日産婦医会報(平成19年10月)

医療安全管理義務化への対応はお済みですか?
平成19年医療法改正について

医療対策・有床診療所検討委員会委員 紀平 正道


 本年4月に第5次医療法改正が施行され、これまで病院・有床診療所に義務づけられていた4項目の安全管理対策が、無床診療所にも義務づけられました。「医療安全管理指針」「院内感染対策指針」「医薬品業務手順書」「医療機器保守点検計画」等は実施されているでしょうか。3カ月間の猶予期間がありましたが、既に7月から完全実施となっています。以下に安全管理項目の一覧表を示します。

行政担当者とのQ&A(三重県の場合)

必要な安全管理項目

   義務化された安全管理 病院・有床診 無床診
医療安全管理  指針策定
 委員会開催(月1回程度) 任意
 職員研修(年2回程度)
 事故報告と改善方法
院内感染対策  指針策定
 委員会開催(月1回程度) 任意
 職員研修(年2回程度)
 発生の報告と対策の実施
医薬品の安全確保  医薬品業務手順書作成
 安全管理責任者の配置
 職員研修(必要に応じて)
 業務の定期確認と記録
 情報の収集と管理
医療機器の安全確認  保守点検計画作成
 安全管理責任者の配置
 安全使用の研修(導入時)
 情報の収集と管理

 

 Q  病院・有床診への立入検査で安全管理体制に不備があった場合、どのような処分を受けますか?

 A  (社会保険事務局)平成18年4月の診療報酬改定で医療安全管理体制未整備減算(1日5点)などが廃止され、安全管理体制は入院基本料の算定要件となりました。それ以降の安全管理体制の不備は、入院基本料のすべてを返還することになります。悪質でなければ、行政処分はありません。

 
 Q  病院・有床診において安全管理対策を立てた場合、医療安全管理対策加算の入院初日50点を請求できますか?

 A  (社会保険事務局)専従の看護師、薬剤師等の医療安全管理者がいないと、請求はできません。

 Q  無床診において、安全管理体制の不備があった場合、どのような処分を受けますか?

 A  (県)金銭の返還はもちろんありません。現在のところ、口頭での指導のみで、行政処分までは考えておりません。

 Q  無床診における年2回の「医療安全管理研修」と「院内感染対策研修」について教えてください。

 A  (県)職員研修は院内研修が基本ですが、無床診の場合、外部団体の研修会の受講でも構いません。

今後の対策

 今後医療機関への立入検査では、安全管理に関する調査が強化されます。平成14年の改正から病院・有床診療所にはこれら4項目が義務付けられていたのですが、立入検査のほとんどない有床診療所では、まだ準備されていない先生方も一部にはいらっしゃると思います。委員会開催や職員研修も必要ですし、麻酔器やクベースなどの定期点検は専門業者への依頼が望ましいです。立入検査前に慌てても間に合いません。違反があれば厳しい処分も考えられますので、各医療機関で1日も早い対策をお願いします。

指針などの作成方法

 次のホームページなどを参考にして作成してください。

  1. 日本医師会HP
    ドクターのみなさまへ-患者の安全確保対策室-マニュアル-安全対策ダウンロード&リンク
  2. 日本産婦人科医会HP
    事業内容-医療安全・紛争対策部-中小産婦人科医療機関における安全管理指針モデル
  3. 全国保険医団体連合会HP
    医療関係者のページ-2007年4月1日改定について-2.医療法改定