本日は、今年度、則ち、平成9年度の社会保険診療報酬改定の概要についてお話ししたいと思います。今回の改定は、消費税率の引き上げに伴うものであり、先の4月1日より実施されているところです。改定の趣旨は、この消費税率引き上げへの対応の他に、長期入院の是正、急性期入院医療の充実、医療の効率化に向けた医療技術等の評価などであり、その他、病理検査や輸血などに関したものも盛り込まれてます。
改定幅1.7%、薬価の引き下げ率1.32%、実質0.38%の引き上げとなっています。
以下に産婦人科に関連する主要項目の具体的内容と、その内の新設項目や重点項目について順次述べていきたと思います。
まず、消費税率、引き上げへの対応としては、1番目に、入院環境料が156点から160点にアップし、2番目に特定疾患療養指導料が、診療所の場合は、200点から202点へ、100床未満の病院の場合は、135点からl37点へアップしています。3番目に検体検査判断料ですが、生化学的検査のIの判断料が110点から120点にアップし、4番目として静脈内注射が1回につき27点から28点にアップしています。5番目として閉鎖循環式全身麻酔が5,500点から5,800点にアップ、6番目入院時食事療養費については、その1が1,900点から1,920点へ、その2が1,500点から1,520点へアップしています。7番目に訪問看護管理療養費ですが、これが7,000点から7,050点へアップしています。
さて、次に長期入院の是正と急性期入院医療の充実に関してですが、1番目として、入院治療計画加算が200点から350点へアップし、2番目に退院時指導料が160点から300点へアップしています。3番目に入院時医学管理料ですが、これは今回の改定で最も大きな事項の一つと言えます。一般病棟における場合で、入院期間が2週間以内は571点から595点へ、2週間から1カ月以内は370点から390点へアップしてますが、1カ月から2カ月の場合は258点から220点へダウンとなります。但し、平均在院日数が30日を超す医療機関では、それぞれが510点、417点、284点となり、2週間以内のものについてのみダウンとなり、他はアップとなることに注意して頂きたと思います。4番目として、まず救命救急入院料ですが、これは入院期間7日以内の場合で、7,900点から9,l00点に大幅アップ、特定集中治療室管理料が6,200点から7,400点へ、これも大幅にアップしてます。手術後医学管理料、これは新設で、内容については後で述べますが、一日につき、病院の場合がl,500点、診療所の場合が1,300点となっています。5番目として、麻酔管理料ですが、対象が拡大され、硬膜外麻酔を行なった場合に85点が付されました。
次に医療技術などの評価に関してですが、1番目として処方料が26点から32点へアップしましたが、8種類以上の投与の場合は26点で変わらずとなり、処方箋料も76点から79点へ、アップしましたが、8種類以上投与の場合は53点とダウンになります。2番目に薬剤情報提供料ですが、これは新設で、7点が付けられており、今までの処方料の注にあった薬剤情報堤供加算は、これは5点でしたが、削除されました。この薬剤情報堤供料についても後で述べたいと思います。3番目に診療情報堤供料ですが、Aが、これは病院間あるいは診療所間の場合ですが、150点から200点へ、Bが、これは病院と診療所間の場合ですが、220点から270点へアップしており、今回新たにDとして、特定機能病院から診療所あるいは200床未満の病院へ診療情報を提供する場合に、500点が付けられました。
次に、病理検査に関してですが、病理診断料が210点から215点へアップし、病理学的検査判断料が110点から1l8点へアップしています。
次に、輸血料に関してですが、自家採血輸血が、200ml毎で、550点から700点へアップし、保存血輸血が、200ml毎で、250点から400点へアップし、白己血輸血が、200ml毎で、液状保存の場合が、600点から900点へ、凍結保存の場合が、1,200点から1,800点へアツプしています。交換輸血も1回につき5,000点から5,l50点へアップしています。
さて、では次に、新点数を運用するに当たって、特に新設あるいは重点項目について、
留意すべき事項を述べていきたいと思います。
まず、手術後医学管理料についてですが、これについては色々としばりがある点に注意が必要と思われます。初めに、救命救急入院料又は特定集中治療室管理料に係る届出を行ってない保険医療機関において算定できるものであるということです。病院、この場合は一般病棟に限りますが、又は診療所に入院している患者について、入院の日から起算してl0日以内に行われたマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を伴う手術後に必要な医学管理が行われた場合に、当該手術に係る手術料を算定した日の翌日から起算して3日を限度として算定するものです。また、検査の内、以下に述べるものは、これらは同様に当該手術に係る手術料を算定した日の翌日から起算して3日以内に行ったものに限りますが、所定点数に含まれるものとします。これは、術後の定型的検査について、請求の簡素化などの観点から包括して評価したものと言えます。これらの検査とは、尿中一般物質定性半定量検査、尿中特殊物質定性定量検査の内の糖定量を含む一部分、血液形態・機能検査の内の一部分、血液化学検査の内の血液ガス分析を含む一部分、心電図検査、呼吸心拍監視、経皮的動脈血酸素飽和度測定、終未呼気炭酸ガス濃度測定、中心静脈圧測定、動脈血採取などです。但し、尿・糞便等検査判断料、血液学的検査判断料又は生化学的検査判断料のIを算定している患者については算定できません。又、特定入院料、基本的検体検査判断料のI、IIを算定している患者についても算定できません。なお、手術後医学管理料を算定した同一月に心電図検査を算定した場合は、100分の90の点数で算定し、同一の手術について同一月に手術前医学管理料を算定する場合は、手術後医学管理料は100分の95の点数で算定します。
次に、薬剤情報提供料についてですが、これは、入院中の患者以外の患者に対して、処方した薬剤の名称、一般名でも商品名でもよろしいわけですが、その用法、用量、効能、効果、副作用、相互作用に関する主な情報を文書により提供した場合に、これは薬袋などに記載されている場合も含みますが、月一回に限り算定でき、処方の内容に変更があった場合は、その都度算定できます。副作用、相互作用が今回新たに付け加えられた点に注意していただきたいと思います。しかし、保険薬局において調剤を受けるために処方箋を交付した患者については算定できません。又、薬剤の処方日数のみの変更の場合は算定できませんが、同一薬剤であって効能又は効果など投与目的が異なる場合には算定できます。更に、類似する効能又は効果を有する薬剤へ変更する場合も算定できます。なお、この薬剤情報提供料を算定した場合は、その旨をカルテに記載する必要があります。
最後に輸血料についてですが、輸血に伴って、患者に対して輸血の必要性、危険性などについて文書による説明を行った場合に算定できるものとします。この説明は、当該患者に対する一連の輸血につき一回行うものとされ、この場合の一連とは、概ね1週間とされます。説明に用いた文書には、患者が署名又は捺印し、患者に交付すると共に、その写しをカルテに貼付します。
以上、大筋の要点をお話ししたつもりですが、個々の詳細については日母医報の3月号及び4月号などをご覧頂きたいと思います。