18.正しい前置胎盤の診断
前回は子宮頸管長のお話しをしました。妊娠中の経腟超音波検査において、もう一つの大事なチェックポイントは前置胎盤です。今回は、その正しい診断方法についてお話しします。
前置胎盤は妊娠中の胎盤位置のスクリーニングによって診断します。日本では妊娠24週頃に健診妊婦全例に経腟超音波を施行する方法などがとられていることが多いかと思いますが、欧米では経腹超音波で胎盤が低い場合にのみ経腟超音波検査を行うというようなスクリーニングが行われます。
前置胎盤は大出血をきたす可能性のある異常ですので、なるべく早く診断したいところですが、妊娠20週未満では、超音波検査で前置胎盤と診断されるのは1.2-4.9%ありますが、実際分娩時に前置胎盤であるのは0.17-0.37%に過ぎず1, 2、診断が変わってしまうことが知られています。
それは、妊娠子宮の増大にともなって、子宮下部が伸展し、胎盤と見かけの子宮口との位置が離れるmigrationがあるからです。なるべく早く、正しく診断するためのコツをお話しします。
1)誤認に注意する
頸管をプローブで強く押すぎると前壁と後壁に近づき、前置胎盤であるかのように描出されるので、プローブを少し引いたり、動かして観察します。
児頭が内子宮口に近い時は、下腹部を軽く挙上したり、プローブで軽く児頭を押し上げることでなるべく見やすい状態にします。
前羊水腔が狭いので(左)、経腟プローブで児頭を押し上げて観察(右)
2) 子宮下節の開大後に診断する
頸管長の測定の時にも話しました、子宮頸管、子宮下節を区別して観察することが重要です。組織学的内子宮口と考えられる真の内子宮口上に胎盤を確認できれば、前置胎盤と診断できます3。
Leaf like様の頸管腺の上に胎盤があり、前置胎盤の診断は確実である
真の内子宮口は、leaf likeに描出される頸管腺領域が終わる上端である。頸管腺領域よりも上の内腔が閉じている場合は、子宮下節が閉じている状態(時期)です。子宮下節の開大の時期はまちまちで、必ず開大後に前置胎盤の診断を行うことをこころがけるとmigrationによって診断がかわることを少なくできます。
まだ開大していない子宮下節(この時期には前置胎盤の判断をしない)