日産婦医会報(平成13年8月)

産科における患者サービスの実態調査結果(その2)

日母医療対策委員会委員長 可世木 成明


入院・分娩に関するサービス

各種の指導
 非常に力を入れているとの回答は、育児指導21.2%、母乳指導42.2%、産後の生活指導17.9%であった。施設群間の比較は診療所でやや低く、特に母乳指導に関して国公立・病院の約50%に対して診療所では31.3%であった。診療所の中でも10床以上の群に比して10床未満の群では力を入れているとの回答が少なかった。

食事:
 食事の選択は国公立29.2%、病院38.1%、診療所17.8%で実施している。いわゆるお祝い膳は国公立:29.9%、病院:50.5%、診療所:33.2%が行っている(家族と共には6.2%)。

記念品・おみやげ(業者が提供するもの以外)
 427施設(64.8%)が有り(国公立:29.2%、病院:68.6%、診療所:79.3%)であった。評判の良いものはベビーの写真、アルバムなどであった。

アメニティー(食事・お祝い膳・おみやげなど)について
 特に産婦人科単科の病院群はお祝い膳・おみやげ・マタニティビクス・ビデオテープの提供などアメニティーの実施率が他の群に比して有意に高かった。これらの実施率は有床診療所の中では10床以上の群が10床未満の群に比して高かった。

 アメニティーについての考え方をまとめると、積極的賛成:19.3%、消極的賛成:7.5%、反対:61.6%、機構上限界がある:30.2%となった。施設群別にみると、積極的賛成は国公立の11.9%、病院の21.3%、診療所の21.5%であった。反対するのは国公立の32.5%、病院の36.6%、診療所の53.0%であった。
 年齢群別にみると、30〜40代が積極的であり、年齢増加とともに反対が増える傾向が見られた。分娩数が増加している群では積極的46.0%:反対48.3%とほぼ同数であったが、減少している群では16.2%:70.6%と反対が多いという結果であった。

産科におけるサービスのあり方

 産科におけるサービスには「医療サービス」と「アメニティー」の2面があり、患者さんやマスコミにはともすれば「アメニティー」に話題が集まりやすい。こういった風潮には批判的な意見も多い。一般に有床診療所がアメニティーに積極的と思われがちであるが、実際は有床診療所の53%が批判的であった。また、分娩数が減少した施設あるいは分娩を取り扱わない施設では反対が多かった。全体的に見るとアメニティーに関しては批判的であり、本質的な医療のサービスを充実すべきとの意見が強いという結果であった。
 国公立病院など機構上アメニティーには力を注げない施設では、「アメニティーにも努力したいが残念ながらできない。医療サービスを充実したい」という意見が多く見られた。特に単科の病院ではアメニティーにも熱心で、「一生に数回の出産を楽しく快適な環境で思い出深いものに」などの意見が見られた。年齢的には若い開業したての医師に積極的な姿勢が見られ、高齢になるに従ってアメニティーに走ることへの批判が強いようである。「最近のお祝い膳だ、おみやげだという風潮は間違っている」、「本当の患者サービスとは食事やカーテンでなく、心のこもった医療と妊娠中から産褥にかけての母乳・育児を含めた指導を充実することだ」との意見も多かった。
 高度の医療を行う施設は別として、小規模病院・有床診療所としては「超音波など診断技術のレベルアップで妊婦の危険性を早く察知して対処すること、あらゆる指導を充実すること、見せかけの物品ではなく心のこもったケアをすること」が本当のサービスと考えて努力することが大切であろう。

まとめ
 産科サービスには「安全」(医療サービス)、「アメニティー」に加えて、「心のこもったケア−母と子の繋がり」があるという考えがある。多くの妊婦さんが、「安全」や「アメニティー」と同様に「母と子の繋がり」を求めているという。患者サービスに関する限り、病院内・診療所内の助産院に徹するべきという考え方もある。
 今後、周産期医療のネットワークとして、基幹病院・病院産科・有床診療所それぞれの特質を生かした診療体系が組まれるようになるであろうが、いずれの施設においても産科のサービスとして「医療サービス・アメニティー・心のこもったケア」の3要素を充実することが重要であろう。
(2回にわたって産科サービスの実態調査結果をまとめました。質問・ご意見を日母のMLを通じてお寄せください)