日産婦医会報(平成24年5月号)新規開業について
沖縄県ゆいクリニック 島袋 史
昨年11月に沖縄県沖縄市(沖縄本島のちょうど真ん中あ
たり)に5床の小さな産婦人科診療所を開設しました。
卒後1年は育児に専念し、実質的に15年目での開業です。
開業の動機
親子の絆作りを妊娠中から産後を通してサポートしたいという思いから開業を決意しました。開業を考えたのは実際に開業スタートする3年半前でした。きっかけは上司の言葉で「そんなにいろいろと自分のやりたいことがあるんだったら開業したら」と言われたとき初めて開業を意識しました。第3子を妊娠中ですぐに開業は考えられなかったので、漠然と意識しただけでした。
最初は家族の反対がありましたし、またこれから一人産科医で小規模診療所を開業するのは時代遅れではないかと悩みましたが、やはり自分のやりたい診療を追求したいと開業を決意しました。
計画から開設までの工夫
当時住んでいたところ(夫の実家)から近いところという条件で銀行からの紹介で土地が見つかり、255坪の土地を購入しました。土地を購入したのが2008年8月、設計事務所決定が2008年11月、2009年2月に産婦人科開院準備ブログを立ち上げました。また宣伝のために2011年5月にはホームページも立ち上げました。自宅兼診療所の設計のこだわりとして診療所部分は病院らしくなく家のように落ち着ける自然素材の空間を依頼しました。設計は時間をかけた方がよいということで、設計に2年かけて検討を重ねました。設計図の読めない私に代わって細かい検討を重ねて着工後は毎回工程会議に出席してくれた夫のおかげで、完成後の不満はほとんどなかったです。夫は小児科医ですが、以前体調を崩して今はフリーターをしているため時間に都合をつけやすく、開業に際して外来のバイトを減らして事務長をしてくれています。開業準備中の設計期間中に第4子を出産しました。第3子第4子の育児休暇後復帰に際してオンコール免除、また子連れ(プラスベビーシッター)での当直をさせてもらい、いろいろと配慮してくださった上司には本当に感謝しています。
具体的に開業準備として何をすればよいかわからなかったので、たくさんの診療所を見学させてもらいました。また、経営コンサルタントを紹介してもらい、経営理念の作成を行いました。同級生から開業支援をしてくれる医療機器メーカーを紹介してもらいアドバイスをもらいました。 産婦人科開業予定地という看板をたててくれたのですが、これが結構宣伝になりよかったです。また保健所での開業のための手続きなども手伝ってもらいました。サポート業者さんはいなくても準備はできるかもしれないですが、初めてのことで相談相手がいるということがとても助かりました。建物は自宅3階、1・2階診療所の鉄筋3階建て(一部木造)です。2010年9月に着工して、2011年10月に完成し、2011年11月にスタートしました。スタッフは開業半年前に常勤助産師さんを一人確保して一緒に準備をしていきました。開業当初、お産は月平均5、6件なので医療スタッフも7人ほどを予定していましたが、土壇場でのキャンセルがあり、助産師2人看護師3人のトータル5人でのスタートとなりました。そのうち2人は夜勤ができないため 夜勤に医療スタッフがいない日もあります。目標スタッフ数は助産師6、7人ですが、応募はまだ少ない状況です。お産は年間200件くらいを考えています。電子カルテ、予約システム、院内処方、ナースコールシステム、医師会入会など先輩の先生やM3.com の情報が参考になりました。 医療機器は閉院される産婦人科から譲ってもらったため、細かいものが足りないということが少なかったです。始まるまでは、本当にスタートできるのか不安でしたが、幸い経験のある医療事務スタッフや助産師に支えられてなんとか開業後の数カ月を乗り切っているという状況です。
開業まで本当に不安でしたし、たくさんの先輩開業医の先生に見学やアドバイスなどお世話になりましたので、もしこれから開業する予定の方がおられましたら、私でできることがあればお手伝いしたい気持ちでいます。
実現したい夢
大きな病院の産婦人科外来ではできなかった禁煙外来や OC の処方も行いたいです