【第1回】2.支援型産科医療

 支援型産科医療とは、どのような医療なのでしょうか。管理型産科医療では、お産を安全に遂行することがすべてであり、母子の「からだ」の健康維持・推進が優先され、母子の「こころ」はあまり重要視されません。支援型産科医療では、家族の主体性を尊重し、母子に寄り添い安全を見守る姿勢が重要視され、母子の「からだ」と「こころ」の健康の両方の維持、推進が追求されます。そのために、すべてのお産を医師と助産師、看護師が協働チームとして担当し、見守る姿勢が重要とされます。支援型産科医療の重要性は、だいぶ前から指摘されており、WHO出産科学技術についての勧告(1985年)では、以下の3つの原則、1.すべての妊婦は、適切なケアを受ける基本的な権利を持つ、2.あらゆる面において、ケアの中心的役割を演じるのは女性であり、女性は、ケアの計画、実行、評価にも参加する、3.適切なケアとは何かを理解し、それを実施する上で、社会的、心情的、心理学的要素は大切である、に基づき多数の勧告が採決され、医師が常時管理する「医療化された出産」より、妊産婦が自分の出産に主体的に対応する「人間的な出産」を推進するよう求め、支援型産科医療・ケアの重要性を示しました。また、日本産婦人科医会も参加した厚生労働省国民運動計画 「健やか親子21」妊娠出産の快適性確保のための諸問題の研究(2004-2006)でも、1.妊娠・出産の安全性と快適性は両立する概念であり、2.妊産婦が本来持っている産む力、育てる力を引き出す支援が快適性につながり、3.妊娠・出産・育児の過程で得られた快適性は、母子成長させ、家族機能を獲得させる社会学的過程に大きく影響すると、報告されています。

 支援型産科医療が追求するお産を、「いいお産」とすると、「いいお産」は、妊婦自身が出産体験を肯定的にとらえられる出産であり、子育てや次の妊娠に対する前向きな取り組みにつながる出産といえます。「いいお産」は、母子ともに健康である安全な出産、不安や恐怖が解消された安心な出産、リラックスした環境で大切にされていると感じられる快適な出産、達成感が得られる満足な出産の4要素をすべて含む必要があり、医療者はそれぞれに応じた対応が求められます。そこで、2011-2012年に、筆者も参加した厚生労働省班研究「母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査―科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-」(研究代表者:島田三恵子 大阪大学教授)が行われ、全国調査に加え、文献のシステマティック・レビューにより、どのようなことが妊娠女性の満足度と関連するのかが明らかにされました。本研究成果をもとに、支援型産科医療による快適で安全な出産、すなわち妊婦自身が出産体験を肯定的にとらえて、子育てや次の妊娠に対する前向きな取り組みにつなげられる出産を実現するためにはどうすればよいのか、次回以降、解説していきます。なお、研究班は、「科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラン(金原出版株式会社 2013年)」(図1)を発行していますので、参考にしていただければと思います。

            (図1)