日産婦医会報(平成17年06月)

定点モニター制度とは

日本産婦人科医会医療対策委員会委員 小笠原 敏浩


はじめに

 定点モニター制度は会員の意見を本会事業に生かすために昭和56年(1981年)に発足し、現在、医療対策委員会をはじめいくつかの委員会でこの制度を利用してさまざまな調査を行っております。定点モニターは医療対策委員会で管理しており、今年度は第13次定点モニター制度で各種調査を行う予定です。

定点モニター制度の歴史

 会員の意見を本会事業に生かすため、従来任意抽出による種々のアンケート調査を行っていましたが、この方式は回収率が必ずしも十分でなく、その内容も十分に満足できるものではありませんでした。その欠点を補い会員の本会への意見を反映し、本会より会員の意識および実態調査を効果的に行うため、昭和56年に当時の福祉部が、支部長推薦による会員を定点モニターとして委嘱しました。
 定点モニター依頼施設は、公的病院250人、私的病院250人、私的診療所500人、合計1,000人。委嘱期間は、昭和56年9月1日から、昭和58年3月31日の1年6カ月間でした。本制度は福祉部が立案しましたが、今後の利用は福祉部に限らず各部で適宜に行うものとされています(医報昭和56年10月1日号参照)。

定点モニター会員の概要

 定点モニター会員はA、B、Cに種別されています。A会員は公的病院(国、都道府県、市町村、日赤、済生会等の公的な性格を有する病院)、B会員は私的病院(A会員以外の病院)、C会員は診療所(A、B会員以外の診療施設)です。現在も公的病院250施設、私的病院250施設、私的診療所500施設の会員に依頼しており、依頼期間は2年間として各支部の推薦により以下の基準を満たす会員にお願いしています。1)正確な内容を記載して下さる方、2)調査期間内にご回答いただける方、3)少なくても2年以上現在の施設に従事されている方、4)現在会員であり、会費を2年以上未納されていない方で、前回のモニターも推薦可能ですが、可能な限り新しい方を念頭に置くことにしています。定点モニター会員には、本会の各種実態調査や意識調査などに協力いただき、回収率の高い回答を短期間で集計分析し、速やかに本会事業に反映、活用します。

定点モニター制度による最近の調査

 これまでさまざまな調査が行われてきましたが、16年度は、医療対策委員会の事業「産婦人科を取り巻く諸問題に関するアンケート調査」、「医会会員における情報技術(IT)と医療情報データベースの活用状況に関するアンケート調査」、「病診連携における満足度調査」、「妊娠女性におけるDV の実態と産後のメンタルヘルスや育児に及ぼす影響に関するアンケート調査」、14年度は「周産期救急医療の病診連携に関する調査」(医療対策委員会)、「妊産婦の家庭内暴力についてのアンケート調査」(医療対策部)、「妊婦におけるHIV 抗体検査」(厚生労働省HIV 社会疫学研究班)、13年度は「わが国における妊産婦の喫煙・飲酒等に関する調査」(国立公衆衛生院)、「HIV 感染状況に関する調査」(厚生労働省HIV 社会疫学研究班)、「分娩の安全性に関するアンケート」(母子保健部)、12年度は「産科医療における(セミ)オープンシステムは可能かのアンケート調査」(女性保健部)などが行われています。

終わりに

 定点モニター制度は、各種調査事業における調査協力網として運営しておりますが、関連諸団体にも知れ渡り、貴重な存在として協力要請が多くなっております。調査内容については、随時、常務理事会等で審議した上で、定点モニター会員の先生方にご協力をお願いしております。
 また、前期より基礎資料を充実させるため「基礎情報調査」も同時に行っております。定点モニター会員の先生方には日常診療で多忙のところに大変大きな負担をおかけしておりますが、厳しい社会情勢のなか産婦人科医療をめぐる問題も数多く、会員の意見を反映させるさまざまな調査が必要であることをご理解いただきたく存じます。最後に、今年4月の個人情報保護法の施行に対し、定点モニター会員の先生方はもとよりご協力いただいたすべて方々(患者、医師、看護師、コ・メディカル等)の個人情報の管理を徹底して行う所存です。この点も踏まえ、今後も産婦人科の将来のため、ぜひ、定点モニター制度に更なるご理解とご協力をお願いします。