平成9年8月4日放送

第27回全国支部社会保険担当者連絡会

日母産婦人科医会幹事 秋山 敏夫

 本日は7月6日東京 京王プラザホテルにおいて行われた、第27回全国支部社会保険担当者連絡会の内容をお話し致します。

 当日は56名の社保担当者30名の本部役員・委員が集い活発な討論が行われました。まず高橋副会長の挨拶で始まり、次いで新家担当常務理事、小林日母社会保険委員会委員長、中野日産婦社保学術委員会委員長の挨拶がありました。

 前原副会長は、診療報酬改定に関し、技術料の重視、財源との関連での保険医療改革の問題点。かかりつけ医や家庭医の問題による新しい開業システムについて。更にはこの問題から波及する医学教育まで取り上げられ、日産婦・日母とも若手医師に対する保険医療教育の必要性が示唆されました。

 つづいて連絡・協議事項についてですが、まず中央情勢報告として、新家常務理事より、保険医療の最近の動向と題し、医療保険の機能の分化に対しての産婦人科の役割、小規模診療所の問題、急性期慢性期医療に関しその包括化、出来高払いの抜本的改革等が話されました。次いで、平成10年診療報酬点数改定に対して、妊娠・分娩に対する現物給付の問題点、健康保険法の一部改正について等が話されました。

 次は、平成9年4月診療報酬動態調査結果についてです。宮崎幹事より、本年4月の診療報酬の一部改定に伴い、モニター医療機関の協力により、本年3月分の明細書を4月の改定後の点数に置き換え比較した結果が話されました。それによりますと、診療所の外来では0.76%のアップ、入院では0.43%のアップ、病院の外来では0.18%のアップ、入院では1.48%のアップであり、全体としては0.61%のアップと概算ではありますが、いずれもアップしていることが報告されました。

 次は、平成8年度ブロック社保協議会質疑事項についてであります。

昨年度全国9ブロックで行われた社保協議会での主な質疑事項についての報告と検討がありました。主なものをご報告致します。

 まず、骨粗鬆症等の病名で検査などがなく、初診時からの薬剤長期投与ですが、他の施設などで診断が確定できていれば、妥当であるとの結論としました。

 スクリーニング的な子宮内膜増殖症や胎盤遺残病名での超音波検査は不適当としました。超音波検査の適応範囲を広げたばかりであり、スクリーニングの傾向が見られるものは査定の対象になります。

「子宮内膜症の疑い」病名でのCA125検査はレセプトによく見られますが、この検査は治療の前後に1回づつしか認められませんので不適当としました。

 プロスタグランディンとアトニンの同時使用は禁忌であり査定の対象になりますが、点滴が2本以上使用されている場合は、前後使用と考え適当としました。

 ズファジラン使用時の精密持続点滴注射加算は不適当としました。元々ズファジランは筋肉注射が使用法ですので、点滴注射は用法外であります。過去に長年点滴で使用された経緯があるため、その使用を認めている地区が多いと考えられますが、精密持続点滴注射加算は不適当と考えます。

 実日数一日でクラミジアと淋菌の同時検査がでる場合も見られますが、特殊な例以外は不適当としました。実際感染症の専門家によりますと、淋菌はクラミジアの十分の一以下とのことで、その併設は不適当としました。

 次は平成10年度診療報酬点数改定に向けての要望についてであります。

 まず、基本診察料の項ですが、

 1)産婦人科外来診療加算の新設であります。これは平成8年の改定から引き続き提出しました。何と言っても、産婦人科独特の技術料として、要望しております。

 2)時間外診察料の点数引き上げは、各科と共通の項であります。

 入院料としましては特に診療所入院料の改定を要望しております。

 指導管理等では、まず、1)特定疾患療養指導料の適応疾患の拡大であります。これも平成8年の改定時に提出したものですが、慢性疾患指導料がなくなった現在、特定疾患として卵巣機能不全、卵巣機能欠落症、更年期障害を要望しました。

 2)特定注射薬剤指導管理料の適応疾患拡大としては多胎妊娠やOHSSで問題になっているHMG製剤、HCG製剤と、長期に用いて副作用の問題もあるGnRHアナログ製剤について要望しました。

 検査料では、

 1)細胞診検査の点数改定並びに迅速細胞診・特殊染色細胞診検査の適応拡大

 2)分娩監視装置の適応拡大

 3)コルポスコピーの点数改定

 4)生体検査判断料の適応拡大

 5)赤血球不規則抗体検査を算定できる対象手術の拡大

 6)超音波骨塩量検査の保険適応

 7)HSG時の腔内注入手技料の点数改定

 8)ホルモンレセプターとしてのエストロゲンを個別算定

 9)ヒュナー検査の点数改定

 10)卵管通気検査の点数引き上げ

 11)超音波検査の部位数の改定(例;同一日に乳房と子宮の超音波検査を別途算定)

 12)子宮内膜症治療中のCA125等の検査回数を月1回に改定

 13)術前検査としてHIV検査の認可

 14)ヒュナー検査、頚管粘液検査の判断料を病理学的検査の項に変更

 15)新生児特定集中治療室管理料を算定していない時の呼吸心拍監視の算定

等を要望いたしました。

 投薬料では、切迫早産にマグネゾールの適応拡大を要望しました。

 処置料では、1)経腹・経腟羊水注入法の点数新設、2)AIH,GIFT,IVF-ET等生殖医療の保険適応、3)腟洗浄の点数引き上げ、4)外来処置料の点数引き上げを要望したしました。

 手術料では、

 1)婦人科手術点数の新設と点数の改定について、

  新設は腹腔鏡下骨盤腹膜利用造腟術、腹式・腟式腟断端挙上術、

     外陰・腟血腫除去術、子宮鏡下アッシャーマン症候群の手術、

     バルトリンのう腫造袋術(開窓術)、

  改定は子宮内膜掻爬術、開腹・腹腔鏡下による子宮付属器腫瘍摘出術、

     子宮付属器悪性腫瘍手術、子宮全摘術、子宮悪性腫瘍手術、子宮鏡下子宮筋腫摘出術、マンチェスター手術とノイゲバウエル中央腟閉鎖術、

 2)産科手術点数の改定では

  緊急・選択帝王切開術、骨盤位娩出術、吸引・鉗子娩出術、子宮頚管縫縮術、

  流産手術

 3)同一視野における併設手術の適応拡大として、帝王切開時の子宮筋腫核出術、子宮付属器腫瘍摘出術、子宮付属器癒着剥離術、広靭帯内腫瘍摘出術を、腹腔鏡下腟式子宮全摘術施行時の子宮付属器腫瘍摘出術、子宮付属器癒着剥離術、広靭帯内腫瘍摘出術を、婦人科悪性腫瘍手術と後腹膜リンパ節群郭清の適応拡大を要望したしました。その他、4)特定保険医療材料の拡大、5)入院患者の緊急手術に時間外加算の算定も要望いたしました。

 麻酔料では、研修ニュースでもお示し致しましたように、1)全ての麻酔時に呼吸心拍監視装置を適応と、2)経皮的動脈血酸素飽和度測定を全ての麻酔時で算定できるよう要望致しました。

 その他、1)新生児介補料の削除、2)包括点数の不合理の是正、3)心身医学療法の点数改定を要望致しました。

 例年、日本医師会からは各学会に5項目程度の要望が指示されますが、今回は多く要望しても宜しいとのことで、以上のような次第になりました。

 支部提出議題では、

 1)ナボット卵の手術点数は皮膚切開340点で算定、

 2)単なる卵巣機能不全の病名のみでの甲状腺機能検査は不適当、

 3)小手術の際の術前検査の範囲は手術前医学管理料の項目で算定、また、HIV検査は各地区で検討する。

 4)卵巣機能不全のみの病名で超音波検査は初診時のみ可とする。

 5)種々のHCG検査、LH検査の点数は医師の裁量権であり、どの点数の検査でも可とする等検討されました。

 その他、低用量ピル認可後の対応、マイリス腟錠認可後の対応について今後検討していくことを討議され、連絡会は終了しました。