12. PARP阻害薬による新規卵巣癌治療 ―PARP阻害薬の臨床試験結果―

2018年4月から卵巣癌新規治療薬としてPARP阻害薬が登場した。効能・効果として白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法として使用することになった。

<効能・効果に関連する使用上の注意>

1.再発時の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で奏効が維持されている患者を対象とすること。

2.臨床試験に組み入れられた患者における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法終了後から再発までの期間(PFI)等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

文字通り解釈すると、卵巣癌で初回治療に手術と抗癌剤による治療としてTCあるいはdd-TCを行ったあとに、6か月以上の間隔をあけて再発した場合(プラチナ感受性)に、プラチナを含んだレジメンで化学療法を実施し、奏効が得られた場合の維持療法としてPARP阻害薬を使用することになる。

PARP阻害薬の臨床試験結果

現在公表されている臨床試験として、図のようにSOLO2とStudy19がある。SOLO2の患者集団はプラチナ製剤感受性再発で生殖細胞系列BRCA変異(+)、プラチナ製剤による化学療法が2レジメン以上で直近のプラチナ製剤による治療でCRまたはPRを対象にした第3相臨床試験である。一方、Study19の患者集団はBRCA変異(+)または BRCA変異(-)の両者が含まれ、プラチナ製剤による化学療法が2レジメン以上 、直近のプラチナ製剤による治療でCRまたはPRを対象にした第2相臨床試験である。図の上段にあるように、卵巣がん患者の一定数は生殖細胞系列BRCA変異を有する患者が含まれている(HBOCと言われ、以前に講義した)。

 下段には無増悪生存率が示されているが、生殖細胞系列BRCA変異(+)を対象にしたSOLO2の患者集団には極めて有効性が高いことがわかる。一方、BRCA変異(+)または BRCA変異(-)の両者が含まれたStudy19でも、無増悪生存率が延長しており有用性が示されている。本邦では、コンパニオン診断としてBRCA1/2遺伝子変異を調べることなくPARP阻害薬を処方できるが、患者背景や作用機序には充分熟知して使用してほしい。

PARP阻害薬の安全性

さらに、Study19における安全性解析対象集団において長期投与の継続率を調べた結果、13.2%の患者がPARP阻害薬を5年以上投与継続可能であった。これは薬剤の安全性の担保や患者QOL向上に大きく寄与していることが推察される。

PARP阻害薬の有害事象

次にStudy19におけるグレード3以上の副作用(いずれかの群で発現率≧1%)(安全性解析対象集団)を調査した結果を示す。グレード3以上の副作用発現頻度は27.9%であり、疲労、貧血、好中球減少症、悪心が2%以上の頻度で認められた。これらの有害事象の発現は投与3~6か月の比較的早期に出現しているため、初期対応をしっかり行う必要がある。