【HBs抗原陽性の患者さんのために】

 

 先日の血液検査により、あなたはB型肝炎ウイルスをもっているキャリアーであること(HBs抗原が陽性であること)が判りました。

Q1.B型肝炎とはどのような病気ですか?
 ウイルスという小さな病原体による病気です。新生児や乳幼児期に感染すると免疫の働きが未熟で弱いために、ウイルスをそのまま抱え込み、キャリアーとなり、血液や体液中に生き続けます。ほとんどの場合幼少時は何事も起こらずに経過しますが、大人になり免疫力が強まると肝炎が起こるのです。このようにして経過、発症した肝炎は高率に慢性化し、さらにそのうちの一部は肝硬変や肝癌に進行することもあります。

Q2.赤ちゃんにはどのようにして感染しますか?
 お産で赤ちゃんが産道を通過する時に(まれに妊娠中に子宮の中で)母親から感染する母子感染と、生後にウイルス陽性者の血液を介する感染の2通りがあります。

Q3.精密検査でHBe抗原陽性といわれましたが?
 B型肝炎ウイルスは、さらにHBe抗原陽性とHBe抗体陽性の2つのグループに分けられます。HBe抗原陽性の場合は感染力が強く、特に注意が必要です。一方、HBe抗体陽性の場合は感染力は比較的弱いとされています。

Q4.母子感染は予防できますか?
 母体がHBe抗原陽性の場合放置すればほぼ100%に母子感染が起こります。またHBe抗体陽性であっても約10%に母子感染が起こると言われています。但し、母乳を介しての感染はないと考えられています。

Q5.感染を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?
 赤ちゃんにはまずウイルスを殺す抗体を多量に含んだ薬(抗HBs人免疫グロブリン)を筋肉注射します。その後の乳児期にHBワクチンを接種し、自分で抗体を作るようにします。その投与方法を以下に示します。これにより約95%の場合でB型肝炎ウイルスの母子感染を防止できるようになりました。なお、これらの医療行為は健康保険適用になっています。

母親がHBe抗体陽性の場合( )内は省略する場合もあります。
また新生児、乳児の状態により接種時期が前後、省略することもあります。

Q6.夫に感染することがありますか?
 感染の危険性がありますのでHBワクチンで予防します。特にHBe抗原陽性の場合は大切です。HBe抗体陽性でも、まれに感染する場合があるので接種したほうが無難です。同居の家族についてはカミソリ、歯ブラシ、生理用品等をきちんと管理、処理すれば通常問題ありませんが、接種を希望される方、ご不明な点のある方は医師に相談してください。職場や学校などで感染することはまずありません。

 

社団法人 日本産婦人科医会