3. スタートアップ3(胎児が健全である証拠)

スタートアップ3(胎児が健全である証拠)

 胎児が健全(健常)であることを証明することは、極めて重要で、CTG判読の基本である。

1.胎児が健常であることを判読する

1) 症例提示(図1)

 31歳初産婦。妊娠40週、分娩第1期のCTGである。胎児心拍数基線130bpmで、細変動は7-8bpmである。
 胎児心拍数基線に変動がある。一過性頻脈の特徴を説明し、判読することができるか?

2) 一過性頻脈(acceleration)の判読(図2)

 一過性頻脈は15秒以上2分未満の15bpm以上の心拍数増加で、その特徴は開始から30秒未満で、比較的急速に15bpm 以上増加することである(一過性頻脈の30秒ルール)。
 胎児が健常であれば、一定の割合で胎動が起こる。胎動は胎児にとって運動で、我々がジョギングする時と同様、心拍数が増加する。一過性頻脈はその心拍数の増加を反映したものである。
 一過性頻脈が確認されない場合、胎児は動いていない事になる。我々が疲れた時に、腰掛けて動きを止めるのと同様、胎児が何らかのストレスを受け、じっとこらえていることになる。
 なお、32週未満では心拍の変動は少なく、心拍数増加が10bpm以上、持続が10秒以上のものと定義される。

3) 子宮収縮曲線を判読する(図3)

 子宮収縮曲線(陣痛)は、陣痛周期、陣痛持続(発作)時間、陣痛間欠などを用い評価されている。外測陣痛計では陣痛強度(子宮収縮の強さ)を正確に測定できず、陣痛周期と陣痛持続時間を持って判断されることが多い。
 この症例では、陣痛周期(子宮収縮)は2分から4分で、陣痛は発来し、陣痛持続時間は30秒から40秒、陣痛間欠は1分20秒から3分30秒となる。参考までにそれぞれの基準値を図4に示す。

 
 あらためて、この症例のCTG(図1)を見ていただきたい。正常脈、中等度の基線細変動で、一過性頻脈を認め、一過性徐脈は認めない。また、子宮収縮は2分から4分で、陣痛発来しているがまだ弱い。
 安心して胎児が健常であると保証できるCTGである(図5)。