22. 胎児の形態異常(腎泌尿器)

 腎泌尿器のチェックは、前回お話しした腹部のチェックと同時に行います。ACの断面から胎児尾側にスライド(スライス方向への移動)し、腹壁、臍輪部や膀胱を確認し、臍帯動脈が2本であることの確認を行う。矢状断では横隔膜、肝臓、胃、膀胱などの位置関係、腹壁も観察する。冠状断か矢状断に平行の断面で左右腎臓を確認する。
 腎臓の異常には尿路系の狭窄などで発生する水腎症と、腎実質の先天異常を超音波診断することがある。腎泌尿器疾患で重要なのは両側性か否かである。片側性では急を要することは少ないが、両側性の場合、腎後性腎不全、羊水過少などとなるので、早めの娩出、新生児治療が必要となることを念頭に置く。

水腎症

 水腎症は、軽度のものはしばしば認められる超音波所見である。尿管膀胱移行部の未熟性によるもので、多くは自然軽快する。その一方、持続する中等度以上の水腎症では注意を要す。片側の水腎症は、腎臓や尿管自体の形態異常、尿管を圧迫するような腹腔な腫瘤、尿管瘤などの膀胱内病変を疑う。両側の水腎症で膀胱の拡大を伴う場合は尿道以下の狭窄を起こす後部尿道弁などを疑う。

腎実質の異常

 腎実質の疾患では、多嚢胞性異型性腎(MCDK)がしばしばみられる異常である。腎臓実質内に多発する無エコーの嚢胞像を呈する。腎機能低下を伴うため、両側のMCDKは予後が悪い。また、腎臓全体が高エコーになる多発嚢胞腎もある。