第5回 オンライン診療の診療報酬

 今回は診療報酬を中心にお金についてのお話をする。オンライン診療に関する診療報酬は2018年、2020年の2回の診療報酬改訂において言及されている。まずはそれぞれどのような算定要件であったのかを紹介し、そして、オンライン診療特有の診療報酬や療養の給付と直接関係ないサービス等の費用、そしてオンライン診療を行うためのシステム利用料やキャッシュレス決済の費用などについて紹介する。

2018年の診療報酬改訂
 2018年4月の診療報酬改訂では、「オンライン診療料」が新設された。オンライン診療料が算定可能な患者は、特定疾患療養管理料、地域包括診療料、 小児科療養指導料、認知症地域包括診療料、てんかん指導料、生活習慣病管理料、難病外来 指導管理料、在宅時医学総合管理料、糖尿病透析予防指導管理料、又は精神科在宅患者支援管理料のいずれかの管理料を算定して6月以上経過した者であり、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長に届け出た保険医療機関において、患者1人につき月1回に限り算定可能となった。しかし、対面診療と比較すると診療報酬点数が低いことに加え、算定要件として、同一医師での対面診療を6ヶ月以上毎月行っていることや、3ヶ月ごとの対面診療を含む療養計画を要するなど、条件が厳しく、オンライン診療の普及には至らなかった。
 この改訂時には、「オンライン医学管理料」や「在宅医学総合管理料 オンライン在宅管理料」「精神科オンライン在宅管理料」も同時に新設されたが、産婦人科領域では算定対象に相当する疾患はなかったのが実情である。

2020年の診療報酬改訂
2018年の診療報酬改訂で新設された「オンライン診療料」は、2020年4月の診療報酬改訂において算定要件が一部変更された。主な変更点は下記である。

  •  オンライン診療開始前に要する対面診療期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮。
  •  緊急時の対応について、あらかじめ患者に受診可能な医療機関を説明した上で、診療計画へ記載することを追加。
  •  対象疾患に、定期的に通院が必要な慢性頭痛の患者及び一部の在宅自己注射を行っている患者を追加。施設基準の届け出や医師の専門性、研修などの要件がある。

2018年度同様、施設基準の届け出を要し、下記の条件を満たす必要がある。

  •  厚⽣労働省の定める情報通信機器を⽤いた診療に係る指針に沿って診療を⾏う体制を有すること。
  • ⼀⽉あたりの再診料等(電話等による再診は除く)及びオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下であること。
  • 慢性頭痛患者の診療を⾏う場合は、脳神経外科若しくは脳神経内科の経験を5年以上有する医師⼜は慢性頭痛のオンライン診療に係る適切な研修を受けた医師を配置していること。

なお2018年診療報酬における「オンライン医学管理料」は廃止され、オンライン診療算定対象となる各医学管理料の算定要件の中に含まれることとなった。

LEP投与の再診をオンライン診療で行った場合の収益
 さて、ここで第1回でご紹介した表を再掲する。前回までで述べてきたように、基本的に器質的疾患を否定できていない状態でのオンライン診療は回避されるべきである。そうすると、産婦人科領域では定期的な受診の中で、対面診療とオンライン診療を組み合わせながら診療をすることになり、第1回で例示しているように、問診と投薬を行うときにオンライン診療をとりいれるのが、もっとも流れを変えないやり方となると考えられる。

ここにあがっているように違いを作っているところは以下の2点である。
 1)対面の「再診料+外来管理加算」のところが時限措置下では電話再診料として算定
 時限措置となる前までは、機能性月経困難症はオンライン診療料の算定対象ではなかったため、オンライン診療を行った場合に診療報酬を算定できなかった。時限措置下では、電話等再診料の算定および処方箋料の算定が可能となっている(※)。
 ここが、原則として52点(520円)オンライン診療のほうがマイナスとなる。
 2)「療養の給付と直接関係ないサービス等の費用」として、「システム利用料」や「通話料等」といった費用を患者に請求することが可能
 医療機関ごとに設定可能だが、500〜1500円程度が相場である。患者への請求にあたっては、あらかじめ同意を取得しておく必要がある。
 さて、とすると、システム利用料/通話料等の金額-520円がオンライン診療時にはプラスとなるということになる。
 ここから、クレジット決済機能を有する専用システムを利用する場合、決済に際して手数料(患者の自己負担分の3〜5%程度)が発生する。上記表の場合には、(一診療あたり)50〜70円程度が、医療機関の収益からシステムベンダーに支払われることになる。
 システムの月額利用料や減価償却費を要する場合があるが、ベンダーにより条件が異なるため、利用前に確認しておく必要がある。

 一日一件、月20件、この診療をするとすれば、単純な増収-手数料で月9000円程度の増収となる。設備投資については、コロナ禍等の補助金で賄える程度の額が相場である。月々のランニングコスト次第ではあるが、若干赤(月数千円の赤字)となる。一日2件、月40件程度ならトントンである。
 もちろん数が多くなれば、対面の受診数のマイナス分を考慮しないといけないが、ふつうに考えるとよっぽど数集めない限り大きな儲けにはならないし、大赤字にもならない。いつも通院している人への選択肢付与(患者サービス)や、“やってます感”が出る程度なら、トントンというところである。
(※)厚生労働省保健局医療課発出事務連絡(令和2年2月28日)「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その2)

キャッシュレス決済
 あと一つお金がかかることがある。クレジットカードをはじめとする決済システムの導入が必要である。すでにクレジットカードなどを自院で導入している場合には、そのサービスを拡張するという選択肢もあるし、前述したようにオンライン診療システムのベンダーによっては一定の手数料を支払ったうえでパッケージとして決済もというしくみもある。個々の医療機関の現状や考え方によって一長一短あるが、いずれにしても、現在の小規模施設がキャッシュレス決裁した場合には、手数料として3-4%は上前をはねられる。キャッシュレス決済の胴元をプラットフォームというとなんとなくかっこいいが、もともと世界最古のビジネスモデルから続くスキームである。診療や診療システム利用料についてはあまり抵抗がなくても、特に保険診療で国が定めた定額の診療報酬に対し、手数料をこちらもちということに抵抗がある方も多いと思う。日本でキャッシュレス決済が進まない要因のひとつが諸外国に比し高い手数料であることはよく知られているが、何らかの規制改革が行われない限り個々で対策できるものではないのが現状である。