27. ジャンプアップ3(複雑な基線1)
CTGの判読は心拍数基線の決定から始まる。今回も図説CTGテキスト(メジカルビュー社)から引用する。
- 心拍数基線を読む(図
医師、助産師の合同カンファレンスで呈示されたCTGである。我々の施設では毎週、急速遂娩になったケースや、助産師が判読に疑義があったものなどのCTGをレビューしている。これは、NRFSで緊急帝王切開になった症例の分娩直前のものである。繰り返す子宮収縮の度に、絨毛間腔に流入する母体血が減少し、胎児の低酸素血症が発生し、遅発一過性徐脈が反復している。厳密にはレベル3かもしれないが、基線細変動を考慮するとレベル4で、帝王切開の選択に問題はない。
カンファレンス中、助産師が質問した。
「このモニターの基線って何処ですか?」。
その一言で風景が一転した。心拍数基線はどっちだ?ということである。
- 基線はどっちだ?(図2)
それまで、何の疑いもなく心拍数基線は①で、高度遅発一過性徐脈と基線細変動減少でレベル4と見えていたCTGが一変する。心拍数基線を②ととれば、正常な基線細変動と繰り返す一過性頻脈である。
さて、このようにCTGを断片的にみると、心拍数基線が評価しづらい波形にしばしば遭遇する。もし、現場で誰かが基線は②に決まっていると言い出したら、どう反論するか。解決方法は2つある。
3.解決方法はスタートアップで学んでいる(図3)
- まず、この波形が出現する直前のモニター記録があれば、reviewする。どこに心拍数基線があったか確認する。この波形が一過性徐脈であれば、それ以前から少しずつ頻脈になってきていたかもしれない。
- 直前のモニターがreviewできない場合、判読の基本は一過性頻脈の特徴を思い出すことである。一過性頻脈は15秒以上2分未満の15bpm以上の心拍数増加が比較的急速に起こると定義される。比較的急速とは、開始から30秒未満で、15bpm 以上増加することである。
- 一過性頻脈は緩やかに増加しない(図4)
この特徴に照らせば、直前の記録がなかったとしても、明確に判読できる。この症例の心拍数は、明らかに30秒以上の経過をたどり、緩やかに増加している。したがって、胎児の一過性頻脈と言うことはできず、心拍数基線は①と判断するべきである。
これを誤ると取り返しのつかない事態を招くことになる。