日産婦医会報(平成24年2月号)群馬県の助産師充足に関する調査結果〜医師会看護専門学校助産学科開設の影響を踏まえて〜
医療経営委員会副委員長 角田 隆
はじめに
地域における助産師不足解消は喫緊の課題である。群馬県では平成20年に高崎市医師会看護師養成所に助産師養成所(以下、高崎看護専門学校)を併設し、助産師の養成に努めている。今回は養成施設開設前後の助産師充足状況の推移を調査し、今後の助産師養成のあり方を検討した。
調査対象と調査時期
対象;群馬県内分娩取り扱い医療機関
公的病院;大学、国公立病院、日赤、厚生病院等
民間施設;私立病院、有床診療所
調査時期
第一回;平成18年3月(公的病院12、民間施設37)
今回;平成23年7月(公的病院12、民間施設31)
アンケート回収率(第一回;98.0%、今回;100%)
調査結果
分娩取り扱い施設のうち助産師の充足している施設は37.2%で、平成18年の12.5%と比べ増加した。公的病院と民間施設の比較では、双方とも増加したが、前回調査と同様、民間施設の充足率が低いことが明らかとなった。
助産師数の比較では、前回調査の274人に対し今回は406人となり、132人増加した。常勤助産師は、公的病院で61人増加し232人に、民間施設で49人増加し107人となった。非常勤は、全体で22人の増加に留まった。
助産師の不足数は、前回調査の445人より80人まで減少した。常勤助産師は、公的病院で186人より12人に、民間施設では189人より59人に減少した。
平成21年度以降新卒助産師が就職した施設は62.8%に達し、前回の14.2%を上回った。内訳は公的病院で41.6%から91.7%に、民間施設で5.6%から48.4%に上昇した。
平成21年度〜23年度の3年間で群馬県内の施設に就職した新卒助産師は99人となった。その内訳は、公的病院に59人、民間施設に40人で、特に民間施設では前回調査の2年間で2人から、今回の3年間で38人に増加した。
平成21〜23年度に群馬県内に就職した新卒助産師の養成施設は、高崎看護専門学校が42人(県内定着率;75%)で最も多く、続いて桐生大学(29人)、群馬大学(17人)の順であった。群馬大学卒で群馬県内民間施設に就職した新卒助産師は存在しなかった。新卒助産師の群馬県内施設への就職数は、前回の20人/年に比し33人/年に増加した。
平成24年度以降、助産師養成施設に進学希望者が在籍する施設は、群馬県全体で32.6%、公的病院41.7%、民間施設29.0%で、公的病院に多く存在した。
群馬県内施設での分娩件数は前回調査時(平成17年)の17,897件に対し、今回の調査(平成23年)で17,188件と709件減少した。内訳は前回と同様、約70%が民間施設で取り扱われていることが明らかとなった。
助産師一人当たりの年間分娩取扱件数(非常勤は1/2人として算出)は、全体では前回に比し71.2件/年より46.1件/年に減少していたが、民間施設では公的病院に比べ3倍以上の分娩を取り扱っていることが明らかとなった。
おわりに
群馬県では、平成21年度以降132人の助産師が増加し、その75%が新卒であった。これは高崎看護専門学校の開設が寄与したと思われるが、民間施設での充足率は29%と未だ低く、今後も養成の継続は必要と思われる。平成17年の保助看法改正で、看護師養成所に助産師養成所の併設が可能となり、医師会立の助産師養成所の開設を望む動きはあるが、開設・運営資金の調達、専任教員の確保、設置場所や実習施設の確保、卒業後の地域への定着率が不透明なこと、などの懸念から開設を躊躇する地域も多い。
高崎看護専門学校は他の都道府県にも周知されつつあるため、県外からの受験者数、入学者数は増加している。その一方で群馬県内の受験者数は減少傾向にあり、この傾向が持続すると、卒業生の県内への定着率は低下することが危惧される。今後の学校運営が円滑に行われるためには、群馬県内の進学希望者を安定的に確保し、卒業生の地域へのさらなる定着率向上を図ることが重要と思われる。