 婚姻率は5.7で前年の5.9より減少しました。こちらは昭和59年頃より6.0前後で推移していましたが、この5年間は減少が続き、戦後では、昭和62年と並び最も低い婚姻率となりました。第2次ベビーブーム世代の婚姻数が伸び悩んだ事も一因と思われます。また平均初婚年齢は夫、妻ともに上昇傾向にあり、平成16年は夫29.6歳、妻27.8歳で、夫、妻ともに前年より0.2歳上昇しています。年齢(5歳階級)別にみた妻の初婚率は、20歳代で低下傾向、30歳代で増加傾向となっています。ちなみに昭和22年の婚姻数は、93万4170組で、婚姻率は12.0と今の2倍ありました。都道府県別に見ますと、婚姻率が高いのは東京都(7.0)、神奈川県(6.5)、沖縄県(6.4)、愛知県(6.3)で、低いのは秋田県(4.4)、島根県(4.6)、高知、新潟、岩手各県(それぞれ4.7)となっています。
続いて離婚についてですが、こちらは2年連続で減少しました。平成16年の離婚件数は27万804組で、前年より1万3050組の減少となりました。(表)離婚率は平成2年以降一貫して増加傾向でしたが、過去最高であった平成14年の2.30から平成16年は2.15と増加の抑制傾向が認められました。
ちなみに離婚率は昭和24年には1.01で今の半分以下でした。都道府県別にみますと、高いのは沖縄県(2.72)、北海道(2.59)、大阪府(2.51)等です。以上まとめますと、婚姻数が減少し、出産年齢の高齢化、初産数の減少が顕著となった一方で、第二子の合計特殊出生率はわずかに上昇しました。また死亡数の内訳では悪性新生物によるものが引き続き増加しており、婦人科癌の死亡率も上昇しています。周産期死亡率、母体死亡数はいずれも減少しています。平成16年は人口の自然増が初めて10万人を割り込みました。
最後になりますが、平成17年2月21日に総務省統計局より公表された、平成16年10月1日現在の我が国の推計人口確定値は1億2768万7千人でした。90歳以上の人口が初めて100万人を超え、全ての都道府県で老齢人口の割合が上昇しています。今年は国勢調査が実施されましたので来年には我が国の人口の実態が明らかになります。