20. 胎児の形態異常(胸部)

胸部のチェックは肺野がきれいかを確認し、冠状断か矢状断で横隔膜を確認します。 肺野が均一な中等度エコー(グレー)であれば問題ありませんが、不整である場合や、低エコーや高エコーである場合は異常を疑います。

心臓に関しては、四腔断面 (four chamber view)を描出し、心臓の位置、心軸の偏位、心拡大が無いかなどを確認し、心室中隔、卵円孔を確認する。Four chamber viewから児の頭側にスライドし、左室から大動脈が流出するところ、右室から肺動脈が流出するところを確認します。Three vessel viewで、肺動脈-大動脈-上大静脈の順に並んでいることを確認します。肺静脈も確認できればなおよいです。また、矢状断で大動脈弓、上下大静脈なども確認します。

胸部・心臓に関する異常は数多くありますので、ここでは代表的な疾患をご説明します。詳細は成書などをご参照ください。

胸水

低(無)エコー(黒)であれば胎児胸水を疑います。胸水が片側の場合、心臓の軸が変異して心臓の異常と見間違われることもあります。

肺野の異常

均一であるべき肺野がそうでない場合、心臓に変異がみられる場合、肺や胸腔内の異常を疑います。多発する小嚢胞状のエコーであれば、CPAM(先天性肺気道奇形)や食道裂孔ヘルニアなどを疑います。その他、肺分画症、縦隔腫瘍などが鑑別となります。

心臓の異常

胎児の形態異常のなかで心臓の異常は少なくないと言われています。一般の産婦人科医としては、必ずしも胎児心臓病の診断までする必要はありませんが、前述しましたいくつかの正常断面を描出するスクリーニングを行い、いつも見える正常画像でなさそうなものを疑いとしてピックアップし、胎児期に専門家にコンサルトできれば、出生後に急を要することが少なくなると考えられます。心臓の異常はバリエーション豊富であるので、詳細は成書に委ね、いくつかの典型例のみをお示しします。

Four-chamber viewの異常

極めて小さい心室中隔欠損:B-modeでは正常に見えるが、カラードプラでは心室中隔にドプラ信号を認める。この様な小さい心室中隔欠損を見つける必要があるか否かは議論の余地がある。

ファロー四徴症:左室から流出する大動脈が右側によるためfour chamber viewでも異常像として気づくことができる。

流出路の異常

Four chamber viewの異常と同様に、典型的な左室流出路、右室流出路、3 vessel viewなどが描出できない場合に疑います。正常な3 vessel trachea view が描出できないというのは比較的見つけやすい所見かもしれません。