日産婦医会報(平成21年11月号)レセプトオンライン請求化に対する高崎市医師会代行送信について
高崎市医師会理事 岡本 克実 氏
はじめに
平成18年の厚生労働省令によってレセプトオンラインの義務化が打ち出され、平成22年4月からは現在レセコンを利用してレセプトを印刷して提出している医療機関が原則としてレセプトオンライン請求への対応を迫られることとなりました。自民党政権下では規制改革推進会議の強い働きかけにより、国の方針は「オンライン請求化義務化の期限以降、オンライン以外の手法による請求に対して診療報酬が支払われない」と非常に強い調子の内容となっていました。ところが、民主党への政権交代となった今回の第45回衆議院議員総選挙によって、そのマニフェストによると、レセプトオンライン請求は「原則化」という義務化よりは1段さがった表現になっています。それでは、レセプトオンライン請求への対応はしなくて済むのかといえば、民主党がこれまで表明してきた医療関連の政策詳細を見る限り(審査支払機関や保険者の)事務作業の効率化、医療費の過大・不正請求の防止などの文言が並んでおり、いわゆる保険者機能の強化を目指し推進するべきものという位置づけは変わっていません。
レセプトオンライン請求の問題点
高崎市医師会においては、昨年来この問題についての対応を検討してきました。その過程において、レセプトオンライン請求化はその達成の是非が問題なのではなく、次のような諸問題を含んでいることが明らかになってきました。まず、現状の医療現場における環境の未整備(保険証の電子化や被保険者資格オンライン確認システムの遅れなど)、医科と調剤レセプトの突合せ審査による自動的網羅的な査定が予定されていること、多くの医療機関のレセプト請求を対象に横断的縦覧的な規制が予想されること、さらには提出されたレセプトデータ利用の対象と範囲が不透明であることなどが挙げられます。また、医療機関側にはほとんどメリットがない上、様々な問題が未解決のまま、医療機関自身が移行費用や回線維持費、セキュリティーに関する費用負担をし続けることも問題です。これらの点について医師会としてまとまった単位で対応していくことが今後の第一歩となると考えています。
高崎市医師会レセプトオンライン代行送信
高崎市医師会では上記の問題点を緩和し、また個々の医療機関では対応が難しい諸々の問題を医師会として発言する機会を保つことを目的とし、「医師会によるレセプト代行送信」を平成21年9月より実施しています。具体的には、医療機関はいわゆる「レセ電算」の電子媒体を用意し、医師会で事務局が送信します。医師会事務局には、送信用の回線(Bフレッツの閉鎖IP 網IP―VPN を利用)、代行送信用のパソコン(専用であることが望ましいが高級機は必要なし)を用意します。また、医師会は審査支払機関への代行送信取扱機関の登録、電子証明書の登録依頼などを提出します。代行送信参加医療機関からも同じく登録が必要です。これによって個々の医療機関は、自前の回線や送信専用パソコンを用意する必要もなく電子証明書費用などの負担も医師会で1つ負担するのみで済みます。医師会員全体でのコスト削減効果は年間を通すとかなりの額に上ります。システムの詳細は高崎市医師会事務局にお問い合わせください。
今後の課題
医師会による代行送信を行った場合でも、電子化したレセプトデータが審査支払い機関において、どのような審査基準で取り扱われ処理されるのか、その過程の透明性や公平性に問題がでないよう求めて行く必要があります。また、そのデータは当然保険者へ送られ再審査請求等に使われますので、一方的に診療側が不利にならないような仕組みを取り入れることも重要です。そして、レセプトデータが蓄積され、医療政策や保健指導、疫学調査などの目的で二次的に利用されることも予定されている現在、個人情報漏洩を防止し、その情報の取り扱いの対象や範囲・目的を規定するガイドライン的な規約が必要です。以上のような課題を今後解決して行くことが喫緊の目標と考えます。