日産婦医会報(平成19年05月)アンケート調査から
オープン・セミオープンシステムに関する会員の意見前医療対策委員会委員長 可世木 成明
医療対策部では平成17年度に「今後の産科医療のあり方に関する会員のアンケート調査」を行い、報告書(内部資料)を本部ならびに各支部に配布した。また、その概略は日産婦医会報本年1月号「医療と医業特集号」に掲載された。本調査には自由記述項目が多数あり、報告書には全回答を掲載したが、特集号にはまとめのみで生の声が会員に伝わっていない。今後の産科医療システムを語る上で重要なオープン・セミオープンシステムに関するご意見を3項目について抜粋して掲示する。なお、本アンケートは平成17年11月にモニター会員にご協力を依頼し、607施設から回答をいただいたものである。
(1) 送る側からみた問題点(回答32)
【有床診】
- 受ける側と送る側とで十分話し合い、その地域に根ざしたシステムを構築する必要がある。
- 受け入れ側の病院に主治医権があるべし。このシステムが永続するために重要。
- 病院は組織で働いていて、小回りがきかず、危険だ。自信過剰の若い医師が多い。
- 平成5年から全例2次施設へ送ったが、2次施設がオープン化を中止して困っている。
【無床診】
- 中核病院で外来を1コマ持つなど、非常勤職員になるとよい。
- 病院医師とのコミュニケーションがとれない。定期的な勉強会、症例検討会があれば良い。
- とてもスムーズにいっている。信頼関係が一番大切。
(2) 受け入れ側からみた問題点(回答75、すべて病院)
- オープンではスタッフと医師の連絡が不安。セミでは主治医と患者のコミュニケーション不足。
- 開業医との信頼関係。都合の悪い症例のみ押しつけられる可能性有り。
- スクリーニング検査の統一、治療方針など頻回な合同研修会の開催が必須となる。
- 妊婦健診、検査の共通化、分娩取り扱い時の方針と立ち会い、責任・費用・収支の明確化。
- 妊婦健診の統一的マニュアルを徹底したいが各診療機関でばらつきがあり困っている。
- 産科施設の老朽化、産科マンパワーの不足、麻酔科・小児科の不足。
- 産婦人科常勤医が少なくとも7人必要。
- 病院の当直者の確保のため、送る側の医師も当直に入っていただきたい。待遇の面は今後の課題。
- 分娩に立ち会った医師への診療報酬の配分が決められない。
- 健診を行う施設の能力が一定でない。受け入れた時の異常はどちらの責任か。
- 市民病院なので他科との兼ね合い、診療報酬の配分等の決定が難しい。
- 周囲には高齢の産婦人科医しかいないため、オープンシステムにしたくてもできない。
(3) このシステムはわが国に定着すると思いますか?
回答550。肯定的な意見は256件(46.5%)、否定的な意見は207件(37.6%)であった。
【有床診】
- させなければ産科の未来はないと思う。
- 都市部では可能になると思う。
- 10年以内は無理、いつか定着する。
- 患者様のニーズとしては定着すると思われるが、少子化のスピードの方がより勝る。
- 診療報酬の配分を確立し診療責任の所在を明確にすればオープンシステムは定着する。
- しない。5年間オープンシステムを利用して得た結果だ。セミオープンのみ可能か?
- レジデント制度のないわが国ではオープンシステムは困難。セミはシステムとしては可能。
- 受ける側の医師等の給料アップ、当直明けなど時間的配慮がなければ、実際には不可能。
- 急速分娩時に鉗子分娩か吸引分娩のどちらを選択すべきか統一見解が出ないと難しい。
- 定着以前の問題、このままだと100km四方に分娩する施設がなくなる。
【無床診】
- 定着させないと産科医師の負担が大きすぎて、若い医師の産科離れが進む。
- 非常に時間がかかると思う。
- 分娩費が少なくとも現在の2倍にならなければ、コスト的に定着できない。
【病院】
- 今後の産科施設の減少により定着する、経営上の問題がクリアできるかがポイント。
- 行政が積極的に導入すれば意識の変化が起こるかもしれない。
- 国民が周産期医療の重要性を理解すれば定着する。
- 総論賛成・各論反対ではなかなか。
- 厚労省や学会の指導があればできると思う。
- 勤務医の待遇の悪い現状では、無理。
- 定着しない。妊婦さんは、同一医師に妊娠〜分娩まで管理してもらう希望が強い。
- このシステムを行って10年になるが、ほとんど来院する医師はいない。