最終回 オンライン診療に関する各種検討会での議論の概要
昨秋以来、オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会が実施され、初診のオンライン診療を可能とする条件などを中心に議論が重ねられてきた。今回はその概要を紹介し、このシリーズの最終稿とする。
なお、議論見直しについての詳細は以下の厚労省HPをご覧いただきたい。
「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_513005_00001.html
「オンライン診療に関するホームページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html
なお、2022年1月に改訂された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf)には医学的な基準として日本医学会連合が作成した「日本医学会連合 オンライン診療の初診に関する提言(https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/06/20210601095823.pdf)が掲載されているので、こちらも目を通されることをお勧めする。
さらに、日本医学会連合からは2022年4月に「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態」(https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2022/04/20220411092733.pdf)が公表されているので、ぜひご参照いただきたい。
(URLはいずれも2022年5月20日最終確認)
1、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」改訂のポイント
今回の改訂の中で、初診に関する事項は以下の通りである。
- 初診についてはかかりつけの医師(日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師)が行うことが原則
- ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等の必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク及びお薬手帳等から把握でき、医師が可能と判断した場合も可能
- 上記以外では、診療前相談(ビデオチャット)を行った上で、双方が可能と判断した場合も可能
- オンライン診療の実施の可否は、日本医学会連合が作成したガイドライン等を踏まえて医師が判断
冒頭に記載した日本医学会連合が作成したガイドラインでは、初診からのオンライン診療に適さない状態が挙げられている。産婦人科領域について抜粋すると、
1.緊急性により初診からのオンライン診療に適さない状態
(1) 妊娠の可能性がある「続発性無⽉経」(異所性妊娠等の緊急性の⾼い疾患の場合がある)
(2) 妊娠に関連する症状・疾患(切迫早産、常位胎盤早期剥離、妊娠⾼⾎圧 症候群などの妊娠に関連する疾患は、
⺟児の⽣命に関わり、オンラインによる間接的な診療で扱うことが困難)
(3) 腹痛、腰痛
(4) ⾼度貧⾎をきたし、緊急の処置が必要な性器出⾎
2.情報量や対応⼿段の問題で初診からのオンライン診療に適さない状態
(1) 性器出⾎
(2) 帯下
(3) 更年期障害と思われる「めまい・頭痛」
とされている。また、初診オンラインの患者への処方についても同ガイドラインにおいて
- 麻薬及び向精神薬の処方
- 基礎疾患が把握できていない患者への薬剤管理指導料1の対象薬剤
- 基礎疾患が把握できていない患者への8日以上の処方
との記載があるので留意されたい。
2,診療報酬改訂におけるポイント
令和4年度の診療報酬改定においてもオンライン診療について諸種改訂された。
概要としては(令和4年4月1日現在)
①情報通信機器を用いた場合の初診・再診に関する評価の新設及び見直し
・情報通信機器を用いた初診に係る評価が新設
・情報通信機器を用いた再診に係る評価が新設
・オンライン診療料が廃止され、基本診療料に組み込まれることとなり、具体的に算定できる点数は以下の通りとなった。
・初診料(情報通信機器を用いた場合)251点(対面:288点)
・再診料(情報通信機器を用いた場合)73点(対面:73点)
・外来診療料(情報通信機器を用いた場合)73点(対面:74点)
②情報通信機器を用いた医学管理等に関する評価の新設及び見直し
・各種管理料の点数や運用が見直された
・新規に情報通信機器を用いた場合の管理料が追加され、対象範囲が拡大した
・外来栄養食事指導料は初回より情報通信機器を用いて実施が可能となり、別の医療機関に所属する管理栄養士による指導も
認められた
・一方、検査料等が包括された管理料(地域包括診療料、認知症地域包括診療料及び生活習慣病管理料)は情報通信機器を用
いた医学管理の対象外となった
・ニコチン依存症管理料、遠隔モニタリング加算は、令和2年診療報酬と変化なし。
本講第5回で紹介した、新型コロナ時限措置下の算定モデルケースと同様の算定が、今後は疾患の制限なく再診料として算定可能となる。なお、外来管理加算は算定不可のままである。一方、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用の徴収は認められているので、今後も保険外負担金として通話料等は請求できる。
また、現在は時限措置も続いているため、オンライン診療時に電話等再診料として引き続き対応することも可能であるが、時限措置はいずれ終了する。今回の診療報酬改定に対応して算定するには、施設基準の届出が必要となるため、所属の地方厚生局の該当資料を確認し、早めに対応されることをお勧めする。
※システム利用料・通話料等:療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として施設毎に設定し
患者請求可能(詳細は本講第5回を参照)
なお、冒頭で紹介した日本医学会連合から2022年4月に公表された、「オンライン診療による継続診療可能な疾患/病態」(https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2022/04/20220411092733.pdf)においては、産婦人科系の症状に限り、専門医が診ることを想定しての記載となっている。以下抜粋すると、
- 原因が明らかな初診以外の原発性無月経
- 原因が明らかな初診以外の続発性無月経
- 器質的疾患が除外されており、鎮痛剤のみで対応している機能性月経困難症
- 状態が安定している妊孕性温存療法施行患者
- 通院が困難な妊孕性温存療法施行患者
- 週 1-2 回程度の点滴通院が可能な妊娠悪阻における自宅での摂食状態の確認
- 管理方針が決定している妊娠糖尿病
- 産褥の授乳指導(主に助産師によるもの)
- 妊娠高血圧症候群の発症リスクを有する妊婦における定期妊婦健診の間を補完する診療
- 周産期における便秘
- 妊娠性静脈瘤
- 妊娠性痒疹
- 周産期関連では 2 回目以降の症状に関しては一回目の症状が参考になる事から対象病態となりうる
つまり、初診や器質的病態が除外されていない場合には継続したオンライン診療は適さず、さらには、継続したオンライン診療が適する場合でも専門医があたるべきであるとされているということである。従って、産婦人科においてオンライン診療を整備し、これらの病態に対応していくことを求められているということにもなると考えられる。
3,おわりに
計7回にわたって、オンライン診療、遠隔医療について紹介した。今回の診療報酬改訂では時限措置で緩和されていた要件が恒久的となった。日常診療の中で浸透を感じる段階ではないものの、数年の単位でみれば必ず変化が起こる分野である。さらには働き方改革や産婦人科医の減少偏在などにも絡んだ変動も起こりうる。諸兄にもぜひアンテナを伸ばしておいていただきたい。
本稿の作成にはプロジェクトチームのみならず、情報技術委員会のメンバー、そして株式会社メドレーのスタッフの方にボランティアでご協力をいただいた。末筆ながら改めて深謝を申し上げる。