日産婦医会報(平成21年6月号)高崎市医師会立助産師学院−開設2年目を迎えて
高崎市医師会理事 角田 隆
当学院は平成18年11月の助産師養成所設置基準の一部変更後、平成20年4月に開設された。今年3月に第一回の卒業生を送り出し、開設2年目を迎えたので学院の現状につき報告する。
1.開設年度の在籍状況と卒業生の転帰
平成20年度は一般入試のみで入学者を選抜し、出願者70名に対し21名を合格者とした。入学者の年齢は25〜50歳で、専門学校卒19名、短大卒および大学卒が各1名であった。全員が看護職として就労経験を持ち、既婚者が半数を超えた。就学時間は10時より16時までの昼間定時制であるが、講義やレポートが膨大なことに伴い、助産研究、隣地実習等、多岐に亘っており、学業を続けるためには周産期医療に係りたいという熱意が必要である。さらに既婚者には家族の理解とサポートが必須である。入学後3カ月で1名が自主退学、その後2名が健康問題を理由に休学となった。平成21年3月、18名が卒業、全員が国家試験を合格し、15名が群馬県内で周産期医療に係ることとなった。さらに、群馬県残留者中10名は分娩取扱民間医療機関(以下、民間医療機関)への就職が確定している。
2.開設2年目の入学試験と出願状況
(1)出願状況と合格者の内訳
平成21年度より推薦入試を導入した。これは学院設立の理念である“地域の周産期医療に係る助産師の養成”をより確実にすることが目的である。推薦入試の合格者は、第1回生で退学者や休学者が出た反省を踏まえ、書類審査、小論文、面接により厳重に行った。出願者24名に対し、助産師の資格取得という強い目的意識の有無、文章の作成や表現力、入学後の環境など、卒業後も群馬県内で周産期医療に係ると思われる5名を合格者とした。一般入試では、群馬県内の出願者は平成20年度33名であったが、平成21年度は17名に減少した。群馬県内の出願者の比率をみると、平成20年度の47.1%に対し、平成21年度は26.3%に低下した。一般入試では群馬県内の12名、群馬県外の3名を合格者とした。合格者の内訳は群馬県内が17名、群馬県外が3名で、平成20年度に比べ群馬県内の合格者は1名減に留まった。
(2)開設準備調査時の進学希望者数と出願者数の比較
学院開設準備にあたり、当医師会では群馬県内の分娩取扱医療機関(以下、分娩医療機関)に対して当学院進学希望者数を調査した。平成20年度より向う3年間の進学希望者は、平成20年度に38名、21年度に25名、22年度は19名で、分娩医療機関のみの進学希望者で定員を満たすこととなった。推薦入試(平成20年度は一般入試のみ)と一般入試の出願者を合計すると、群馬県内は平成20年度33名、21年度27名で開設準備時の調査と一致した。しかし、群馬県内出願者の内、分娩医療機関所属の有無を検討すると、平成20年度は29名、21年度は18名で、開設準備時の調査より少なかった。
3.医師会立助産師養成所の役割
助産師は大学や短大を中心に年間約1,700人以上養成されているが、必ずしも地域の周産期医療に係わっているとは言い難い。産婦人科以外の診療科で勤務したり、資格をキャリアアップに利用したりと、助産師本来の業務とかけ離れている事も多く、これらも助産師不足の一因と考えられる。医師会立の養成所は、有床診療所を中心とする民間医療機関で周産期医療に係る助産師を養成することが目的である。教育には、医師会関係者、教職員、実習施設指導者など、すべてが同じ目的意識を持つことが重要である。講義や実習において、地域の現状、周産期医療と無縁の医師会員の支援など、十分学生に周知することも大切である。さらに、分娩医療機関は職員に養成所への進学を促し、自ら助産師の養成に取り組むことも必要と考えられる。
おわりに
平成20年4月に開設された高崎市・愛知県・長崎市医師会立の3つの助産師養成所を合計すると58名の助産師が誕生したが、45名が自県内での就職が確定しており、初年度は“地域の助産師養成”との目的を果たしたと考えられる。今後さらに他の医師会でも助産師養成事業への参画を期待する次第である(詳細は平成21年1月発行の『医療と医業特集号』をご覧下さい)。