【第3回】10.分娩時の努責

*各項目推奨のレベルは以下の通りです。

  1. 科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
  2. 科学的根拠があり、行うよう勧められる。
  3. 科学的根拠はないが、行うよう勧められる。

**本ゼミナールは、厚生労働省班研究2011-2012年「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的
根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)に基
づいており、同研究班が発行した「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社
2013年)」を参考にしてください。

 自然の努責感が来る前に、指示によって声門を閉じ、息を止めて努責をかけること(バルサルバ法)は、多くの分娩施設で行われていますが、分娩所要時間に差は認められず、むしろ胎児の酸素飽和度の低下や胎児心拍への影響が指摘されています。バルサルバ法と満足度の関係について調べたところ、図20に示す通り、バルサルバ法の実施により、分娩期の満足度が有意に低下することがわかりました。この結果と、文献システマティックレビューから、以下のRQと推奨が得られました。

      (図20)

RQ バルサルバ法の適応は?

推奨
 息を止めて声門を閉じて長くいきむバルサルバ法 は分娩第2期を短縮する以外に有用ではなく、母体の酸素飽和度が低下して胎児の低酸素状態を誘発するため、その適応は第2期分娩遷延や微弱陣痛、胎児機能不全(胎児心拍異常)で急速に娩出が必要な場合等、特別の場合に限定する。バルサルバ法でいきむ必要のある場合、1回の息継ぎで10~14秒以内のいきみにとどめることが重要である。【B】

 正常な分娩経過の産婦では、我慢できないいきみ(共圧陣痛)を感じるまで待って、母児への影響を考慮して対応する。【C】