日産婦医会報(平成17年05月)産婦人科内視鏡学会技術認定医制度のあらましと医療経営
日本産科婦人科内視鏡学会幹事長・日本医科大学助教授 可世木 久幸
【はじめに】
日本産科婦人科内視鏡学会は2002年度より技術認定医制度を発足させました。この制度は日本産科婦人科学会下部組織の学会としては最初の認定医制度です。認定医制度を発足させた目的を一言で言えば、患者さんが安心して産婦人科内視鏡手術を受けていただけるような医療環境の作成となります。つまり、最初に産婦人科内視鏡手術事故の防止策として、一定以上の技術水準を持っている医師を技術認定医として認定します。続いて技術認定医は後進の育成を図り、後進医師が更に技術認定医取得を目指し、内視鏡手術の技術水準の一定化を図ろうというグランドデザインを設定しました。ところで、単に『認定医』という言葉でくくった場合には産科婦人科内視鏡学会は各医師の何を認
定したのかが不明確です。そこで、学会は各医師の産婦人科内視鏡手術技術を認定すると定め、その理念を分かりやすく表現するために『技術認定医』という言葉を採用しました。【技術認定制度の現状】
学会では『日本産科婦人科内視鏡学会技術認定制度は、産婦人科領域における内視鏡下手術に携わる医師の技術と知識を評価し、内視鏡下手術を安全かつ円滑に施行する者を認定し、本邦産婦人科領域における内視鏡下手術の発展と普及を促し、さらには国民の健康維持に寄与することを目的とする。』と定めました。2002年度に制度が発足し2003年度から認定審査が施行され、2003、2004年の2年間で145名の日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医が誕生しました。日本産科婦人科内視鏡学会の会員数は2004年9月現在1,499人ですので全会員の9.7%が学会認定技術認定医となっています。審査方法は書類審査とビデオ審査の2本立てとなっており、ビデオ審査は申請者自身が行った産婦人科内視鏡手術を記録したビデオテープを用いて審査を行います。審査法の詳細は学会のホームページを参照してください。続いて、技術認定医制度について産婦人科臨床医の先生からよく受ける質問に対してQandAという形式で答えます。
Q1.技術認定医と非認定医が手術を行った場合に診療報酬点数に違いがあるのでしょうか?
A1.現在のところ特に差異はありません。
Q2.起こってはならないことですが内視鏡手術の場合、術中に想定以外の出来事(アクシデント)が起きる可能性があります。もしも、技術認定医がアクシデントを起こした場合、学会が救済処置を発動してくれるのでしょうか?
A2.現在、学会では認定医調査・普及委員会を立ち上げたところです。現時点では明確なことを申し上げる段階ではございませんが、委員会の名称から考えると将来的には救済処置発動も視野に入ってくる可能性があるのではないかと考えています。
Q3.技術認定医になるメリットはあるのでしょうか?
A3.学会のホームページでは技術認定医の氏名・所属先およびリンクできるホームページが載っています。つまり、患者さんが学会ホームページをご覧になった場合に、自分の気に入る病院を選ぶことができるシステムになっています。このページを立ち上げてから、患者さんから学会への内視鏡手術を行っている施設の紹介依頼に関する電話が確実に少なくなりました。それはとりもなおさず、患者さん自身が学会の認定医ホームページをチェックして、自分が手術を受ける施設を選んでいるのではないかと思われます。現在は患者さん自身が医師を選ぶスタイルが静かに確立されつつある時代であるといえましょう。産婦人科内視鏡手術に関して患者さんに選ばれる医師になり得るというで、産科婦人科内視鏡学会技術認定医制度は今後の医療経営に大きく貢献すると思われます。
【医療対策部より】
昨今、内視鏡下手術に対する医療事故・過誤が社会問題となり、各科の内視鏡学会が認定医制度を検討しています。これに先立ち日産婦内視鏡学会の認定医制度は2003年より始まり3年目を迎えました。この認定医制度について、医会会員に広報すべく可世木久幸先生に日産婦内視鏡学会幹事長の立場で現況を解説していただきました。