広報委員会・情報処理検討委員会合同座談会

「これからの情報伝達と情報処理」


出席者:広報委員会
     石川委員長、石井・鈴木副委員長、高橋・長池委員、
     松井常務理事、秋山幹事
    情報処理検討委員会
     大橋委員長、加藤副委員長、稲葉委員、
     佐藤常務理事、宮崎幹事


石川
 情報をどのように効率よく会員や一般へ伝達していくかについて、今回討議する機会を設けることができました。司会を担当させていただきます。

【現在の情報社会】

石川
 現在、全般的な社会情勢が変わってきた。それに伴って情報社会も変化している。どのように変わってきているのか。
鈴木
 インターネットの普及率が、日本では昨年末には15%を超えたそうです。ブレークスルーポイントの直前にきている。
 通信回線・接続料金等の問題で諸外国に比べると普及率は低かったが、安い料金で常時接続できるようになりつつあり、患者や妊婦もいろいろな情報をつかんだ上で医者選びをして来る。キャリアウーマンが在宅勤務で子育てをしながら、このようなシステムを利用して最先端の仕事をやっている。これが現在の状況だと思います。
大橋
 これまでの情報伝達と言うと、「音声」「画像」などがそれに当たると思いますが、会話や電話以外は、例えば『日母医報』などは日母から会員の先生へ一方通行で行くわけです。経路が固定されている。自由に相手を選ぶということはなかなか難しい。一方、情報処理技術(IT)の急速な進歩によって、画期的に変わった。これを使うと地球上のどの人とも対話的に情報交換ができます。
 医療に関しては、患者さんの方がインターネットで自分の疾病に関する情報を集めて、非常に詳しい最新の情報を得ることができます。われわれは、この状態を頭に入れて対処していかなければならないという状況だと思います。
 この状態に対応するには、むしろ積極的に医療に関する有用な情報を発信してしまう。「攻撃は最大の防御なり」というものに似たようなこと。「そんなものは必要ない」と言っていると、「情報から隔離された陸の孤島状態」になってしまいます。社会や他の医者が知っていることを、その先生だけが知らないためにいろいろな悲劇が起こる。それは患者さんの悲劇であるし、その先生の悲劇になることもあるわけです。別に高度なことをやる必要はないと考えますが、ある程度情報をソフトリンクした状態に会員の先生方を持っていく必要があるのではないかと思っています。
加藤
 私たちは今、本当に大きな改革の中、あるいはその入口にいるのだということを認識することがまず第一に大切だと思います。産業革命のときに蒸気機関車が動いたときがその始まりだったように、インターネット、デジタル媒体というようなものを今後の変化の始まりと考えて取り組んでいかないといけない。
 例えば、視覚はカメラによってデータにすることができるようになった。最近はこれをデジタル化できる。聴覚はレコードからCDへ、これもデジタル化されてきました。デジタル化されることで全てコンピュータで取り扱うことができるようになり、インターネットという一つの手法を共通化することで世界中と通信ができ、距離の短縮ができた。デジタル技術の進歩と同時に周辺の技術が加速度的に進歩している。
 私たち医者の仲間では、「そういう物はなくてもよいのではないか」などと思いがちですが、最近、アメリカではインターネットと係っている人とそうでない人とでは格差が生じる(デジタルディバイス)とニュースになっていました。日母でもそういう意味で、会員に新しい情報を提供していく必要があるのではと思っております。
石井
 今、情報が過剰・過多の状態で、どうやってその情報を選択するか、情報の迅速性といった問題、それからエッセンス的な情報ということが問題になると思います。例えば『日母医報』で、学海メモを担当して感じるのですが、それに関連した雑誌が5-6冊はある。それ以外に英語で書いたものがあります。そんなに沢山はとても消化しきれない。高度な内容をコンパクトにということが必要ではないかと思います。
 また、フェース・トゥ・フェースと、TV等で行っているコンピュータを介した会話とでは、まだ十分に会話をしていないように感じます。さらに、コンピュータを使う場合、誰にでも簡単に使用できるものにしてくれないと、なかなか人は全面的に機械を受け入れることができないと思っています。
 何が必要な情報で何が不要かについて見極める能力が委員たちに問われます。膨大な情報をコンパクトで効率のよい情報に変換し会員へ伝達することは重要なことと考えています。
 電子メールなどが出てきても、それだけを使うというふうにはならないでしょうね。
加藤
 勿論です。おそらく七割位は機械で、三割位は書類と考えています。
石井
 昔と比べて情報量がすごく多い。情報量が多いからといって全ての情報が入ってくるのではなく、本当に必要なものがかえって少ないというか。だから、自分にとってどれが必要なのか、必要でないのかという問題。自分にとって何が必要なのかという選択、それがかえって難しくなる面があるのでは?
加藤
 今言われたことはとても大事なことです。どういう情報が必要で、何が自分にとって大切なのかという、選択する目が必要であると。しっかり見つけていく、見つけ出せるような教育をしないと。日本人は隣りだけを見ていれば済むというような認識が非常に強い。例えば、文部省の推薦の絵だから価値もあって良い物。そういう判断ではなく、自分の目で「これは良いものだ。私はこれが好きだ」というような判断をする。これは今後とても大事なことですね。
 インターネットというのは何でもありなのです。社会にあるもの何でもあると思ってよい。そのなかで何を自分が選び、何を捨てるかという、これがまたその人の生き方みたいになってくる。それが一番大事なところではないか。そういうことに一所懸命努力していかないと、よい情報が得られない。
大橋
 きわめて重要な点ですね。これからは利用者に責任があるということですね。

【情報の管理と提供】

石川
 情報の管理と提供の方へ話の内容がシフトしてきました。情報を得るための教育ということも必要であるということで、今、マスコミというものはどういうものですか。
高橋
 マスコミというのは、大衆に一方的に伝達をします。そのなかには誤った報道も正しい報道もいろいろあるわけで、それによってわれわれ医師側が泣かされる例もたくさんありました。送り手の方が優位で、送り手側の都合のよい部分だけが増幅して報道され、少数派は虐げられるというような結果にもなります。
 しかし、最近は受け手側もいろいろ吟味をして、「これはちょっとおかしいぞ」と考えるし、反対の意見も報道されるようになっています。誤った報道に対しては、きちっとした形で反論、抗議をしないと、報道事実のみが歴史に残ってしまいます。日母としても今まで誤ったマスコミ報道に対し、いろいろな形で抗議をしてきましたが、今後もその点が重要であると思います。最近は、インターネットの普及によって、抗議の仕方にも革新的なことが起きています。例えば、東芝事件のようなことが広がると、企業に限らず、国・団体でもいいかげんな対応はできなくなります。マスコミ関係者でなくても非常に安価にできるということがインターネットの特徴だと思います。
 また、インターネットを介してマスコミを利用する人たちも出てきます。実際、医療機関、患者側がそれぞれホームページを持っています。今後、ますますインターネットは自由にPR、または攻撃しあう状況を作っていくでしょう。こういう面での日母の対外広報も『日母医報』だけでなく、「日母のホームページ」を通じてもどんどん対応していかなければならないと思っています。
 マスメディアに注意を払わなければならないのは、それの巨大化、独占化です。新聞社、出版社、放送社、電信・電話会社、コンビニを統括している大企業に情報が独占されてしまうような動きがあります。それに踊らされるようになってしまう。一番危険なことは、集まった情報、特に個人情報がみなある一定の人に握られてしまうことだと思います。

【情報の質と量】

石川
 「情報の質と量」ということがテーマになってきているようです。また、情報は多ければよいのであろうか? というお話もありましたが。
鈴木
 どんな人でも簡単に情報を発することができるようになった。玉石混淆のガセネタもあるかもしれませんし、間違っている情報を一所懸命出しているサイトもある。また、意識的にある特定の思想とか考え方、また悪意に満ちた中傷とか、そういうものを流すことも、いとも簡単にできる時代になった。そういう意味では見る人がそれをいかに判断するかということが求められている。
 産婦人科の分野でも、お産の評判などについて、インターネット上でホットに書かれています。一般の方々が見ても本当かどうかの判定ができないのが実情ではないか、それを疑っている人も相当多いのではないかとも思います。昨年問題になった育児文化研究所もホームページ上で、医者に頼らない分娩というのを訴えていた。これからはセレクトするということが非常に大事ではないかなと思います。
 日母としては一般の人向けのホームページをもう一寸充実させて、われわれの考えていることを十分そのホームページを通じてPRしていくということが非常に大事だろうと思います。
 会員の皆さんへは、『日母医報』は印刷物にして1カ月に1回、活字で読むことについては非常に意味があることですが、迅速性には欠けるわけですから、ホームページやメーリングリスト(MailingList:電子メールを利用した特定者間の会議)を介しての迅速な情報提供を行うという、二段構えというのが必要と思います。
石川
 今の話にも出てきましたけれども、いったい情報というのは何なのか、誰のものなのか。
加藤
 これは大変難しい問題ですね。今後、どのように変わっていくかは分かりませんが、現在のところでは、例えば日母がこういう団体であれば日母の物、所有権は日母にあるものと思います。この会が会員の利益団体である以上、利益を生まないようなことは当然避けるべきことでしょう。情報をただ何でもオープンにすれば皆が分かってくれるというものではないと思っています。
 断片的になることもあると思いますが、ある情報を解説しながら、日母という会をよく理解してもらうような形で発信しないと誤解を招く。
 個人的には、公開すべき事柄は公開すべきだと思っています。ただそれが誤解されないような形、会としての利益を守るためにはそういうことを常に考えながら、いやな意味でなく情報操作をやっていかないといけないと思いますね。
 結局、良い方向で情報を公開し、操作していくということが必要だと思う。そして情報操作が作為に満ちたものであるかどうかをチェックするためには、やはりその会を構成している会員が常にチェックする。これからは、会員へは全て生の情報を公開するような形でいかないといけないと思う。その意味で、日母の情報は日母が大事に守り、それを誤解のないように発信していくということが必要だと思います。
石川
 迅速性とか出ましたが、タイミング、伝達の方法、何を使ったらよいのか、深く浸透させるにはどうしたらよいのか。
大橋
『日母医報』は当分なくならないと思います。メーリングリストやホームページが多くの会員の先生たちに活用されても、紙は残るし、また残すべきだと思っています。というのも、『日母医報』は要点をサマライズしてパッと一目で見られるというメリットが非常に大きいものだからです。ただ、先ほど来出ているように、これからは電子メディアと紙メディアを上手に両方使っていく時代だろうと思います。
 ホームページは、原則一般社会に対してはオープンであるべきで、何で日母がホームページを公開するかという目的ですが、一つには社会への利便性、このホームページを見ればいろいろな医療に関する正しい情報が得られるというものを与えなければいけない。同時に、われわれの主張を正しく社会に伝えるように使わなければいけない。『日母医報』などと違ってホームページでは、公開する情報の量が事実上無制限に等しく出せます。
 一方、電子メールは、ホームページと異なり、決まったグループの中で対話的な情報交換に有効なシステムです。FAXもそうですが、お互いに好きな時間にやり取りできる。結果的にはスピーディーに情報交換ができるということになるわけです。
 また、過去のメールを全部ストックしておくと、後日、検索システムを利用すれば簡単にキーワードで探せます。そういうメールの再利用というのも一番おいしい利用法です。
 メーリングリストのようなものは、中央として各支部の情報を吸い上げるというメリットが非常に有用です。いろいろと会員の先生方と話をしている中で、今、会員はどういうことを考え、どういうことに対応していかなければならないのか、そういうものを吸い上げるにはとても有効な媒体ですので、中央としてはそういうような扱い方をしなければならないと思っています。
 伝達のタイミングですが、電子メールを使いますと相手と時間を必ずしも同期させる必要がなく、多忙な人ほど効率的に作業ができると思います。
 使用効果については、広報活動には事業予算の中でも一番大きな予算を取っているところが多いと思います。印刷代とか郵送料が非常に高いので、一寸したものを全体に配布しようと思っても費用が莫大に掛かる。
 しかし、インターネットという手段を用いれば、比較にならないほど低コスト・低労力で、マスメディアを使うよりも大きな効果を上げることが可能になってきたわけです。こういうものが出たからこそ、今までマスコミにいろいろ言われっぱなしだった医療側としては、これをフルに利用して、われわれの立場を一般社会に理解してもらうことが必要なことだと思っています。
石川
 最後に述べられたようなことも、インターネットのメリットとしてクローズアップされるものだということですね。基本的な情報の管理と提供、その現状と将来の展望ということも話されたのですが、トピックスの部分ではないかなと思います。

【どのような情報を望んでいるのか】_

長池
 今、医療に関して言えば、自分の罹っている病気がどのようなものなのか、そういう情報をどのように探すのか。その原因・治療法、新しい治療法はどのようなものがあるのか。どの病院に自分は行ったらよいのか。情報として非常に知りたいところだと思いますね。今までは、そのほとんどが周りの評判、この頃はミニコミ雑誌がかなり出て、地方版ではここの病院が良い、ここの病院は駄目だとか、評価しています。受診する側は、本当の病院の情報を欲しいと思っている。
 他方、病院の情報としては、自院のホームページを載せたりしていますが、その逆の立場で医療事故、例えば「医者にメス」等初めて見たときには驚きました。患者側はそのような情報をも知りたいのだろうなと。では、私自身がどういう情報を欲しいかとなると、情報が溢れていますので、自分が欲しい情報をどうやって探せばよいかという情報検索の情報が欲しいということですね。
大橋
 もう一つ、患者側が欲しがっているのは、主治医の説明を聞き、自分が選択を迫られる、そこで迷う。そういうときによく電子メールで聞いてくる人が多い。「如何したらよいでしょうか」と。
稲葉
 開業医あるいは大学などから離れて独立している先生方、その先生方の立場から言うと、情報から隔絶されてしまって自分が言っていることと、やっていることがスタンダードなのかどうかということに疑問を感じるときがある。私もそんなときがありましたが、そのときに実はインターネットに繋いで、国内では国立がんセンターのホームページを基に患者さんに説明する。一般的なスタンダードがこうで、自分の所では何ができて、その成績はこれと比べてどうでという説明がとてもしやすかった。これほどよくまとまっている、しっかりしたものというのを見つけることができなかった。
 先ほど来、情報の整理が必要だということが出ましたが、僕の欲しいと思っているのは最先端の知識ではなくていいから、現状では何がスタンダードなのか、過去のものから最先端まで含めて、ある程度取捨選択されたものでもよいから、日母としてはこういう治療法をリコメンドするような、情報提供を日母側から出したらどうかというようなことを考えています。
 一般人としてどういうデータが欲しいのか、患者やレジデントの先生方がどんなことを知りたいか、ある程度スタンダード、日母としてこれをリコメンドするようなものを出す。最先端のものを出す必要があるかどうかは別として、そういう整理した出し方をしたら、非常に役に立つ情報提供になるのではないかということでした。
石川
 なるほど、非常に面白い話ですね。患者さんが求める情報は、確かにわれわれも日常診療の中で日々発生するものですね。例えばここ十年間に研修ノートが二十八冊位出ているのですが、ウイルス感染の妊婦さんがいますと、書棚に行って資料を開くわけです。稲葉先生が話されたように、例えば研修委員会と組んでボタンをポンと押し、開けるようにしておけば、本当に会員や患者のための情報としてはよいと思いますね。
稲葉
 例えば陣痛促進剤の使い方のスタンダードがこうだということをホームページ上に出してしまった方が、逆に言えば、それはそのように使った方がアドバンテージは大きいということを主張すればよいわけです。インターネットに載せて、一般向けの説明として、メリット・デメリットはこうであるという、それこそマスメディアで叩かれてもこちら側の主張が通りやすいのではないかと。

【どういう部分が解決されればよいのか】

加藤
 早急に解決しなければならないことと、10年先といった長期的に解決しなければならないことを区別していかなければならないと考えています。インターネット技術の進歩というのがどういうふうに進歩するのか、誰も見当がつかないような状態になってきている。例えばiモードは1年も経たないうちに100万台も売れてしまった。何かアイデア商品が出ること、それが沢山出ることによって基盤を作り、新しい方法論になっていくというようなことがある。今、日母に関しては常々、情報処理検討委員会では話し合われていることですが、まず本部―支部間を少なくとも有機的に結ばなければいけない。
 この間も一寸話題になったのですが、会員の移動について十分に把握していない。誰がつかんでいるのか。本部は明確につかむことが難しい。支部がやっている。支部のデータが本部に集結しているかというと必ずしも上手くいっていない。
 例えば、愛知県の人が静岡へ行って、静岡ならまだよいですが、秋田へ行ってしまう。そうすると、その人は宙に浮いてしまう。この会は会員によって成り立っているのですから、一番大事なのは会員の把握ですよね。そういうことに真っ先に取り組んで、まず本部―支部間を有機的に繋ぐ。つまり、本部に来ればどんな情報もあるのだという状態でないと。これだけ通信が発達したのですから。それが済んだ後で会員と本部の結び付きを広げていかないといけないのでは。キーボードが嫌いだからなどということは、あんまり大きな声では言えないような時代になってきている。
石川
 キーボードをよく叩いている宮崎先生、インターネットにはどういう声が寄せられているのでしょう。
宮崎
 常に、日母のメーリングリストではなくホームページに、実際に寄せられたものを紹介します。出産や妊娠中の薬の服用、あるいはピルのこと、子宮内膜症のこと、それから性感染症ですとか、人工妊娠中絶の問題、果ては内科のドクターの奥さんが診療所へ入院したときの診療領収書が混合診療ではないかと。様々な質問が寄せられています。
 これらの質問に関しては、委員の先生方にお願いをして、それに対する回答をしてもらっています。大橋先生がお話しになったように、一寸質問を他の人に聞いてみたい、主治医以外の先生がどういうふうな答え方をするのか、自分に行われている治療方法が間違いではないのかというのを確認したいというものが多い。
 メーリングリストの中の問題になりますと、当初は接続方法、機種選択方法というものが多かったのですが、最近は乳がん検診・鉗子か吸引か、今後の展望はといった会話が比較的多く話されています。堅苦しい話以外にも、日常、例えば休みのときにはどんな過ごし方をしているか、というような話で和やかにしてもらっているというようなところもあります。
 ただ問題なのは、ブロックや支部によって多少異なるもの、例えば社会保険・母子保健の問題に関しては、直接支部の先生方に質問していただければ最も早く解決することができるのですが、異なった地域の対応方法を正しいとしてしまうのには問題があります。個人的に間違っていた解釈をメーリングリストの中に残し、その対応は個人のメールで解決を図るといったこともあります。それらをどういうふうに解決していったらよいのか、まだできてない部分なのかもしれません。前述の問題は、支部内やブロック内にメーリングリストを設置してもらったり、メーリングリストに参加してくださっている先生方に、その技術を支部内で生かしていただければ解決できる。公に対する失言を個人的に訂正するのは、モラルの問題であると思っています。
長池
 ホームページに寄せられた意見というのは、僕らはあまり見ることができないので驚きましたが、メーリングリストの方は皆さんもお繋ぎになって、ご覧になっていらっしゃる方がほとんどだと思います。
 「あ、こういうのにも使えるな」と思ったのは、「夫の転勤で患者が里帰り、そちらの良い病院を紹介してくれませんか」というのがありました。大橋先生が日母のメーリングリストは、何でもありだからとおっしゃるので、そういう意味でこんな情報交換ができるとよいなと思っています。僕はほとんどリードオンリーメンバーで発信はしないのですが。
石川
 メーリングリストを見ていて、自分が参考になるかなというのがありますか。
長池
 参考にはなりますね。「これをやろうと思っていたけど、皆やってるんだな。僕もやらなくちゃ」という気分になるものが多いですね。
石川
 趣味の段階を乗り越えなきゃいけない。
長池
 趣味で見ているのはもう飽きました(笑)。
大橋
 クローズドのメーリングリストですから、発言しても安心感があるし、そうガセネタというのはないですね。まあ一寸勘違いとか、いろいろなことはありますけど、その人が責任もって、誰が発信しているかも分かってしまうし、そういう意味では中での発言は、まあそれなりの意味付けがあるのだと思います。
加藤
 メーリングリストの中で、例えば乳がんの話、「乳がん検診はオペもやらない人がやるというのはけしからん」というような話が出た。いろいろな意見が出てきて、そういう極端な意見というのが薄められていくというのが、まあ非常に極端な意見がバーッと出ると気持ちのよいような気がするんですが、現実にはそうではなくて、「子宮がんのオペをやらなかったら子宮がん検診をやらないのかね」などというような、そういう話まで出てきましてね、沢山の人が見てるということは、良いところへまとまっていくんだなあと感じました。
大橋
 そういうメリットはありますね。過激な方が、いろいろ皆さんと対話をしていくうちに段々角が丸くなっていく(笑)。逆に言うと、平均化されてしまうといったデメリットもあるのかもしれません。ただ、よく理解されなくて何か過激なことをおっしゃっていた方が段々理解をしてきたなというようなメリットは大きいと感じます。
鈴木
 急流に揉まれると、ごつい岩がだんだん丸くなっていくというね(笑)。
宮崎
 お陰さまでメーリングリストの中で、これは一寸会員の方に知っておいてもらいたいというようなことを、広報で掲載させていただくと、今度はメーリングリストに入りたいと希望される方もおられる。そのへんの結び付きがとても大事ではないかと思いました。
鈴木
 紙の『日母医報』にサマライズしたものを載せることは、両方の使い分けでよいと思います。
石川
 これはどんどんやっていきたいなと、広報部でもそういう意見が出ておりましてね。
加藤
 先ほども出てきましたが、紙がいいか、電子媒体がいいかという二者択一の問題。例えばTVが出てきたらラジオも新聞もいらないなんて、そういうことを言う時代がありました。その当時は本当にそういうふうに思っていた人が沢山いた。今、すみ分けをして、それぞれの良いところが残っているわけですね。この間もバスのハイジャックがあったときに、次の日、新聞が休みで夕方新聞が来て、「あれっ、今頃こんなことが載っている」という感じがしたんですよ。新聞はTVと同じようなことを書いていたのでは意味がないわけです。つまり新聞はサマライズしたような、全体をまとめたようなことを書かないと、誰も読まない。もう知っているわけですから。

【今後の医報について】

石川
 『日母医報』はこのままでよいのかという命題、これは大橋先生が委員のときから常にテーマになっていた。少しずつは脱皮しながら今日に至っていると思うのですが。
石井
 『日母医報』の良い点は、開業していらっしゃる先生で、分娩を年間千五百位取り扱ってとても忙しくしている。その先生が学術欄だけ綴じているのを見まして、絶えず勉強されていると感心させられます。
加藤
 両方上手く使えば、『日母医報』のタイトルをホームページに出して、そこから検索してもらう、上手に使い分けることができると思うのですが。
石井
 勿論ホームページがもっと充実すれば、『日母医報』をその半分にしたってよい。加藤先生がお話しくださったように、新しいものをどんどん出していく必要性はあると思います。
加藤
 逆に、新しいものを上手く噛み砕いて出していくのも『日母医報』の役目だと思いますね。
高橋
 『日母医報』としての刊行物はこのままであるべきだし、記録として残すにはこういう形が続いていかないといけないと思います。
 ホームページにある程度比重を移して、記事のデータの検索という部分はインターネットの方が楽です。ある程度検索可能なものをホームページ上に搭載する。記事などもホームページにどんどん移していってよいと思います。
 学術欄、先ほど稲葉先生が話された医療医家向けのものは『日母医報』として学術欄があるわけで、それをどんどんデータとして出していく、そこに分かりやすく辿り着けるようにしてあげれば、先生の言う部分はでき上がるのでは。
大橋
 すみ分けを念頭に『日母医報』を作っていかなければと思いますね。
石川
 広報・情報処理検討委員会の良いところ、そこがクロスの場所ということですね。年に1回位こういう会合を持つのがよいかと思いますが。
大橋
 いや、メールでもできますね(笑)。
石川
 忙しい診療をしていて、『日母医報』というのはどのように使われているのか、新入医局員などはどういうふうに使っているのか。
稲葉
 大学にいたときは申し訳ないのですが、まだ医者になりたてで、『日母医報』は知っていたのですが、実はほとんど読んでおりませんでした。利用方法は学術欄を全部パックして残しておきました。その他はそのまま読みもしないで通過しておりました。今の若い先生方にも、学術欄位は取っておきなさいと言っています。
 茨城県で県母の手伝いをいろいろしましたが、その頃初めてこういうものを大事にしないといけないということに気が付きまして(笑)、それ以来、一応全体を見るようになりました。
 やはり若い先生方に読んでもらえる内容かというと、これは申し訳ないのですが、たぶんその必要を感じていないのではと思います。ですから、学術欄を拡張して、そういう部分に引き付けるという考え方が一つあるのかもしれません。
 人事や社会情勢などに関して、全ての年齢層に通用するような感じはあまりしません。社会情勢とか、日母としての見解など、少しその辺を機能的に分化させてもよいのではと考えます。
石川
 『日母医報』では、以前から若い先生方もターゲットにしようとして、いろいろ拾い上げてきているのですが、本質的に、『日母医報』というのは日母という組織の機関誌であるし、一つは官報としての性格、ある程度会員への伝達ということもやらなければならない。活動状況も載せなければならないし、厚生省の動きもキャッチしなければならない。ということで、何でもありということで20ページに詰め込んでいるのですが。
秋山
 なかなか難しいですね。『日母医報』は存続すると思います。ただ、情報をコンパクトにしているところが良い点と、逆にコンパクトに載せざるを得ないために捨てなくてはならない部分があります。ですから、その辺の情報を区分けしていく。ホームページなどの違った形での発表の場というところへ活用していく必要があると思います。
 当然、機関誌ですから、理事会の記事なども載せなくてはいけない、できればもう一寸内容を広く、いろいろな人に分かるような形で、他の場所にも出していく必要があるという気がします。
 ただ、『日母医報』というのは、何気なくパラパラ見られるという、そういう点が良いところだと思いますね。私も保険などで昔の『日母医報』を取り出しては参考にしているのですが、そのときにパラパラとほかの記事も見てしまうわけで、それがまた面白い。少なくとも今ある電子媒体にはそういったパラパラという感じはなかなかできない。恐らく電子媒体とはもっと上手くコンタクトできるようになると思いますが、『日母医報』は多少なりとも形態が変わっていっても、このまま続けていかなくてはならないものと思っています。
鈴木
 ホームページは、今後は相当オープン化して、『日母医報』に載った内容はある程度インターネット上にも載せていくという『公開の原則』でやっていくべきですし、印刷物に保存するものは保存するという使い分けをすべきです。
 会員の方々にしてみると、便利な方へ収斂していくだろうと思いますね。ある程度お年の方は印刷物も大事だけれど、若い方だと今の検索機能からいって、電子媒体でよいと思っている人が多いのではないかと思います。二本立てでいって、あとは会員が選択をして、流れは決まっていくのではないでしょうか。
石川
 今、若い世代と言われたけれど、それは世代というのではなく、頭が固いか応用性があるかということでしょうか(笑)。
鈴木
 65歳で大学を定年退職してから息子さんのパソコンを譲り受けて、インターネットに繋いで、メールをやりだした先生も身近にいます。65歳以上の方も、確かメーリングリストの会員の先生におられる。パソコンを上手くセッティングしてもらえば、インターネットにとにかく繋がる、これで世界に繋がっているよという所まで誰かにやってもらえば、あとは道具の一つとして使いだせる。キーボードにはアレルギーのない先生は多いはずです。

【日母はどうこの課題に取り組んでいくか】

大橋
 ホームページに関しては、一般社会にとって身近な情報を提供すべきであろうと。それを利用していただくことによって日母が信頼できて、便利だと思ってもらえることが医療の信頼回復へのまず重要な第一歩ではないかと考えております。
 日母として一般社会の人の理解を得るためには、さりげなく正しい姿を伝えることは非常に大事なことだと思います。一つのテクニックとしては、一般社会向けのページの中に、例えば子宮収縮剤などの問題を載せることも必要ですが、一般の人は、そういうつもりで載せているのだと作為を感じる場合もあると思います。それとは別に、あくまでも日母会員専用のページと謳っておいて、それを一般社会の人にも自由に見られるようにしておく。そのなかで内部的な会話なりを入れて、子宮収縮剤を使って助かったこと、一所懸命やっていてもなかなか上手くいかないことがあるとか。そういうわれわれの生の声を上手に載せていく。会員専用のページを覗き見るというのも一般社会にとっては非常に快感でもあります。そういうテクニックを上手く使っていく方法もあると思っています。
 電子メールの活用ですが、忙しい人ほど電子メールのようなもので時間を細切れに使うというメリットが非常に大きいと思います。これを広く使えば使うほど、経費削減の効果が非常に大きいということ。もうこれがないと情報戦争に生き残れないということだと思います。
 そういう状況を受けて、日母がこれから何をしなければいけないかということで、怒られるかもしれませんが、全ての常務理事会メンバーの先生方に電子メールで連絡をとれるようにすることが急務だと思います。そうでないと、経費削減、情報効率のアップというものが出てきません。東母では、常務理事会専用のメーリングリストを作って、早速今期からそれを始めようと思っています。また、これを徐々に委員会レベル、あるいは支部とか、そういう段階にまで広げていきたいと考えています。
 『日母医報』とホームページや電子メールとを組み合わせた上手なすみ分けを考えていく。『日母医報』自体は従来、松浦先生の時代から守られてきた「コンパクトに」ということは絶対に踏襲すべきです。例えば『日母医報』の中には簡単な3行ぐらいの説明をして、そこにホームページのどこそこに書いてある、そっちを見れば全文が分かるとか。逆に医報の何月号のどこにあったか分からないとき、ホームページを探せば、何月号の何ページというのが出ていますから、それで医報を見るとか。上手なすみ分けを行っていく。
 先ほど出た、会員の求めるものをキャッチする受容体、あるいは何が必要な情報であるかを見極めるのは、むしろメーリングリストが適していると思います。
秋山
 近未来的には、大橋先生の言われた所に落ち着くと思いますが、ただ電子メールでのやり取りは顔が見えない。ニュアンスが電子メールでは届かない。将来的に光ファイバーが行き渡れば双方向性の電子会議が直にできるようになるのではないかと思うのですが、場合によっては、それをそのまま一般会員にも見られるようにして流してしまう。
大橋
 今の補足ですが、相手の顔を見て話をしない電子メールでのディスカッションでは、心の底で納得してない面があります。あくまでも電子メールはお膳立てです。会議の前に問題点をなるべく出してしまって、そこである程度下打合せをしてしまう。皆さんと顔を合わせて意思決定をする。それが上手な使い方だと思います。
石川
 活字の文化というものを、日本人が捨てられない。そんな気がしています。書くのは万年筆であって、キーボードではない。叩いていくと言葉は下手になる。最後に総括ということになりますが、これは松井常務理事の方からお願いしたいと思います。
松井
 大変貴重なお話をいただきました。「日母組織としての医報の役割」というのがあります。そこには従来の紙媒体と電子媒体が共存していかなければならない。『日母医報』が電子メディアを取り入れていかなければいけない。検索能力は電子メディアの方があるということからすると、『日母医報』がホームページに出て、必要な記事をどんどん検索できるということでなければいけないし、また『日母医報』そのものが根本的には読まれなければ何もならないわけです。
 開封率が、学会誌に比べて非常に良いとは言われていますが、3年に1度程度行っているアンケート調査でも、返事はおよそ一割程度です。調査を基によく読まれるものにするために、電子メディアと上手く連携をとっていくべきです。また、今年から日産婦学会でも演題募集をインターネットで行うというようなこともありまして、活字は段々世代交代していくことを肌で感じています。
 相違点というのは、『日母医報』は送られてくるものを見るわけですね。電子メディアというのは能動的で、例えばスイッチを入れなかったら全然読めない。そこが決定的な違いで、それをいかに普及させるか。これが『日母医報』をいかに読ませるかというのと同じような難しさがあるのではと思います。機械の売れ行きは30%だけど、実際にそれを使っている人は低いのではないかという調査結果もあります。それが使いこなせている人がどの位いるのかということが、これからの大きな問題ではないかとも思っています。
 『日母医報』の役割というのは、会員が倫理をも含めて、資質の向上を図るためのものとして重要なものであるということです。また、会員の利益になるような役割を果たさなければならないものだと思います。あらゆる情報を流すには、とても20ページでは足りません。必要なもので、必読のものでなければいけないものと考えています。学術欄はタイトルにしても内容にしても、日母の主旨あるいは厚生省の意見も踏まえて書いてもらっている。これが学会誌に出ている論文との違いだと思います。
 メーリングリストの加入者がどの位になったら『日母医報』がいらなくなるということが、今回話題になると思っていました。しかし、一貫して『日母医報』は続くとおっしゃられたので安心しているのです。今度は具体的に、『日母医報』のこういう所はこうしたほうがよいとか、こういう所はもうやめよう、例えば理事会などの会議録は項目だけ掲載して、残りの内容はホームページで流し、もっと違う内容を20ページで掲載するのも一方法です。
 将来、項目とか検索というのは、電子メディアの使用もできるし、あるいは『日母医報』が届いたときに、「あ、これはスイッチを入れて見よう」というようなことができるのではないかというふうに思います。今回は総論、次回は各論を情報処理検討委員会からいろいろ知恵を拝借して、『日母医報』というものを変えていくことができればと思います。
佐藤
 各先生方がお話しになったことで要約はされていますが、情報処理検討委員会としては、やはり将来の技術的な発達、発展ということを見つめながら、現在をどのように充実させていくかということに取り組んでいかなければならないと思っています。
 充実させるという問題、それは会員のための利益になる内容の充実。現在、研修ノートも電子媒体でいろいろ用意されていただいている状態で、それをどこまで公開してよいかということに関してまだ問題がある。今、資料は収集しているところです。
 それに加えて患者さん方の教育、あるいは正しい医学・医療的知識を理解してもらう。覗き見するような魅力によって医療を正しく理解してもらったりする使い方、医療のメリット・デメリットの両面も患者さんに知ってもらうといった内容の充実と二種類をどのように行っていくか非常に重要な問題だと思っています。
 ただ、資料の収集と、それをホームページに掲載するということになりますと、情報処理検討委員会だけの力ではとてもできる問題ではありません。各委員会の協力によって、それを電子メールなどの電子媒体を利用していただき入れてくださることによって、取り込めるということになるわけです。紙で書いたもの全部を担当の事務の方に打っていただくなどというのは、大変な労力ですから、最初の資料は皆さんの委員会でいただきながら、内容を充実させる。そして検索をかけて各会員が日常診療に役立つような資料を充実させていく。
 電子メールもやはりどんどん活用させていかなければなりません。今、メーリングリストの登録人数はまだ530人位です。全会員からすればほんの一部であると。一方、ホームページのアクセス件数は8万を超えております。世間では電子媒体が進歩していますが、まだ会員ではその程度と感じています。
 それから、本部、支部の連絡・活用、本部、支部、会員といった、例えば基本的な会員の把握、こういうものの把握ということも、これからは重要になっていくのではないかと思います。ホームページの利用法の一つとしては、各科への入局を希望している医学生たちに、産婦人科医になるための宣伝、医局の紹介とか、新しい会員の獲得ということにも利用しています。このように、現在、情報処理検討委員会としては、各委員会との連携による内容の充実を進めていきたいと思っております。
石川
 今後、『日母医報』と情報処理検討委員会がどういう方向で何をやっていくかというのが、かなり見えてきたような今日の合同座談会になったと思います。どうもありがとうございました。