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出産後の患者ニーズより見た病診(診診)連携について
日母医療対策委員会委員 幡 研一
産科診療に関して病診(診診)連携を考えた場合、現時点では妊婦の紹介およびそれに対する返事で終わってしまっているのが現状である。
一方、現代の少子化・核家族化の社会にあっては出産後の母親は多くの悩みを持ちながら孤独で育児に当たっている状況である。
平成10 年に日母医療対策委員会が実施した、出産・育児についてのアンケート調査(対象:出産後約1年の育児中の母親)でも、母親は多くの悩みを訴えていた。詳細については、日母医報:医療と医業・特集号(平成11年1 月)および出産・育児についてのアンケート調査結果(平成11年3 月)に記載したが、当面、我々ができることと言えば以下のような事柄と思われる。
1.育児相談の充実(育児相談日の設置・電話相談・訪問看護)
2.母乳外来・母乳相談
3.離乳食について・断乳について
4.産後の母親の健診の充実(健診間隔の短縮・回数の増加)
5.心のケアを考えた対応(育児ノイローゼ・心の悩み相談室)
これらについては、自分の出産した医療機関で対応してもらえる場合は良いが、里帰り分娩や、妊婦健診と出産の施設が異なった場合には相談できる施設が少ないのではないかと考えられる。
そこで出産後の母親を紹介してきた施設に逆紹介して、出産後の母児のフォローをお願いすることは、里帰り等の母親にとっては心強いことであると考えられる。またこのことは産科における病診(診診)連携の絆をより深いものとするし、分娩を扱わず妊婦健診のみを行う診療所の活性化にもつながるものと思われる。さらに女性の生涯を通しての「かかりつけ医」として、私たち産婦人科医の役割でもあると思われる。
家坂委員長の実施したアンケート調査で、妊婦を送った医療機関が、「分娩した医療機関から乳児健診や母親の各種相談を依頼されたら受けるか?」との設問に60 〜80 %の施設が行うと回答しているのは頼もしい限りである。
そこで逆紹介のモデル「母と子の経過報告書」(紹介妊婦の返事)を考えてみた。
会員諸兄のご意見を頂ければ幸いである。
冒頭にも述べたように、母親たちは妊娠・分娩よりも、退院後(または1ヶ月健診後)多くの悩みを抱えながら、相談相手もなく育児に携わっている。また、仕事を持った女性では職場復帰後、仕事と育児の両立からくる多くのストレスを抱えている。一方、産婦人科診療側では、出産を終えた女性に対してのフォローが、従来どうしても希薄になりがちであったことは否めない。
有職女性の増加・核家族化等の時代の変化に伴う、患者ニーズに対して、きめ細やかな対応が我々産婦人科医に求められている。
そのためにも産後の女性への対応を考慮した病診(診診)連携のあり方を考えるべきである。