平成9年3月24日放送

 日母・中央情報室だより

 日母産婦人科医会情報処理検討委員会委員長 大橋 克洋

 日本母性保護産婦人科医会の中央情報室には「情報処理検討委員会」があります。

この委員会をさらに4つの小委員会に分け、いろいろなことが検討されてきました。

「インターネット」「パソコン通信」「事務のOA化」「光カード」に関する小委員会です。

 コンピュータなど、「新しい技術」を使った事がらについて検討されてきましたが、今年度検討されてきたことについてご紹介したいと思います。

○ インターネット小委員会

 日母では日母本部から会員の方々への情報伝達の手段として、「日母医報」を毎月発行してきました。しかしこのようなメデイアは、その性質上、本部から会員への一方通行になりがちです。また、月に一回の発行ですので緊急に伝達したい事項があっても、次の発行日まで待たねばなりません。緊急に号外を出したにしても、必ずしもタイムリーに伝えられるとは限りません。

 また、一般の方々にも広く情報サービスをすることも必要ですが、それには多額の経費を要し、今までは実現が困難でした。

 これらを解消するために、いよいよ本年4月からインターネットの上に「日母のホームページ」を公開することになりました。

 インターネット上にホームページを公開するシステムは正式には World Wide Web と呼ばれます。Web とは蜘蛛の巣を意味し、World Wide Web とは文字通り「世界中に蜘蛛の巣のように張りめぐらされた情報網」です。「ここで公開された情報は世界中の人々が共有できる」という画期的なシステムでもあります。また一旦電話回線に接続さえしてしまえば、使い方は極めて簡単ということも大きな特徴ですから、今後一般家庭にもどんどん入ってくると思います。

 ホームページの中にはパスワード(いわゆる暗証番号)を設けて、情報の閲覧に制限を設けているところもありますが、本来 World Wide Web は完全にオープンであるのが原則です。日母のページは会員に限定せず、一般の方々が誰でも自由に見られるようにすることを考えています。

 郵便を配送するための宛名と同じように、ホームページにも URL と呼ばれる住所があります。日母のホームページの URL を申し上げますので、メモをご用意ください。URL とは Uniform Resouce Locator の略で、URL でアクセスすれば世界のどこのホームページでも居ながらにして見られるわけです。いずれ「日母医報」にも URL を掲載する予定ですので、日母会員の方であればそちらを御覧になっても結構です。

 日母の URL は http://www.iijnet.or.jp/jaog/ です。まだ開始段階で、情報の量・質ともにまだまだの内容ですが、徐々に整備をしていきたいと考えております。URL をもう一度申し上げます。http://www.iijnet.or.jp/jaog/ です。アクセスしてみてください。

○ 日母ネット小委員会

 ホームページとともに、これまでの Nifty serve を使った「パソコン通信上の会員用フォーラム」も併用し、こちらでは会員に限ったデイスカッションや情報伝達を行っていきます。

 このフォーラムの登録人数も1年前から倍増して、現在は300名を越えるようになり、活発なデスカッションがなされています。会員同士の井戸端会議としての役目を十分果たしていると言ってよいでしょう。

 しかし、これも少しづつインターネット上の「電子メールを使った会議システム」へと移行してゆく予定です。パソコン通信は、基本的に「その枠内で完結する形」で始まったため、インターネット上のいろいろなシステムから利用するには大変不便だからです。

 インターネット上の電子メールを使ったメーリングリストなどの仕組みを使えば、従来のパソコン通信の会議室のようなものを、もっと広いエリアでもっと自由に使えるようになりまので、今後の「電子カルテ」などを使った臨床の現場とも深く結びつくこともできるようになります。

 私の診療所では、電子カルテで診療をしながら、合間に電子メールで意見のやり取りをしたり、いろいろな資料を参照したりすることができます。

 この委員会ができた頃の最初の仕事は FAX の普及促進でした。しかし、電子メールは FAX の便利さを兼ね備えた上、さらに便利な道具です。FAX より便利な特徴は、「文字や画像だけでなく、もっと広範囲なデータのやりとり」と「データの再利用」です。

 先進的な電子メールでは文章だけでなく、文章の沢山入ったフォルダーごと、あるいは絵や写真や音声、コンピュータのソフトウエアまで、電子メールに貼りつけて簡単に送ることができます。

 もうひとつ便利なのは、それらをコンピュータ内に保存しておいて、後日必要なものを取り出して再利用できることです。この2点は FAX では真似できません。

○ OA化小委員会

 これらネットワークを利用した情報の他に、「日母研修ノート」のようなものを CD-ROM に焼いて有償配布することも検討されておりますが、これには研修ノートの作成・編集段階からそれを想定しておきませんと、なかなか難しい面もあります。これらについては研修部と協力する形で今後実現されていくと思われます。

 World Wide Web のような情報システムを、施設内で公開するものを「イントラネット」と呼びます。日母事務局内部でも来期からイントラネットの構築を検討する予定です。システム的にはインターネットのホームページとまったく変わりませんが、内部だけに公開しますので、色々な文書やスケジュールなどをどの部署でも共通に閲覧できるため、上手に運用することができればかなり事務の効率化につながると思われます。

 従来からマッキントッシュのネットワーク機能を利用してこのようなシステムを運用することが検討されてきましたが、World Wide Web の利点のひとつに「使い方が極めて簡単」ということがありますので、ずっと使いやすくなると思います。

○ 光カード小委員会

 光カードに分娩モニターや心電図などの波形を保存するための「標準フォーマット」について検討が行われました。このようなシステムはどんどん発達して行きますので、将来大きくシステムが変わってもスムースに移行できるよう、柔軟な形式が考えられたことが特徴です。

 また光カードへの記録形式も、当委員会の強い意見により「異なるメーカーのもの同士でもまったく問題なく扱える」ようになりました。

 まだ実験的色彩が濃いところですが、いずれ実用化へ繋がることになるでしょう。また「離島などの妊婦さんの状態を、遠隔の医療施設でモニターできる」ようなシステムについても、実験が進められています。

○ まとめ

 今後は産婦人科医会会員の中だけでなく、より広く「一般社会への情報提供をしてゆくこと」も日母の使命であり、「産婦人科医療を一般社会に正しく認識してもらうため」にも大変重要なことでしょう。

 ホームページの公開により、一般の方々と直結した意見や情報の交換ができることになりますので、これを今後どのように有効に生かしてゆくかが、これからの課題となります。